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Skill Make Online  作者: 金平琥珀
プロローグという名の肩慣らし
17/73

オープン③

「いらっしゃい、シオンちゃんじゃない。久しぶり!」


 ドアを開けると、懐かしの同級生にでも会ったようなテンションで二人を迎える。


「それ程でもないと思うけど?だってこの前、リアルでケーキ屋さんに行ったじゃん。こっちの世界では久しぶりかもしれないけど」


「うー。相変わらず辛辣だね。あっ、カノンちゃんじゃない。二人で一緒に来たの?」


「そうなります。それでリンダさんに相談がありまして」


 リンダは何を相談されるのか知っていたかのように話を先に切り出した。


「インナーの件だよね。うんうん、言わなくてもいいよ。恥ずかしいからね」


 普通ここまでなることないもんね。そんなことを口走りながら例の画像を取り出すリンダ。


「インナーって初期装備についてくるからありえない話なんだよ。カノンちゃんはユニークキャラを使用しているせいかもしれないけどね」


 リンダは一つの可能性を示唆する。


「ユニークって不具合が起きやすいのよ。運営がノリで作ったらしいんだけど、そのせいなのかゲームバランスを崩すようなキャラも確認されてるし、ほんとに使えないキャラも確認されてる」


 リンダが言うには一番多い不具合としてデータの欠損。その欠損はまちまちなのだが、キャラが一度作ったら消せない点で欠損というのは何やら不味い気がする。


 仮にウインドが開かないという事態に陥った場合、そのキャラは二度とウインドを開くことが出来ない。それだとログアウトが出来なくなってしまうのだが、ログアウトについては念じることで強制ログアウトが出来るのでなんとかなる。


「……大丈夫なの?このゲームの製作担当」


「さあ?でも、お姉ちゃん。このゲームを創設した人はプレイヤーとして参加してるんだよ。確かノーネームって名前だったはず」


「彼を知っている人はナナシって呼んでるわ。そうだ、カノンちゃんにも後で紹介してあげるね。それと」


 リンダは少し間を置き、インナーをどうするか聞いてきた。


「このゲームでは物の譲渡って基本的には出来ないのよ。だからこうして仲介としてプレイヤーが店を持っていることが多いの。正し、譲渡ではなく販売という形をとっているけどね」


 この世界の大原則としては自分の持っているアイテムを他人に渡すことが出来ない。けれどそれだと生産系のスキルばかり集めている人からするとかなり不遇呼ばわりされる。


 それを解消するためにギルドを使用し、商人ギルドへ登録することで物を販売する許可が下りるそうだ。けれど、それですぐに物が売れるというわけでもなく、露店を開くためのアイテムを入手する必要がある。


 と数々の工程をこうなしてようやく商人になれるわけなのだが、そう考えるとリンダはすごいと思う。


「因みに店を持つには一千万Gくらいは必要だよ。私はβからの資金が引き継がれてるから何とかなったけどね」


 他人にアイテムを渡すことが出来ないならアイテムの説明欄に譲渡不可なんて書かないはずだ。


 そのことをリンダに尋ねると丁寧に教えてくれた。


「それはβ版の名残なの。あの時はまだ他人にアイテムを譲渡することが出来たから、でもそれだともし、生産系の人間がアイテムを大量生産して無差別に捌いたら、需要と供給のバランスが崩れるでしょ。一応は“世界”だから、ね」


 NPCまで人と言い始めるのではないと思う勢いでリンダは熱弁する。今まで所詮はデータでしかないと内心少しばかりはそう思っていたカノンは改める必要があるなと密かにそう思った。


「あたしはこれで帰るね。まだ試したい【スキル】とかあるし、後で素材持ってくるから何か装備作ってよ。なるべく安くしてね」


「はいはい。基準以下には出来ないから安いのが欲しいなら武器屋に行った方がいいと思うけど?」


「分かってて言ってるでしょ。それなりには払えるから、基準内で安くしてね」


 それだけ伝えるとシオンは【転】ではなく正面から出ていった。


「さて、腹黒少女はいなくなったことだし、交渉しましょうか。”カノン君”」


「……。あなたも中々にいい性格していると思いますけど。オレと称した方がいいですか?この場合」


「いつもみたいに“あたし”と称してくれた方がお姉さんに的にはうれしいよ」


「どこで気付きましたか?」


「ネカマはいない。それは先入観を抱かせるには大きいよね。断言してるんだもん。でも、残念なことに仕草っていうのはやろうと思って出来ることじゃないよね。それとシオンちゃんを参考にしたことが一番大きいよ」


 リンダという人間は一体どうやったらここまでいろいろなことを理解することが出来るのだろうかと不思議に思う。探偵でもやったら一儲け出来るのではないと思ってしまう。


「人は慣れないことをするときつい何かを参考にするのさ。本人は無意識だろうけどね。とまあ、こんな話はともかくインナーの件で君が来ると思って用意しておいたよ。どれにするかは自分で選んでね」


 そう言ってリンダはカノンを試着室へと案内すると何着か試着専用のインナーを用意してくれた。


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