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和風異世界物語~綴り歌~  作者: ここば


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28/88

鍛錬

悠真の里の奥、土を固めた広い訓練場。

朝露の残る空気の中、木剣と鉄扇が軽くぶつかる音が響いていた。


「ほら、もっと腰を落として! 腕だけじゃなく、全身で受けるんです!」

楓の声は鋭いが、的確で無駄がない。


遥花は鉄扇を構え、必死に楓の斬撃を受け止めていた。

その横で陽路は刀を握りしめ、別の相手と組んでいる。彼の額には汗がにじんでいるが、動きはどこか迷いなく整い始めていた。


少し離れた木陰。

伊吹は書物を胸に広げ、寝転がるようにしてページをめくっていた。


「……ふむ。瑞穂での揺らぎ、やっぱり言霊の流れが特殊だったか。こっちの記録と突き合わせると……」

ひとりぶつぶつ呟きながら筆を走らせている。


楓が振り返り、ジト目で叫んだ。

「伊吹様! せめて見守るくらいしてください!」


「見てるさ、見てる。記録も取ってる。ほら……遥花の鉄扇、思ったより詞脈の流れと相性がいい。握りの角度で力の抜け方が変わる……これは興味深いなぁ。」

起き上がりもせず、にやにや笑いながらメモを取る伊吹。


「……だからそういうことは後でまとめてくださいって言ってるんです!」

楓は文句を言いながらも、再び木剣を振るい、遥花の鉄扇に打ち込む。


「うっ……!」

衝撃で遥花の腕が痺れる。だが彼女は踏み込み、必死に反撃の姿勢を取った。


「いいですよ、その調子! ただし無理に打ち返そうとせず、受け流して!」

楓の指導は厳しいが、表情には確かな優しさがにじんでいる。


陽路もまた別の組手を終え、息を整えながら遥花を見守っていた。

その視線に気づいた伊吹がにやりと笑う。


「ふふ……面白い。やっぱり、綴る者と従者はこうでなくちゃね。お互いの詞脈が響き合う瞬間って、実に美しい……」


「伊吹様! 余計なこと言わない!」

楓がまた飛んできて、伊吹の頭を軽く小突いた。


「いてっ……! いやいや、本気で褒めてるんだよ?」

伊吹は肩をすくめて笑う。


遥花と陽路は顔を赤らめながらも、それぞれの武器を構え直した。



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