第六夢:Present for you
――翌日。
私は、詰所に任務承諾の意を伝えた。
必要な書類も提出した。
それから、慌しく準備を始める。
――旅支度だ。
護身用の短剣。
先生のお古である火打石。
先生が、初任務出発の際にくれた自炊用具一式。
先生の奥さんが、繕ってくれた寝袋。
同僚がくれた、祝福の意を示すお菓子。
それらを、荷袋に詰める。
次は、移動手段を決める。
もちろん、馬車だ。
厩へ行く。
――そこには、生まれ故郷から一緒にやって来た、私の相棒がいる。
先生の愛馬の横。
蒼空色の瞳。
緑がかった金のたてがみ。
柔乳茶色の毛並み。
〈風馬〉の、「ミリア」だ。
ちなみに女の子である。
「やっほー、ミリア」
柵越しに、柔らかな毛を撫でる。
フィアは、眼を閉じて嬉しそうに鼻を鳴らした。
「随分待たせたね。けど、やっとあなたの出番が来たよ」
そう語りかけると、ミリアは眼を輝かせた。
「うん、すぐ準備しようね」
ミリアを連れて厩を出ると、入り口に先生が立っていた。
「せ、先生?どうかしたんですか?」
任務ではないはずだ。
「なに、お前にくれてやるものがあってな」
ニヤニヤとしながら、言う。
「きっと気に入る。ついて来い」
言われるがまま。
厩から開放されて楽しげな相棒を御しながら、私は先生の後を追う。
「ほら」
先生が指差す。
「――え?」
そこにあったは、一台の四輪馬車だった。
綺麗なボディに青と赤の直線。
そして、さらさらとした真新しい幌。
まだ作られて日が浅いようだ。
「〈ステファン号〉だ」
新型なんだぞ、と先生は胸を反らしている。
「わ、私に……?」
「勿論だ」
…………。
あ、危ない危ないッ。
また、泣くところだった。
「本当に、有難う御座います」
深く、深く頭を下げる。
先生には、本当に頭が上がらないわ。
「気にすんな。餞別だ」
渡すだけ親鳥より優しいだろ、と先生は昇降機の中で見せたような笑顔をした。
私もつられて、笑う。
「頑張れよ」
「――はいッ!」
ファルバン師匠はどこまでも良い人です(笑)
さて、ついに次回よりエリザの旅が始まります!
お楽しみに!
――え、一人旅?
まさか(ニヤリ)