対人戦
眠い。
うーん。
眠い?
敵は二人。
その情報はあまり信用できないわけではないが、信用し過ぎない方がいいかもしれないとカノンは思っていた。
ほぼ、全プレイヤーがこのイベントに参加していると言っても過言ではない。その中では強弱なんてものは様々だろう。目の前にいる相手も然り。ましてやそれがβ時代を経験しているようなプレイヤーだったら終わりだ。
カノンはテキパキとして手さばきでウインドを操作し、自分のセットしている【スキル】を変更していく。戦闘系のスキルを全て控えに回し、それでいて【錬金術師】を持ってくる。
戦闘を捨てたわけではないが、同時にカノンは試したいと思っていた。【錬金術師】がスキルを発動させるには媒介として、錬成方陣が必要となる。カノンは懐から錬成方陣の描かれた紙を何枚も取り出し、それをいつでも使えるように手元に用意しておく。
「準備は出来た」
「あいっちょ」
敵は目視では確認出来ない。けれど【索敵】には反応がしっかりとある。つまりスキルの範囲内にいる。【索敵】の範囲はそれほど広いわけではない。目視出来ない距離までは索敵することが出来ないなら目視出来る距離に敵がいる。
目視出来るのであれば、既に見つけているだろうし、確認出来ていないのなら木々のどこかに身を隠しているか、姿を隠すような【スキル】を使用しているかのどちらかということになる。
「どこにいるか分かる?」
「宝の場所からはそんなに離れてないっちょ……【ダウジング】の効果が切れたっちょ」
「了解。さて、発動」
小石に紙を張り付け、それを【投擲】の【スキル】で投げるとそれは綺麗な弧を描きながら空へと飛んでいく。
それを見ながら、カノンは【錬金術師】のコマンドを発動させる。
すると小石は発光現象と共に消失した。
けれど、カノンの目的はそれで良かった。
「各個撃破で行くよ」
カノンは宝箱のような物を目視すると、それに向かって走りながら、【索敵】を行うと、側方に反応があった。
「ひゃっは!」
笑い声と共に、長槍がカノンの頬を掠める。ギリギリのところで後方へバックステップを行ったため何とか掠るだけで済んだ。
「危ないな……」
「ちっ。俺達の宝を横取りか?」
「別に横取りするつもりなんてないよ、まだ取ってないなら横取りなんて言わないし」
そんなことを言いながら、先ほど同様に小石に錬成方陣の描かれた紙を巻き付けていく。
「ギルド『漆黒の刃』を相手に死ぬ覚悟は出来てるんだろうな。名も知らぬ女」
「訂正したいけど、ここは敢えて訂正しないでおくよ。”あたし”はギルド『異端審問会』。これより異端審問を開始する」
カノンは短剣を構える。
ここから数話戦闘が続きます。戦闘描写って結構難しいですが頑張りたいと思います。