表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/36

第十六夢:Vacant hill

それから、数時間。


時刻は、お昼近く。


私たちは、ようやく目的地〈ロントルトン〉へと向かう、別れ道にたどり着いていた。

「な、何コレ……」

そこで、ソレを見た。

「大きい……」


――それは、山道の大岩に、ぴたりと寄り添うようにして項垂(うなだ)れていた。


緩やかなカーブを描く(いただき)はギザギザと隆起し、その上に鳥が止まろうものならそのまま串刺しにされてしまいそうだ。

「これはまた随分……」

クリフが相棒さんから降り、巨塊(それ)に近付いていく。

「あ、危ないよッ」

「大丈夫ですよ」

護衛する者(じぶん)護衛される者(エリザ)に心配されるとはなんとも滑稽だ、いった表情でクリフはこちらを向く。


「コレは恐らく――抜け殻でしょうから」


「え……?」

理解が出来ない。

「もう少し行けば分かりますよ」

栗毛君(あいぼう)に乗り直し、クリフは進みだした。

私もミリアを急かし、後に続く。

「ほら」


――意味が分かった。


私たちが見ていたのは、側面だったらしい。

で、こちらが正面。


大きなソレは縦にパックリと割れていた。


そこから、何かが這い出して行ったかのように。

ん?と、いうことは――


「そう、これは原生生物の脱皮(せいちょう)の後です」


クリフが、私の表情を読みながら言う。

なんて大きいのだろう。


ゆうに、七メトルは超えているんじゃないだろうか。


原生生物(いきもの)も此処までくると、最早自然災害(ディザスター)としか言いようがありませんね」

クリフが苦笑しながら、その抜け殻(デカブツ)を眺めた。

私は自然の驚異に圧倒され、言葉も出ない。

「見た所、脱皮してまだ日が浅いようだ。これからは、最善の注意を払って進みましょう」

「……そう、だね」

最悪の場合出くわすかもしれません、と末恐ろしいことを言い残し、クリフは進み始めた。


――その時。


私の視界にチラリと動くものが入った。

「何?」

抜け殻の穴の根元。

そこらへんが、揺れたような。

「どうしました?」

先を進んでいたクリフが、怪訝な表情で振り向く。

「いや、ちょっと……」

好奇心というものは、抑えきれない性質(タチ)だ。

ミリアに待機(ステイ)の指示を出し、馬車から降りる。

「何か動くものが、ね」

そう言うと、クリフが慌てて戻ってきた。

「危険です。原生生物だったらどうするんですか」

旗を降ろし、腰の得物に手をかけながら走り寄って来た、クリフが追いつく。

「あそこ。あの根元らへんがさっき――」

「分かりました。私の後ろにいてください」

二人で、やや慎重に近付く。


ガサリ。


陰で、何かが動いた。

やはり、見間違いではなかったようだ。


瞬間。


――何かが、飛び出してきた。


大きい抜け殻でしたね(^^)

この物語の世界観では「生物」さも、我々の世界とは異なります。

分かりやすく言えば、あちらの世界にはカンブリア紀やオルドビス紀時代のものに良く似た植物が繁栄し、ジュラ紀や白亜紀時代の物に良く似た生物が跳梁跋扈しているのです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ