魔法のカード 【月夜譚No.236】
自分名義のクレジットカードに、嬉しさと奇妙さを覚える。ようやく大人の仲間入りができたような感覚は喜ばしいのだが、どうにもカードに自分の名前が載っているのが不思議でならない。
ただ単に見慣れないだけなのだろうが、なんともいえない違和感が拭い切れない。
青年はうーんと唸り、しかし首を横に振って口元に笑みを浮かべた。
そんな些細なことを気にしていても仕様がない。兎にも角にも、自身が自由に使える魔法のカードを手に入れたのだ。
とはいえ、使い過ぎには気をつけなくてはなるまい。それで破産した例を実際には知らないが、耳にすることはある。
青年はカードを財布に仕舞い、部屋のテーブルの上に置いた。
――名前のアルファベットが微妙に違っていることに彼が気づくのは、もう少し先の話である。