不変の風景画
鳴り響くチャイムの音。
騒がしくなっていく教室。
いつもと変わらない風景に、少年はうなだれていた。
「陽太、昼飯だぞ。弁当、食べようぜ」
少年は、目を覚ました。やはり、視界に入る一枚絵は、いつものものと変わらなかった。またしても、少年はひどくうなだれた。
「それにしても、陽太。お前、授業聞いてるのか?」
「………聞いてない」
「だろうな。ずっと寝てるし。日本史の真柴先生、めちゃくちゃ怒ってたよー」
「………どうでもいい」
「まだ眠いのか?ビンタでもすりゃあ目が覚めるんじゃないか」
「………あぁ、もう、分かったよ。起きればいいんでしょ?」
そうしていやいや体を起こす少年――――――――倉石陽太は、おもむろに机の横に手を伸ばし、そこに掛けてあった手提げの鞄から、握りこぶし大のおにぎりを取り出した。
「気をつけろよ、陽太。今じゃお前も、一端のいじめられっ子だ」
「まあ、このエリンギみたいな髪型と瓶底眼鏡じゃ、当然だよ」
「自分で言いやがった………!」
陽太は、おにぎりを全て食べ終えると、体育着を取り出した。
「あれ、信二。次ってバスケか?」
「あー、陽太、寝てたもんね。今日は第二体育館で身体測定」
「マジか……、終わった………」
陽太と昼食を共にした学級会長の荒井信二は、呆れるように首を振り、弁当箱をしまった。
「まあ、陽太。見た目も中身もアレなお前に同情するわ」
「信二。後でおろし金でおろしてやるよ」
「そう言うな」
二人は、着替えを終えた。体育館へ向かう途中、絡まれた。おそらく三年生であろう。
「おぉい、そこの眼鏡ぇ。金よこせ」
「くだらない学校だな」
「ぁんだと!?ぶん殴るぞ!」
「停学なりますよ?」
「ぐっ………!」
言葉で無理やりやり込めると、二人は先をいそいだ。
何の変哲もない授業だったはずなのだ。どうしてこうなった。