第26話「愛し愛され」
「…………!」
思いっきり斬ったつもりだった。
が、命までは断てなかった。
「……イヤリング?」
戦闘中は気が付かなかったが、耳にしていたイヤリングがたまたま当たったらしい。最速の攻撃で急所を外してしまったようだ。そのせいで命にまで刃が届かなかった。
もちろんイヤリング自体は真っ二つに斬られている。
私のもう一つの刀、黒天羽は周りの生命エネルギーを吸い取るほどの強大なエネルギーをもつ。その一撃に耐えられた時点で相当な幸運だ。
白峰はもう倒れたまま動かない。黒天羽の衝撃で気を失っている。でも、プロの殺し屋はとどめを刺すのを怠らない。
心臓の位置まで、剣を掲げる。
「まって美波―!!」
やけに大きな声が夜の屋上に広がり、私の耳を劈く。
「まって美波!リリは殺さないで!」
「……なんで」
「だってリリはまだ何もしてないじゃん!わたしを攫ったり殺したりしたけど、美波にたくさん攻撃したけど、でも、他の人にはなにもしてない!」
「……」
もう、メイの言いたいことがわかってしまう。
私たち以外に危害を加えていないのなら、私達が許すだけで穏便にすむのではないか、と。
反吐が出るほどの平和論。それで白峰がまた襲ってきたらどうするのか。
でも。
「……メイは、ヒーローだもんね。敵も守っちゃう」
「へ?」
「……わかった。後処理は金城に任せよう。下に待機させてる」
「あ、え?わかってくれたの?」
メイは物分かりのいい私に戸惑っている。もういちいち顔に出さないでほしい。こっちが恥ずかしいから。
「……あー、あとメイ、」
「……?なに?」
「ありがとう」
「ふふん、こちらこそ、ありがとう」
――
それからというもの、美波は変わらず……、のはずだが、少し丸くなった気がする。
わたしの言うことを聞かなくなったり、わたしを殺したりはたまにあるけれど、少なくなった。
あの一件でなにか心変わりがあったのか。いや、なかったのかもしれないけれど。
本当に少し。ほんの少し。だけど、わたしと美波の関係は、不思議と良くなった。
リリは隣の学校に今も通っているらしい。
わたしもよく知らされていないが、高原先生や唯が何とかしてくれたのだろう。
このふたりとも相変わらずの距離を今も保っている。
美波はいっつも迷惑をかけるし、どうしようもない時もあるけれど。
わたしにとっては大事な人。美波にとってもそうらしい。
これからもわたしたちは、殺されたり、愛したり、愛されたり。
不思議な関係は続いていくのだろう。




