表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
34/36

第三十二夢:Silent night


――しばらく進んだ山道沿いにて。


「ッ……」

「ガマン」

私はクリフの傷の手当てをしていた。

日も暮れてきた。

このままでは進むことも出来ないので、今宵はここにキャンプを張ることにする。

「そうは言っても――イテッ」

頬に出来た幾つもの切り傷に、〈リコ〉の葉を磨り潰して塗る。

「消毒なんだから仕方ないよ。それに、痛いってことはバイ菌が入ってた証拠(あかし)だよ。ちゃんとしないと」

「それは分かっていますが……う~」

あんなに勇敢で強いはずのクリフが、私の前では、こうして顔を(しか)めている。


――なんだか、嬉しい。


……なんだそりゃ。

自分が分からないや。

笑えてくる。

それが表情に出たのだろう。

「何がおかしいんですか」

と、クリフがむくれた顔で聞いてきた。

「別に~」

クリフがふざけ半分ながらも怪訝(けげん)な表情になり始めたのを見て、私は慌てて話題を変える。

「ア、アイギスさ、親に出会えて良かったね」

「……そうですね。まさかとは思いましたが」

クリフが穏やかに表情に戻る。

「もう大丈夫でしょう」

アイギスが危険に(さら)される心配はありません、とクリフが安心したように言う。

「大変だったけどね」

「もう死ぬかと思いましたよ。どうにか生きながらえましたけどね。本当に、親は怖い」

私とクリフは、安心したように笑った。


もう、何も怖くなかった。


「はい、終わり」

「ありがとう」

「どういたしまして」

それから、私たちは夕食にする。

ミリアと、栗毛君には、〈ロントルトン〉の新鮮な野菜の盛り合わせ(サラダ)を振舞った。

私たちは、〈ミンネティー〉片手に、ふかふかのパンを()き火で(あぶ)り〈ララム〉のジャムをつけて、頬張った。

もう、最高だ。

満足満足、と余韻(よいん)に浸っていると、クリフが口を開いた。

「話しておきたいことがあるんです」

何時(いつ)にも増して、真剣な表情だ。

「な、何……?」

私の表情も自然に引き締まる。


「僕の、過去のことです」


揺らめく焚き火の炎を眺めながら、クリフはぽつぽつと喋り始めた。


「僕は――白追者(アルバス)でした」


――え?

驚きが隠せない。

クリフが、私を見据える。

「過去形です。白追者だった、というのが正確ですよ」

「ど、どうして辞めちゃったの……?」

もう、その質問を投げても良いような気がした。


知りたかった。


彼の何もかもが。


たとえ、土足で心のうちに上がりこんででも。


――クリフは、その質問に沈黙した。


しばらく時間が空いてしまい、申し訳ありません<(_ _)>

リニューアルされたサイトにとまどってまして(笑)


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ