第九夢:Never fear
「〈第四白線〉から〈林山バムクーヘル〉の整備山道へ。そのまま山道沿いに数日走ったところにある静かな山村〈ロントルトン〉への物資配達任務、ですか……」
書類を眺めながら、ファルドは顰め面をしていた。
「不満かね?」
ファルドが座る向かいには、ロドリゴが煙筒を吹かしながら椅子に腰掛けている。
後ろには当然秘書のアミル。
「……いえ、そんなコトは」
ファルドは、顔を上げる。
「……逆に不安なんですよ」
親心か、とロドリゴは微笑む。
「原生生物の棲息地域を通るんですよね?初の単独任務で襲われたりでもしたら――」
「何、心配はいらん」
暗い表情でぼそぼそと喋っていた馬鹿師匠を遮ると、ロドリゴは一度大きく煙を吐き出した。
仄かに爽やかな香りが辺りに散る。
――こいつ、こんな表情もするのだな。
彼女を任せて正解だったようだ。
相互に影響を受けて、良い方に向かったらしい。
「彼女には、特別に護衛をつけてやったんだ」
「それでもですね――」
「私の目に間違いは無いよ。彼なら彼女を護れる。そして、彼女ならこの仕事をまっとうできる」
ロドリゴは、断定的な口調で話した。
ファルドも最初は不安げな表情ではあったが、どこかで納得したようだ。
「……奴なら、やれる。俺もそう信じています。いらぬ心配をかけました。それでは」
「うむ」
――ファルドが退席してしばし。
「泣いて引き止める親鳥の方が、奴よりマシだ」
と、ロドリゴはアミルと笑いながら呟いた――
◇ ◇ ◇
――何処までも青かった空が、蜂蜜色に染まる頃。
私たちは、まだ〈第四白線〉沿いの街道を走っていた。
多かった人通りも、段々と少なくなってきている。
そろそろ、今日は休む頃合いだろうか。
私は、横を並んで走るクリフを見やった。
たなびく消炭色の髪が夕焼けを受けて、湖面のように煌いている。
不覚にも、一瞬見とれた。
日が、山の陰に隠れ始める。
クリフがこちらの視線に気付いた。
「――そろそろ休みますか?」
心を読んだのではないかというほど、的確な台詞。
見とれた気まずさと見透かされたのかという焦りで、頬が紅潮しかけたのを必死で抑えながら、私は頷いた。
「分かりました。では、あの宿にしますか」
クリフが指差す先には、一軒の旅籠がポツリと光を漏らしてながら佇んでいた――
ファルバンは親バカな訳で。
さっそくエリザは乙女チックエンジン全開で(^_^;)
先が思いやられますか……?(笑)
心配無用ですよ!
多分(-_-;)