第八夢:Awkward yet
――そこで、唐突に増えた度の道連れに内心焦りながらも、現在に至るのである。
(気まずい。非ッ常に気まずいわッ!)
打開策を急ピッチで組み立てては、あのつっけんどんなオーラにより瓦解させられている。
だけど、とにかく何か話さないと。
これからおよそ数日間は確実に寝食を共にする仲である。
旅は、楽しく行きたい。
いや楽しくないといけない。
「あのぉ……シルフォードさん?」
「クリフで結構ですよ、ミス・ブライドル」
こちらの方を見ず、返事。
少し、ムッ。
だけど、そこは我慢。
「私の方こそエリザで良いよ、クリフさん」
「……エリザ?」
怪訝そうな表情ではあるが、こちらを向く。
そう、それで良いの。
話すときは人の眼を見ましょう。
コレ鉄則ね。
「私、イライザって名前が、堅ッ苦しくてあんまり好きじゃないんです。だから、スペル的には変わらないエリザ、って皆には名乗っているの」
そうなのですか、とクリフはしばし沈黙。
「では以降、エリザ、と呼ばせて頂きます」
「そうしてください」
第一段階――エリザと呼ばせる。
無事成功。
第二段階、会話。
ミッションスタート。
「クリフさんは、何か好きなものとかあります?」
ミリアの手綱を上手く捌きながら、私は彼に質問する。
「……と、言いますと?」
あら。
少し、範囲が広すぎたか。
寡黙な印象のクリフには、難しかったかもしれない。
「――好きな食べ物とか、趣味とか」
私が補足説明をすると、クリフをそうですね、と呟きしばし思案した。
「好物は――強いてあげるなら――〈砂震鳥の香草焼き〉なんかが好きですね。あの食感とスパイスの絶妙なマッチが堪らない」
……寡黙ではないようだ。
自分で話題が広げられない性質なのだろうか。
暗い雰囲気だから、そう見えるだけかしら。
「良いですね。私もアレは大好きです」
何よりヘルシーだし。
〈砂震鳥〉と言うのは、この大陸固有の鳥類だ。
しゃきしゃきとした独特の肉質と高たんぱく低カロリーが特徴の、大陸定番鶏肉である。
でしょう、とクリフは微笑を見せた。
――なんだ、出来るんじゃない。
業務用などではなく、ホントの笑顔が。
「……エリザは?」
今度は、クリフが聞いてくる。
自分の相棒を信頼しているらしく、手綱を放している。
彼の背では、盾の紋が刺繍された旗が風に翻っていた。
「私は――なんでもかな」
そういうと、はぁ、と言った表情をされる。
「特に甘いものが大好きですッ」
女の子らしいですね、と先程よりは深い笑顔。
「ふふッ」
高い社交性があるとは、あまり思えないけど。
「どうしました?」
愛嬌は、あるんじゃないかしら?
「いえ、なんでも」
心配して損した。
「そう、ですか」
結構、楽しい旅になりそうじゃない――
まだ少ぎこちない会話。
仕方ないですね(^_^;)
けど、エリザは頑張ってるし、
クリフも満更ではなさそう。
良いコンビかもしれないですね(^^)