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空色days.  作者: 和茶
1/1

キラリ、青春




私がやると、ただの気持ち悪い汗が、彼がやると美しく輝く。

ああ、タオルを使う仕草も素敵。髪が風に靡いて、太陽をバックに只でさえ輝いている彼は輝きを増して。


ああ、私はもう貴方の虜です。





キラリ、青春




「おーい琉奈ー。行くぞぉ」

「ちょっと待って。加藤くんが走り終わるまで」

「じゃあ先に行ってるよー。くれぐれも遅刻しないようにね」

「んー」


私の想い人こと加藤くんは陸上部のエースである。エースなだけあってやっぱり走ってる姿も様になる。いや、他の人も様になってるけど。なんかこう…輝いているというか。眩しいんだよ、色々と。

窓からもう日常となりつつある加藤くん観察を続けていたら、チャイムが鳴った。

…………。

…………………あれ?

教室誰も居ない……?


…………。



「ああああ!!!移動教室だったぁああ!!」


しかも音楽。

音楽の授業に遅れて行ったりしたら私の身がどうなるかわからない。なんとも素晴らしい事に今のは予鈴である。つまりあと五分ある。

急いで準備をして、教室を出るときちら、と校庭を見れば陸上部も終わったのか、もう誰も居なかった。



▲▽▲




ぜえぜえ言いながら走り続けてようやく音楽室が見えてきた。近道を通ろうとしたら転んだり教室間違えたり、急がばまわれとはこの事だろう。

でも、間違えて一年生の教室入っちゃったのは恥ずかしかったなぁ…。


「はぁ…はぁ…あ!」


音楽室が見えた。あと二十メートル。この勝負、私がもらった。

そう思った時、曲がり角で突然誰か曲がってきた。


「うぇえ!!?」


全速力で走っていた私は突然止まることが出来ずに、目の前に現れた大きな人と見事に激突した。こんな所でラブコメなんか要らないよ。時とタイミング考えてよ。神様の馬鹿野郎。


「痛っ痛っ痛…『キーンコーンカーンコーン』ぁああああああ!!!!!」

「わ、悪い大丈夫か!?」


あわあわと焦る声に内心舌打ちをする。

大丈夫な訳ねぇだろお陰様でこちとら音楽の授業に遅れるなんていう自殺行為をしてしま……った………?

顔を上げて、思考が止まった。


「………え、あ、あの………えぇ!?」

「え?えっと、大丈夫か?悪いな、オレがいきなり曲がったから」

「いえいえわわわ私が走っていたからです!」


なんと、目の前に居たのは加藤くんだったのだ。神様、馬鹿野郎なんて言ってごめんなさい。神様万歳。


「か、加藤くんこそなんで此処に?」

「今日の音楽、二組と合同なんだ。君は二組だよね?」


ななななんと!四組と合同授業だったなんて知らなかった!だったらもう授業が始まる三十分前には音楽室で待機してたのに!

…………あれ?


「はい。てことはもしかして、加藤くんも遅刻?」

「…………あはは」


私はともかく、加藤くんはきっと部活で遅れたんだろうし大丈夫なんじゃないかな…?


「どうする?」

「どうすると言われましても……」


どうしようもない。今から音楽室に入る無謀な勇気なんて生憎持ち合わせていないし、かといってサボるのも………あまり、良いことではないし。

すると、加藤くんが「あ、」顔を上げた。


「サボるか」


…………なんですと?


「さ、さぼ…?」

「ああ。だって今から音楽室に行ったりしたら全殺しは確定だろ?死ぬかもしれない」

「いや既に死んでますよそれだと」

「ん?ああそうか。まあいいやとにかく行こうぜ!」


ぐいと手を引っ張られて連れていかれる。あああああああ!!!かかかかか加藤くんが私の手を!掴んでいる!!!?

サボるのは初めてだし、ちょっと怖いけど、(音楽だし)幸せだからいいか。

なんて、階段を上っていく背中を見ながら思った。



ガンと何かを蹴る音が聞こえて、前を見ると大空が広がっていた。


「着いたぞ!」

「お、屋上!?」


こん、と足に何かがあたり下を見ると『立ち入り禁止』…………。


「加藤くん、此処立ち入り禁止……」

「ああ、そうだよ」


さいですか。ご存知だった様で。

にしても普段立ち入り禁止の屋上に来たの実は初めてだったりする。いや勿論今も立ち入り禁止だけど。


「……気持ち良いね」

「だろ?」


そう言って、にかっと笑う彼に私も笑った。


あんなにずっと見てたのに、知らないことばかりだ。

いつもみたいじゃなくて、こんなに男の子っぽく笑う所とか、実は校則破ってたりする所とか、意外にちょっと強引な所とか。

知らないこと、ばかりだ。


「あ、」

「?どうかしたの?」

「そういえばオレ君の名前知らねぇな。名前は?」


か、加藤くんに名乗れる日が来るなんて……!!!

夢のようだ、いや実は夢なのかも。夢でもいいから、覚めないで。


「結木、琉奈です」

「結木、な。オレは加藤晴太。よろしくな」

「うん、よろしくね!」




屋上の空は、眩しい透き通っていて、蒼かった。







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