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第三十夢:Showdown

――どうする。


加速していた意識が、減速を始める。

直線(まっすぐ)を走っていたのに、迷宮に潜り込む。

巡り回る螺旋思考(スパイラル)

良い対抗策(アイデア)が思い浮かばない。

これが、恐慌(パニック)というものだろうか。

どこか冷静な頭の片隅がそうつぶやく。


――しかし。


どれだけ分が悪いとしても、引き下がることなど出来ない。

楯が屈するなど、出来ない。


ピシィ…バシバシバシ……ズズズズズゥゥゥゥン――


〈クィア〉が、全身の氷縛を解き、動き出した。

まだ少し鈍いようだが、その双眸(りょうめ)は燃え上がっている。

さらに、隆起した甲羅の棘針を展開し、陽光の熱を受ける面積を増やしているようだ。

このままでは、時間の問題。

もとの動きに戻ってしまう。

ここからが、勝負所(ほんばん)か。


――第三ラウンドの開始だ。


自然と頬が緩む。

戦いに悦楽(たのしさ)を求めているのでは無い。

けれど、自然災害のような相手と一対一(サシ)

到底体験できぬようなことだ。


少し、楽しい。


〈クィア〉の右前肢が振るわれる。

心力を足裏に()めて、横っ跳び(サイドステップ)

数メトルを一気に跳び、大地を(えぐ)る一撃を回避する。

それを読んでいたかのように、今度は左が来る。


――連続攻撃(シリーズ)だ。


そのニ発目は(かわ)せない。

そう判断すると、強く大地を踏みしめ、楯を構える。

衝撃を少しでも和らげるために、楯に心力(クオーレ)を流し備える。


――凄まじい衝撃。


受け止めきれず、吹き飛ばされる。

数メトルを軽く飛び、どうにか転げぬようにバランスをとって着地。

「くッ……」

身体が(しび)れていた。

心力を張ったにも関わらず、あの衝撃(インパクト)

しかも、スピードが戻りつつある。

たまったものではない。

更に迫り来る一撃二撃を躱し、次撃は避け切れず楯で受け流す。

が、随分と弾き飛ばされる。


――気がつけば、〈旗〉の所まで下がっていた。


なんて体たらくだろう。

あれほど護るといっておきながら、この様だ。

歯噛みする。

このままでは――


あの悪夢が脳裏に(ひらめ)いた。


――内で、何かが弾けた。


――何かが、確かに爆発した。

ふざけるな。


させない。絶対に。


死ねない。絶対に。


還る場所が、あるから。


……そう約束したから。


――意識が、再び加速を開始した。


立ちはだかる障壁(かべ)を全て突き破って、加速(アクセル)加速(アクセル)

トップスピードへとギアが噛み合う。

全てが、再び忘却の彼方へ。

されど、彼女のことだけは、心の中央(まんなか)に。

そこから、ひたすら溢れている感情を力に。


負けられない。


負けない。


大地を抉り、巨山獣(クィア)が迫ってくる。

一瞬が、永遠へと引き伸ばされた。

全てが、スローに。

〈クィア〉の憤怒宿る双眸を見据え、己も走り出す。

(ミゾレ)〉にありったけの心力を流し込んだ。

司力さえも取り込んだ。

――凄まじい発光現象。

〈霙〉が、燐光を発し、流れ星のような軌跡を現す。


(ほとばし)る想い。


「うぅぅおぉぉぉおぉぉぉぉぉ――――――!」


――絶叫。

全てを乗せて。


クゥゥゥゥアァァァァァァァァ――――――!


呼応するかのように、〈クィア〉が()える。

全てが、ビリビリと震えた。

大気が、動きを止めた。

山が、戦慄した。

世界が、時を止めた。


息を潜め、ある一瞬を待っているかのように。


その時は、すぐ訪れる。

今、両者が交錯する。


――寸前。


「待って―――――――――――ッ!」


主の叫び声。

「!」

しかし、もう止まる事は出来ない。

――ならば。


――――激突。


静謐(せいひつ)とした世界に、壮絶な轟音が響いた――


2話にまたがった長いアクションシーンも、

ついに決着のときです(^^)

はたして、どういう展開になるのでしょうか?

アクションって、書き始めたら楽なのですが、文章内のスピーディさが求められます。そこなんですよね。

僕は、うまくいきましたでしょうか?


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