一人より二人。
イベント開始から二日目。
カノンは朝から【スキル】を試していた。
「……配合表でも作っておこう。ポーションを作るって意外と難しい」
カノンは今現在一人、試作回復薬の製作に励んでいた。回復薬の生成はそれほど難しいものではないのだけれど、配合する量が悪いのか、素材が悪いのか、どうしても粗悪品しか作ることが出来ない。
先ほど作った<作業台>の上に置かれた粗悪品たちはどれもこれも禍々しい色合いをしている。到底人間の飲物には見えない。
大量に採取していたはずの薬草も残りがわずかになっており、このまま回復薬を作ることが出来ないと回復する手段を失ってしまう。
と言いつつ、【自動回復】があるからそう簡単にやられることはないが。
それでも今は一人ではない。一人でない以上、一緒に行動する人間のサポートくらいはしたいと思う。
目指すは戦える生産職だが、今まだどちらか片方しかやることが出来ない。カノンの目指しているのは戦闘時に生産スキルで戦うというもの。今はまだ生産スキルに攻撃力はない。
【錬金術師】を極めればそれなりには戦えるようになるだろう。
「今は、出来ることをしよう」
アイテム袋から【錬金】に使う素材を<作業台>の上に並べていく。それと同時に今置いてある禍々しい液体をアイテム袋の中へとしまう。
「ふあ~。朝早いっちょね」
「おはよう」
昨日、夕暮れ時に見つけた洞窟から眠たそうに眼を擦りながら、ミュウが歩いてきた。はやりまだ眠いのか足取りが覚束ない。
「何作ってるっちょ?」
「試作の回復薬だよ。まだ全然で、味が最悪なんだけど、それでも効果の方はしっかりしていると思うよ」
「ふーん」
ミュウはそれだけ聞くと興味がなくなったのか自身の剣を研ぎ始めた。
「それよか、どうするっちょ?」
「何が?」
「ギルドの名前っちょ」
カノンが考え込むような素振りをするとミュウは最初から決めていたかのようにギルドの名前を提案してきた。
「異端審問会ってどうっちょ」
「……名前の由来は聞かないでおくよ、でも『異端審問会』か。”あたし”たちにはいいんじゃない?どっちにしろ”あたし”たちは普通に離れない異端の存在なんだし」
「ギルマスはカノンっちょ!」
「……待て」
ギルドマスターをやる分には構わないカノンなのだが、どうして立ち上げた本人がやろうとしないのか疑問に思った。
「単純に面白いと思っただけっちょ」
「……分かったよ”あたし”がやるよ、ギルマス。このイベントが終わったらね」
「それでいいっちょ」
満足そうに笑うミュウだった。