武比べ②
陽路の初戦:対 迅(双刀)
次の試合は陽路。
対戦相手の迅は体格の大きな男で、双刀を軽々と振るってみせる。
「遠慮はいらねえぞ、天響の従者!」
「最初からそのつもりだ。」
開始と同時に、迅が突進。
双刀の連撃が矢のように襲いかかる。
陽路は一歩引き、刀を斜めに構えて受け流す。
金属音が連続し、火花が散った。
「……っ!」
迅の膂力は重い。だが陽路の動きは研ぎ澄まされていた。
流れるように刀を返し、迅の懐へ踏み込む。
その瞬間、迅が笑った。
「待ってたぜ!」
双刀が十字に振り下ろされる――
だが、陽路は一拍遅れて踏み込んだことで死角を抜けていた。
「そこだ!」
一閃。迅の首筋すれすれで刀が止まる。
「勝負あり!」
観客席から歓声が沸き起こる。
迅は悔しそうに笑い、肩を叩いた。
「くそっ、やるな……! もう一戦したくなるぜ。」
「こちらこそ、いい勉強になった。」
陽路は微かに笑った。
二回戦でも奮闘した遥花だが、連戦の疲労もあり、準決勝で敗退。
千景よりさらに経験豊富な戦闘員候補を相手に、力及ばずだった。
(まだまだ……もっと強くならなきゃ)
敗退に悔しさを感じながらも、胸の奥には不思議な充足感があった。
「決勝戦――陽路 対 楓!」
場内が一段と沸き立つ。
模範とされる楓と、天響から戻った従者・陽路。
その二人の対戦は、誰もが期待していた組み合わせだった。
観客席で伊吹が口角を上げた。
「おお、これは目が離せないな。実に、実に面白い。」
楓は振り返りざまに睨んだが、その頬はほんのり紅潮していた。




