第二夢:At home
カールがかかった蜂蜜金髪を弾ませながら、馬車の中から可愛らしい一人の少女が出てきた。
小柄な身体には元気が漲り、大地濃茶のぱっちりとした瞳はきらきらと輝いている。
「先生!先に行って詰所に帰還報告しておきますねッ」
彼女が声をかける。
「ああ、そうしておいてくれ」
答えたのは、馬の手綱を取る長身の男。
ボサボサで、〈血紅石〉より暗い赤褐色の髪を後ろで適当にまとめた髪形。
シャツにジーンズといった、ラフな格好。
容貌も悪くは無く、精悍。
筋肉もついているので、堂々とした体躯だ。
馬の扱いも手馴れている。
自然体の男は、そのまま厩の方へ。
少女は、三階建ての大きな建物へと入っていく――
◇ ◇ ◇
〈街道会〉は行商組合に籍を置く、民間交易機関だ。
物流の中心を担い世界の各都市の橋渡しをするこの仕事に、私は誇りを持っている。
とは言っても、私――エリザ=ブライドルは所詮ヒヨッコのピチピチ新米トレーダー。
ある程度は使えるようになったと思うけれど、まだまだ師であるファルド=オーバーンには敵わない。
閑話休題。
とにかく、私は今、詰所に帰還の報告を終え、先生と〈会長〉の執務室へと向かっている。
普段、任務終了の際にわざわざ最高官位の元へ赴いたりはしないけれど、今回はそれなりに重要な任務だったとか、依頼主からのプレゼントとか、何か事情があるに違いない。
べ、別に期待しているわけじゃないんだから。
私の少し前を堂々と歩く背を、誇らしげに見つめる。
さばさばで淡白だけれど、時には優しくて誠実。
美人の奥さんと可愛らしい一人の子をこよなく愛している所帯持ちの熟練トレーダー。
同僚に限らず、先輩・後輩からも広く信頼されて、一目置かれている。
私の憧れでもある。
そんな自慢の師匠に、次々と声がかけられる。
「よぉファルバン、お疲れ。嫁さんと子供は元気か?」
「ああ、よろしくやってるよ」
「オーバーン君、おかえり。……もうそろそろかい?」
「ええ、おそらく。少し寂しい気もしますが」
「ファルバン、お前の嫁オレにくれ」
「死ね」
「じゃあエリザちゃんでも良い!」
「お前も死ね」
「誰でも良い!」
「やらん」
ハキハキと受け答え、捌いて行く。
私たちは、二階の待機用〈大回廊〉を後にする。
それから、会長の執務室がある三階へ向かうために、蒸気機動の昇降機に乗り込んだ――
ルビが多いですね(^_^;)
この物語はこういう文体でいこうと思っています。
慣れていただければ、幸いです(^^)