上村麗華の過去
はー、今日はまさかあんなところ見られるなんてツイてないな。
でもかっこよかったな、ヒロト君。また昔の時みたいに助けられちゃった。
ちなみに心の中ではヒロト君って呼んでいる。
これぐらいは許されてもいいよね?
そうして思い出に浸りながら、ベットでごろごろ、じたばたしていると、
ピコン!
と友達からRAIN が。
昔は友達からRAIN が来たりすることに憧れていたけど、実際に来るようになると少し気疲れするなあ。
まぁ今の生活も悪くはないんだけどね。
私こと上村麗華は、昔は友達がいないボッチな根暗女だった。
それにオシャレにもほとんど気を使わなかったため、髪の毛はぼさぼさでニキビが多く肌もガサガサだった。
そんな私は友達がいなかったためかアニメにはまった。
それはもうひどくはまった。どのくらいハマったかというと、泥沼のようにハマった。
そしていつしかアニメを見るために学校に行かなくなっていった。
所謂引きこもりってやつである。
そんな私を見かねたお父さんとお母さんは気分転換に旅行に連れてってくれた。今私が住んでいるこの辺りの場所に。
そこで私は運命的な出会いをする。
まぁヒロト君なんだけどね。
当時の私は今日みたいにスマホを落としていた。
その時、私は親と別れて行動していたので、非常に困っていた。
そんな時に声をかけてくれたのはヒロト君だった。
「大丈夫ですか? 何か困っているなら手伝いましょうか?」
ってね。キャーー!
当時の私の見た目はなかなかに怖いものがあったのによく声をかけてくれたと思う。
そして私は恋に落ちた。いや早過ぎッて、まぁ我ながらちょろいと思うけどね。
けど仕方ないじゃん。あんなイケメンに紳士な態度で接してくれたら……落ちないほうがおかしいじゃん。
そしてそこからの私は変わった。
学校にも行き始めたし、髪の手入れもきちんとするようになったし、食生活も変わった。運動も始めるようになったし、眼鏡もコンタクトに変えた。
そしてヒロト君に釣り合う人間は当時の私みたいなタイプではなく、クラスの中心的存在だと思ったので、「絶対に友達が100人できる方法100選」という本も読んだ。
今でも思うけど、私って馬鹿だと思う。ほんとに……。
だって普通に考えてそこまでするかな。名前も知らない遠く離れたイケメンな男と結ばれるために。
ただ当時の私は乙女だった。アニメみたいな恋をして、その男の人と結ばれて一生幸せに暮らしていくと、本気で思っていた。
そんな私だから頑張れた。
そんな私の変化に両親はとても喜んだ。そして私が変わった原因が今の町にあると考えて、高校に入ったらそこに引っ越すと言ってくれた。
当時ここまでしてくれた両親には感謝しかない。
そして私はヒロト君が一番いる可能性の高い、その街で一番人の多い高校を受験した。
そうして迎えた入学式。この日ほど神様に感謝したことはない。
そう、なんとこの学校にヒロト君がいたのだ。ヒロト君は男女問わず囲まれていたので、すぐに分かった。
ヒロト君とはクラスが違ったが、まだ2回チャンスはあると自分磨きをしていたある日。
あれは入学してから2週間ぐらいだっただろうか。
あるうわさが学校中の女子の中に走った。
“一ノ瀬ヒロトは明るくて積極的な女子が好きらしい”
この噂はヒロト君と同じ中学出身の女子たちがヒロト君の元カノの話をしていたことから始まったものだ。
何でも中学2年の時にヒロト君に彼女がいたらしい。そしてその彼女は友達が多く、才色兼備の誰もが憧れる存在だったらしい。
そうして、そんな彼女と付き合っていたヒロト君の好きなタイプは明るいクラスの人気者という感じのイメージが女子の間では共通認識となった。
この噂の影響で多くの女子がクラスの中心を目指して、ギスギスし出した。
何としてもクラスの中心、ひいてはヒロト君の彼女になるための戦いが始まった。
1年生の時は人数が多いせいで、ヒロト君と話すことが出来なかったため私は委員長などをやることで地盤を固めることにした。
ちなみに委員長はもう二度とやりたくないな。根が恥ずかしがりやな人見知りなためホントにしんどかった……。
幸いにヒロト君の防御力は思ったよりも高かったため多くの女の子たちが玉砕していった。
最初はヒロト君が告白されるたびにドギマギしていたんだけどね……。
多くの女の子たちが散っていく中で迎えた2年。なんとヒロト君と同じクラスになりました。イェーイ!
そんな感じで浮かれていました。
しかし、ヒロト君としゃべる機会がないまま1か月が過ぎました。
何してんだって? なんもしてないんだよ!
こういう時に持ち前のコミュ障が発動して喋りかけられないんだよ!
けど!けど!今日なんとヒロト君から声をかけてくれました。
思わずヒロト君と呼びそうになって、焦ったなあ。
そして昔みたいに一緒にスマホを探してくれてほんとにかっこよかったな。
明日お礼を言わないとなー。
そしてあわよくばまた話せたらいいな、なんてね。フフッ