踊り子?
開始初日。
持ち物は正直それ単体では役に立ちにくいものばかりのカノン。早々と転移してスタート地点で少しばかりの待機時間に晒されていた。
どうでもいいアイテムといえど、制限なしに大量に持ち歩くことが出来るから数があると何だかうれしさに包まれる。
「……”あたし”のお友達♪」
アイテムウインドを操作し、小石を大量に取り出しそれを積み重ねる。鼻歌まじりにそれをどんどん積み重ねて時間を潰す。
十二、三個ほど積み重ねたところで参加者が全員この場に集まったようだ。
「それでは、これより第一回宝探しを開始する!!」
執行役がそう合図を出すと一斉に冒険者たちがバラバラに散っていく。
「……リンダさんも参加してたんですか?」
カノンはいつもお世話になっているリンダを見つけ、そう尋ねた。
「別に不思議なことはないよ。目的はレベリングだけどね。同じようなことを考えている生産職は多いと思うよ実際」
「確かにそうですね、”あたし”は適当に楽しみますけど」
「彼女いないんだし、口調というか一人称直したら?その方が喋りやすいでしょ」
リンダに指摘され、カノンは普段の口調に戻す。
「シオンがいると厄介ですから……といいつつ、この姿が面白いと思っている自分もいたりするんですよ。本当に厄介なのはオレなのかもしれないっすけど」
「ま、プレイスタイルは個人それぞれだしね。それよりもこれからどうする予定?」
カノンは特にこの後の予定を考えているわけではなく、何をするか迷っていた。
「他のメンバーは?」
「シオンは自分のギルドで参加してる。オレの友達は……同じくギルドで参加してる。だからソロかな?」
「そっか」
「ここでも商売するつもりなんですか?」
リンダの恰好を見ると、冒険者というよりは商売人という感じで、かなり軽装だ。いや……商人にも見えない。例えるとするなら、踊り子だろう。男なら
目のやりどころに困りそうなくらいの露出だ。
それを綺麗な四肢を惜しむことなく見せているあたり、商談の手段に使っていそうな感じもある。
「商売もするけどね、これが私のメインなんだよ。私が作った防具の中で一番防御力高いし」
「その露出で防御力ってどうなんですか……」
「これは私の趣味だから」
カノンは簡単にスルーしたようだが、防具を作るような【スキル】は現段階で入手するのはかなり難しい。もしかすると、βから引き継がれた何かなのかもしれない。
「防具作ってあげようか?」
「その前にインナーが欲しいです。それもノーマルの」
未だインナーを装備していないカノンだった。