第十三夢:Good morning
――翌朝。
「ねぇ、大丈夫?」
あまりにもうなされていたので、ベッドで唸りながら寝ているクリフの肩を掴み、揺すってみる。
「く……ッ!」
「きゃッ!?」
がばぁっ、と凄いスピードで起き上がる。
こちらが驚いたくらいだ。
「え、りざ……」
はぁはぁ、と荒い息を吐き額に浮き上がった汗を手で拭うクリフに、一杯の水を渡す。
「大丈夫?」
その声に一瞬ビクリと反応したようだけれど、クリフは黙ってその水を受け取った。
一口一口、慎重に嚥下する。
それからクリフは、ポツリ「夢、か」と呟いた。
「悪い夢でも見た?」
カーテンの隙間から射してくる朝日に照らされ、浮かび上がったクリフの顔は青ざめている。
「ええ。……とても、とても嫌な夢でした」
彼の瞳は、驚くほど冷めていた。
それなのに、身体は僅かに震えている。
――これは、あまり突っ込まない方が良いみたい。
人の部屋に土足で踏み込んじゃいけないものね。
カーテンを開け、窓も開ける。
木洩れ日が、柔らかく照らす。
澄んだ風が、頬を撫ぜる。
気持ちの良い朝だ。
「私、朝の支度してくるね。広間で会いましょ」
未だベッドに腰かけているクリフの返事も待たず、私は部屋を出た。
服を着替え、身なりを整えると、私は広間へと向かった。
おばあちゃんは、早起きのようだ。
広間からは、すでに芳しい匂いが漂ってきている。
「おはよう、おばあちゃん」
声をかけると、割烹着姿のおばあちゃんがひょこりと姿を現した。
「あら、おはよう。随分と早いのねェ」
「おばあちゃんこそ。何か手伝うことある?」
そう言うと、嬉しそうに首を振られた。
「いいえ、ありがとう。残念ながら、食事の支度は終わりましたよ。座って待っていてちょうだいな」
「はーい」
大人しく従うすることにする。
「わぁ……おいしそう」
机の上には、既に食事が並んでいた。
〈香草入り砂震鳥の玉子焼き〉。
〈寝床魚のすり身団子入り豆味噌のスープ〉。
〈鈍行牛の肉茹でサラダ〉。
〈蛇目魚の塩焼き〉。
〈白く光るほかほかのご飯〉。
〈剥かれた芳潤種の実〉。
朝から、なんとも豪華なメニューだ。
しばらくして、クリフが広間へやって来た。
昨日と同じ、〈盾旗団〉の団服だ。
「おいしそうですね」
頬に温かみが戻っている。
もう大丈夫みたいだ。
「私もご一緒してもいいかしら?」
おばあちゃんが、割烹着で手を拭きながら、厨房から出てきた。
「もちろんです」
クリフが微笑む。
「一緒に食べよ、おばあちゃん!」
「ありがとうねぇ」
三人で、小さな幸せを分け合った――
前回の話はクリフの夢だったようですね。
彼は重い過去を背負っている憂いキャラです。
いつか明らかになる……はず。
期待せずに、お楽しみに(笑)