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第四夢:Surprising order

執務室は、至って質素なつくりだった。

けれど、調度品は一級品のようだ。

会長の背後の壁は全て半透明で、そこから差し込む柔らかな陽光が部屋に注ぎ散っている。

そして、私たちから見て右側の壁は書架。

左側の壁には、暖炉や棚が据えられていた。

一通り部屋を見回した後、私はあくまでも失礼にならないように会長を見やる。


日の光を受け静かに輝く白髪。

それと同じ色の髭を生やした口元には、微笑が湛えられている。

褐色の顔には年相応のしわが刻まれている。

白眉の下の双眸は優しげだが、その奥では未だ威勢の良い炎が見て取れる。

〈街道会〉の創立者にして、現〈会長〉。


――ロドリゴ=ルーファス、その人だ。


その後ろには、紺のスーツを着こなした美人秘書、アミルさんが礼儀正しく直立して控えていた。

「まあ、かけてくれたまえ」

会長は肘掛け椅子から立ち上がる。

それから応接用の机と椅子のセットに近付くと、私たちにも座るよう言った。

お言葉に預かり、私たちも腰を下ろす。

「今回の任務はどうだったかね?ファルド」

ニコニコと微笑み、会長が尋ねる。

「えぇ、おかげさまで万事上手くいきました」

「何処に行ったのだったかな?」

「食栄都市としても名高い〈グルトンストック〉へ、〈ハルツーラ〉からの食材を届けに行って参りました」

こいつが大喜びで、と先生が私を見やる。

それに釣られて、会長も私を見つめてきた。

「どうしてかな?」

うっ……笑顔が眩しい。

「わ、私、色々な所の食べ物を食べるのが趣味でして…」

先生のお陰でそれほどは緊張していないのだけれど、急に振られたので内心焦って噛んでしまった。

会長はというと、そうかそうかと笑ってくれていた。

「君も始めてみた時に比べて、随分としっかりとした顔つきになってきたな」

「きょ、恐縮デス」

ここは素直に照れることにする。

「ファルドもそう思わんかね」

「思いますね。ま、そそっかしいのが玉に瑕ですが」

……こんのバカ師匠。

一言多いのよ!

それを聞いて、会長はくつくつと笑った。

「それでは、まだ早かったかな?」

「いいえ、そんなことはありません」

先生、即答。

――何が、早いというのだろう?

そういえば、〈大回廊〉でも先生の先輩がそういったことを口にしていたような気がするけど――

「イライザ君」

物思いに突入しかけていた所を、引き止められる。

「はいッ」

「君は、この仕事を始めてどれくらい経つ?」

……急な質問だなぁ。

けれど、答えなくちゃ。

勘定を始める。

十八の春頃、ここに来たから――

「えっと、そろそろ一年になります」

「ほう、もうそんなになるかね」

会長は、しきりに頷いている。

「貴重な経験も、沢山してきただろう」

「はい。先生には色々と厳しく叩き込まれてきました」

『厳しく』の部分を強調。

先生が、軽くこちらを睨んでくる。

ふん、さっきのお返しよ。

そんな私たちの様子を微笑で眺めた後、会長は後ろに控えるアミルさんから書類を受け取った。

「ファルドの言う通り、問題はないだろうな」

信頼に値するには十分な眼差しだ、と会長は頷いた。

オホン、と一つ咳払い。

「それでは、イライザ君」

会長が、〈街道会〉の公印が捺された書類を差し出して来る。

「喜びたまえ」

会長が微笑む。

何、何?どういうこと?


「君に、初の単独任務を命じよう」 


――――え?

えぇぇえぇぇぇぇッ――――!?          


驚きの展開。

しかし、当然と言えば当然の展開…?

もしファルバンと旅をする話か?と思っていた方は期待を裏切り申し訳ありませんでした(苦笑)

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