死戻りと痴女と断末魔。
「……ここは?」
目が覚めたらカノンは見知らぬ教会らしき場所で覚醒。周囲を見回してみるが教会以外に例えるようなものはなく結論、ここは教会だという判断で起き上がることにした。
体を起こすと少しばかり痛みが電気信号のように体を駆け巡るが、我慢できないほどではないことに安心する。
「そっか。死んだんだ」
「てか、無茶し過ぎだよ、アホカノン」
聞き慣れたその声はどこか気恥ずかしそうに聞こえる。
「あ……グレイか。“あたし”は」
「やっぱ、その一人称の方がいいぜ。お前はここでは女なんだから、現実では男だろうけどな。それと……」
はやりグレイは顔を合わせようとしない。それどころか少し赤面しているようにも見えなくもない。
それは何故か。
「……?」
「そ、その服。なんとか出来ないのか?」
そう指摘され初めて自分の服が所々破け、女性らしい柔肌が露わになっている。先ほどの戦闘で破けてしまったのだろう。これではもう防御力に期待は出来ないが、かなりの破壊力を持っているようだ。
「そっか……Inner装備してなかった。というか持ってなかった」
「……ワンピースの下は」
「……聞くなよ、バカぁ」
インナーは上下セットになっている。普通は初期装備で身に着けているはずなのだが、何故かカノンは身に着けていなかった。
「ところで、グレイはどうしてここに?β時代の仲間のとこに行ったんじゃないの?それであたしと別れて」
「ま、そうなんだけど。情報掲示板に教会に痴女現るなんて書き込みがあったもんだから、さ。それで」
「……ふーん。そうなんだー」
「まままま、待て、カノン。何で短剣を取り出してるんだ」
ジト目でグレイのことを見ながら、腰に装備している短剣を抜刀する。
「話せば、分かる」
「何のことかな?かな?別に自分が教会で視姦されていたなんて思ってもいないし、それで掲示板で叩かれ怒っているわけでもないんだよ?」
「おおおお落ち着け」
「それはお前がな」
明らかに動揺しているグレイと目が据わっているカノン。
それから数十分するとグレイが死戻りからのカノンが先ほどまで寝ていたベッドの上に復活する。
「あ~カノンの匂いがする」
「……いっぺん、死んでみる?」
「いやいや、死んだから。それもかなり残酷な殺され方したからね!てか、これかなり痛いな。俺は毒で地味に死んだからこの程度だろうけど。モンスターに殺されたらかなり痛いんだろうな」
そんなことを真剣に考えているグレイは放置しておくことにして、テイムモンスター一覧という項目のウインドを開いてみる。
「……一応、復活させることは出来るみたい。ほんとにごめんね」
ラムのステータスを見ると瀕死と書かれているため、蘇生薬でもあれば完全に復活させることが出来るのだが、生憎そんな都合のいいものは今手持ちにはない。
「グレイ」
「ん?どうした」
「蘇生薬ってどこに行けば手に入るの?」
「β時代と同じなら死者の国って町に行けば手に入るが……だが、ボス攻略を何回も何回もこなしてようやく行けるような町だぜ。今日始めた奴が簡単に行ける場所じゃない。それにまだナンバー01のボスだって倒されてないしな」
グレイの情報でわかったことだが、このゲームで新たなフィールドへ行こうとするとどうやら関門となるダンジョンがあり、そこの最深部にいるナンバーズと呼ばれるボスを倒す必要がある。
ボスはかなり強力でソロではほとんど勝てないというのだ。
「ところで……インナーってどこで買えるの?」
「俺に聞くな」
「……いっそ、着物でいいや。それならインナー着る必要ないし」
カノンは完全に痴女ですね。
ゲームの中だけですけど。