使いどころ。
カノンは面白い【スキル】を手に入れたことで少しばかり浮かれていた。物は試しとカノンは大量に持っている小枝を取り出し、地面に錬成方陣を描く。【錬金術師】が能力コマンドを実行するには必ずこの動作が必要となってくる。
最初は小石二つを錬成方陣の上に置き、【スキル】を発動させるとそれは淡く光出し、いつの間にか二つあった小石は一つになっており、名称も変わっていた。
<アイテム>
石。
小石よりも少しばかり大き目で何の変哲もないただの石。投擲の際には小石より多少威力がある。
「小石のランクが上がって石になったのか」
さらに試す。
同じ手段で作成した石同士を使うと今度は岩になった。ただしその間、大量に小石を消費した。アイテムランクGである小石を供物として捧げているためか、ランクが一つ上がるごとに十倍の供物を与えないといけない。
たとえば、先ほど試した小石を石へと変換させるためには小石を供物として十個消費しないといけなかったが、石を岩へと変換した際には百個の小石を供物として捧げた。
さらに実験は続く。
供物自体のランクと同ランクの変換品を生み出す際に消費する供物は一つ。供物自体のランクから一つランクが上がると、十倍の量が必要となる。
「効率よく変換するにはランクを考えてってことか」
けれどまだゲーム序盤であるこの段階では多少の消費は仕方ないと考えなくは高ランクの物を作ることは出来ない。
かなり保有していたはずの小石も気付いてみればもう残りが50個を切っており、正直使い過ぎたと思っている。まあ、その辺に落ちているのだから拾えば問題はないのだが。
一度に大量の実験を行ったせいか少し疲れてしまったカノンは近くにある水辺で休憩することにした。
水辺まで少し距離があり歩いていると【キラービー】の大群が出現し、カノンは戦闘態勢へ移行するのと同時にあることに気付く。
ステータスの上昇が感じられない。
この状況下で最も恐れていること。
すぐさま、一定の距離まで後退するとステータスウインドを開く。すると、今までついていたはずの称号が外れていたり、戦闘系スキルが全く装備されていなかったりと戦闘が出来る状態ではなかった。
その原因は【錬金術師】という【スキル】の効果の一つでもあった。この【スキル】が装備されている間は全てのステータス補正を無視するというおまけつき。その上これ以外の戦闘系スキルの使用を禁止するなどなど、嫌がらせもいい加減にしてもらいたいものだ。
カノンはこんなところでリタイアするわけにも行かず、撤退することにした。
「……この【スキル】も使う場所を考えてないといけない」