恐怖のユニークモンスター!
帰還したラムを引き連れ、森の中を散策。順調に森の中を散策しているとセーフティエリア以外で開けた場所に遭遇した。【索敵】を使い周囲に敵がいないことを確認。しかし、セーフティエリアではないため、モンスターがいないことが不思議だった。
狩り過ぎただろうかという疑念を抱いたがそれはないだろうと考えを切り捨てる。狩り過ぎて一定時間までモンスターが出現しないことはあるにしても最後にモンスターを倒してからかなり時間が経っている。
この状況は明らかに変だ。
それに開けた場所の中心には何やら墓のようなものがある。その前に刺さっている謎の剣。
このまま時を過ごしても何も始まらないので、墓の近くまで行くと不意に空気が重くなる。まるで何かに押し付けられているような重圧を感じる。
「……この重圧は」
『ユニークモンスターなのら!……この感じはイベントなのら』
<モンスター>
名前【亡霊を統べし者】
HP????/????
MP????/????
スキル
詳細不明。
「……正直やばいかも。DEF低いし、死ぬかも」
ゲームだということを理解していてもVRシステムは五感を再現している以上に臨場感というものも再現しているようで。
「勝てないとは言わないけど、負けないとは言えないないね。こりゃあ」
人型をしたそれは動く。手に持った大鎌を大きく振りかざしながら、真っ直ぐとは言えないが限りなく直線的に。
カノンはウインドを操作する余裕もなく回避に専念する。
おそらく掠りでもしたら死亡確定だろう。
「……実験したいことがあるんだけど」
『うん』
カノンが試したいと言っているのは二つ。先ほど手に入れた問答無用に敵を倒すことのできるスキル【セカンドラスト】がユニーク相手に通用するのか。もう一つがユニーク相手に【テイマー】を使う事出来るのか、だ。
そうと決まれば行動のみである。
「スキル発動!【セカンドラスト】」
拳に装備している【雀蜂・崩】の針でカウンターを狙う。相手にカウンターが読まれていたのか鎌で見事に弾かれてしまった。
けれど、これはうれしい誤算である。
失敗したと思った印の設置も鎌で弾いた部分に設置出来ていた。あの鎌を狙うのは胴体を狙うよりも容易である。
「なら」
ペロリと舌を出す。
「大技で決める!」
あの人型の懐に入るのはあまりにも危険過ぎる。けれど鎌だけを狙った攻撃なら元々の動体視力の良さと運動神経で補うことが出来る。
「掌底破っ!!」
先ほど印をつけた場所への攻撃。カノンは勝利を確信し不敵に笑う。
けれど。
「あたしの勝ちだ!」
けれど。
寝言は寝てからいうものである。ヒットしたはずの【セカンドラスト】はその効力を失いただの掌底破としての攻撃になった。所詮ただの技ではあの大鎌を破壊することなど出来るはずもなく、拳に伝わる重い衝撃と原因不明の脇腹への重い衝撃が襲い掛かる。
「……っ!!」
重い衝撃の正体がまさか回し蹴りだと理解したときにはHPをごっそりと持っていかれ、同時にダメージが深刻なせいか血を吐いた。
これがリアルだったらと思うとぞっとする。おそらく内臓あたりが破裂でもしただろうか?そんな感じさえある。
『大丈夫なのら?』
「……どうしてっ!!」
『インターバルがあるのら』
【セカンドラスト】というスキルは確かに強力だが、致命的な弱点がある。印を設置してから発動までの制限時間があることにカノンは気付いていなかったのだ。
いつものカノンだったら見逃すはずもない。ゲーム初日だったことや立て続けにスキルを獲得したことでカノンの心には慢心のようなものが生まれていた。
強力なスキルを持っているのだと。
「あいつ……ここまでは襲ってこないみたいね。でも油断は出来ない」
ステータス画面からスキルを選択しスキル内容を再度確認するとカノンは苦虫を噛み潰したよう顔をして【亡霊を統べし者】を見た。
いきなりのボス戦。
初日に何やってんだよ!
的な?