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逆再生の囁き

作者: Tsubasa Haru
掲載日:2026/07/04

「サマーホラー2026」参加作品、『逆再生の囁き』へようこそ。

2026年の夏は焼却炉のように暑かったが、町の裏山へと続く獣道に足を踏み入れると、その暑さは突然、ねっとりとした冷気に飲み込まれた。

ソラが先頭を歩いていた。片手にはライブ配信モードをオンにしたスマートフォン付きのジンバルを持ち、もう片方の手には懐中電灯を持って鬱蒼とした茂みを照らしている。後ろには、彼に寄り添うように歩くガールフレンドのユカ、そしてフリーランスの音声編集者であるレンが続いていた。レンだけはスマートフォンの画面を見ず、革張りのヘッドホンを耳に当て、棒のように長い風防のついた専用の録音機材を手に集中していた。

「みんな、はっきり見えてる?俺たちは今、地図に名前のない廃神社の鳥居の前に立っているんだ」と、ソラは配信の視聴者に向けて劇的な声を作って画面に向かって大声で言った。「ここはかつて、邪神と見なされた存在を祀っていたという噂がある。あの木の根元に巻かれた腐りかけの注連縄しめなわを見てくれよ、マジで鳥肌ものだろ!」

「ソラ…やっぱりやめない?電波が弱すぎて、視聴者がどんどん落ちてるよ」と、ユカは震えながら彼氏の服の裾を引っ張った。ライブ配信の画面では、読み込み中の円が止まったまま何度も表示されていた。磁気干渉によって信号がひどく乱れていた。

「安心しろよ、もうすぐ本殿に着くから」とソラは一蹴し、歩みを進めた。

本殿の中は、腐った木とカビの臭いが立ち込めていた。祭壇の中央には真っ二つに割れた石の神像があり、頭部は地面に転がり、石の目は無残にえぐり取られていた。

3人が敷居を跨いだまさにその瞬間、絶対的な静寂が辺りを包み込んだ。外の喧しい夏の蝉の鳴き声が、突如として鳴り止んだ。風一つ吹いていなかった。

ゲァッ…ゲァッ…ザザ…ザザ…

レンは立ち止まった。密閉型のヘッドホン越しに、割れた像の後ろから奇妙な連続した音が発せられているのが聞こえたのだ。それは風のヒューヒューという音ではなく、テンポが速く、つっかえつっかえで、歯擦音のようなざわめきが混じった混沌とした言語であり、人類の辞書には存在しない古代の言葉のように聞こえた。

「ソラ、ユカ……二人とも、何か聞こえないか?」と、少し顔を青ざめさせながらレンは囁いた。

「何が?蚊の飛ぶ音しか聞こえないけど。レン、電波が完全に消えた、配信も落ちちゃったよ」と、ソラは苛立ちながらスマートフォンを閉じた。ユカは首を振り、この息苦しい空気に耐えきれず、二人に帰ろうと急かした。

その夜、3人は無事に帰宅した。ただの失敗に終わった肝試しだと思っていた——翌朝までは。

自分の仕事部屋で、レンは昨夜の音声データを編集して、ソラがネットに投稿する動画をなんとか挽回できるよう、疲れた様子でヘッドホンを耳に当てた。パソコンの画面には、密度の高い音波の波形が表示されていた。彼は本殿で録音されたあの奇怪な雑音の部分を切り出し、音量を上げてノイズキャンセリングフィルターをかけた。

あの身の毛のよだつようなざわめきが再び響き渡った。レンは眉をひそめた。好奇心に駆られ、彼はマウスをクリックしてその音声クリップ全体を選択し、「リバース(逆再生)」のコマンドを押した。

レンのヘッドホンが爆発したかのように錯覚した。あの混沌は消え去った。代わりに聞こえてきたのは、極めて聞き覚えのある、パニックに陥った途切れ途切れの3つの声だった。

「あいつの目を見ないで……」(ユカの声)

「あいつ、天井にいる!見上げるな!」(パニックに陥ったソラの声)

「逃げろソラ、逃げるんだ……」(レン自身の声)

レンは後ろにのけぞり、椅子が倒れそうになった。冷や汗が滝のように吹き出した。彼は震える手でもう一度再生ボタンを押した。間違いなく、彼ら3人の声だった。しかし、昨夜の神社で、彼らはこんな言葉を一切発していない。この逆再生された録音は……未来の音声を再生しているのだ。

レンは恐怖で声を震わせながら、すぐにソラとユカに電話をかけた。しかし電話の向こうで、ユカはくすくすと笑うだけだった。「レン、音声編集のやりすぎで幻聴でも聞こえてるんじゃないの?そんなことあるわけないでしょ、私はもう寝る準備をするから」

レンの異様なまでの執拗さにイラつき、ユカは電話を切った。彼女はスマートフォンをベッドに放り投げ、ため息をついてから、4階にある自分のマンションのバルコニーのカーテンを閉めに歩み寄った。今夜は風がなく、異常なほど静まり返っていた。

コン……コン……コン……

ユカは立ち止まった。バルコニーのガラス窓の方から、規則的で乾いた叩く音が3回響いた。彼女は、ソラが自分を驚かせるためにバルコニーに登ってきたのだと思った。しかし、彼女はふと思い出した。ここは4階だ。どこに掴まる場所があるというのか?

ベッドの上のスマートフォンが突然鳴り出した。レンからだった。ユカは苛立って電話に出た。「レン、ソラに窓ガラスを叩く悪ふざけはすぐにやめるように言って!」

「ユカ!ソラはあいつの家にいるよ、今あいつとビデオ通話してるんだ!」電話越しにレンが狂ったように叫んだ。「今、テープをもう一度よく聞いたんだ……ユカ、外を見ちゃダメだ!」

「でも……でも、本当に誰かが叩いてるの……」ユカは震え上がり、彼女の両足はカーテンの前で凍りついたように動けなくなった。

コン……コン……

再び叩く音が響いた。しかし今回は、ユカの全身に鳥肌が立った。彼女の聴覚的本能が、突如としてある恐ろしい真実に気づいたのだ。逆再生の呪いによって音波が歪められたことで、彼女は錯覚に陥っていた。そのノック音は、バルコニーの「外側」から叩かれているのではなかった。それは部屋の「内側」、彼女のすぐ背後から、ガラスに向かって叩き出されている音だったのだ。

「ユカ!テープの次のお前のセリフは『あいつがガラスを叩いてる』だ……ユカ!逃げろ!」

ユカはゆっくりと、バルコニーの大きなガラス窓の方へ頭を向けた。磨かれたガラスの表面に、部屋の反射がはっきりと映し出されていた。そしてそこには、スマートフォンを持たないユカの反射像があった。それは彼女を見つめて立っており、顔がゆっくりと割れ、耳元まで届くほどの笑みを浮かべていた。それは灰色の手を持ち上げ、内側からガラス面を強く叩いた。コン!コン!

「きゃあああああっ!」

ユカの悲鳴が電話越しに夜の闇を切り裂き、それに続いて骨の関節がへし折られる恐ろしい「ボキッ」という音が続いた。通話が切れた。

レンは狂ったようにソラの家へと走った。彼がドアを叩き開けて部屋に飛び込むと、ソラはベッドの隅で縮こまり、両手で頭を強く抱え込み、血走った目を大きく見開いていた。床に落ちたスマートフォンは、ユカの途切れたライブ配信の映像を映し出していた——彼女の部屋はもぬけの殻で、ただ一条の血痕が……天井へと逆行するように伸び、そして消えていた。

「あいつが来た……レン、あいつが来たんだ……」ソラは歯をガチガチと鳴らしながら呟いた。「耳のすぐそばで、あいつの呼吸音が聞こえるんだ……」

「ソラ、立て!俺たちはすぐにここから離れないと!」レンは駆け寄って友人の腕を引いた。

しかしソラは千斤の岩のようだった。彼は荒い息を吐き始め、目は虚ろになり、ゆっくりと顔を上げて天井を見つめた。

「あいつ、天井にいる……見上げるな……」ソラは糸の切れた操り人形のような平坦な声で、一語一語を発した。

レンは息を呑んで立ち尽くした。その言葉は、逆再生されたテープの中のソラのセリフと完全に一致していた。

ゲァッ…ゲァッ…ゲァッ…

石膏ボードの天井の上で、どす黒く、ねばねばした影が闇の中からゆっくりと這い出してきた。レンが神社でその声を録音した時、彼はその存在が「認識されること」を糧にして生きているとは夢にも思わなかったのだ。聞こうとすればするほど、分析しようとすればするほど、彼らは自らの名をその狩りのリストに刻み込んでいたのだ。逆再生されたテープは、本質的には歪曲された時間軸であった。その存在は未来を侵食し、彼らに自らの最後の音声を正確に演じ直すよう強要していたのだ。

どす黒い触手が襲いかかり、ソラの首に巻きつき、彼を天井へと引きずり上げた。ソラはむせび泣きながらもがいた。レンは恐怖のあまりドアの方へと後ずさりした。彼は自分が正確にその位置、正確にその時間に立っていることに気づいた。見えざる重圧がのしかかり、彼の口を無理やり開かせた。彼は運命と合致させるため、最後の言葉を発することを強いられた。

「逃げろソラ、逃げるんだ……」

ボキッ!ソラの首がへし折られる音がした。その存在は彼の肉体を完全に天井の闇の中へと吸い込んだ。

レンはどうやって自分のマンションまで逃げ帰ったのか覚えていない。彼は3重の鍵をしっかりとかけ、すべてのカーテンを閉め切り、家中の明かりをすべてつけてから、震える体を抱えてリビングの床にへたり込んだ。

静寂が包み込んだ。恐ろしいほどの静寂だった。

レンは机の上に置かれた専用の録音機材を見つめた。ソラの家にいた時から今まで、それはずっとONのモードのままだった。狂気じみた、そして絶望的な考えが閃いた。もし逆再生されたテープが未来を知らせるなら、この最新のテープを聞けば逃げる方法を見つけられるのではないか?

レンは這い寄り、震える手で機材を手に取った。彼は停止ボタンを押し、録音したばかりの音声クリップを選択して、「リバース」を押した。

ゲァッ…ザザ…

機械がノイズを立てた。最初は階段を走っていた時の自分自身の荒い息遣いだった。次に、ドアの鍵をガチャガチャと閉める音。その後数秒間、テープは無音になった。

その沈黙の後、テープの中で自分のすぐ背後へと近づいてくる、ゆっくりとした、ねばつくような足音がレンの耳に届いた。それに伴って、かすれた、絶望的な自分自身の声が録音機から響き渡った。

「あいつが、お前のすぐ後ろに立っているぞ、レン」

レンの頭皮が麻痺した。手に持っていた録音機が突然、汗ばんだ指から滑り落ち、ドスッと床に落ちた。明るく照らされたリビングルームで、巨大で真っ黒な影が彼の背後からゆっくりと長く伸び、床に落ちた録音機を完全に覆い隠した。

機械はまだ録音を続けていた。それは、途中でかき消された凄惨な悲鳴、骨が砕ける無惨な音、そして最後に、暗闇の中で永遠に続くかのような、身の毛のよだつ貪り食う音を録音し続けた。

今回の「小説家になろう」の「サマーホラー2026」参加作品に最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。

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