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第一章 第九部 過去と現在

「バシッ、ガン、プスー」

「お母さん...」

彼の記憶に残る大きな出来事。彼の母さんが息を引き取ったその日の出来事。彼は今その夢を見ていた。病院のベットでたくさんの管につながれている一人の女性に寄り添う彼は涙を流しながら手を握っている。

そんな彼の横では医者が機械の出力を落として、左手首を見て現在時刻を言っていた。

「カキンッ。ガシャン、」

「優..優馬...優馬起きて」

そんな夢を見ている彼を現実世界で誰かが呼ぶ声と、重なり合う鋼の音で彼を現実世界に呼び戻す。

ほほに涙を流しながら体を起こした彼は温かく包むユーの翼で少しづつ気持ちを落ち着かせていった。

「ユーいったい何が起こっているんだ」

「僕も優馬がうなされる声で起きたんだ、だから何が起こっているのか僕にもわからないの」

ユーは彼を包んでいた翼を少しずつ広げ、しょぼんとゆう顔を見せた。

「そうか、僕も眠っていたんだお互い様だろ」

そういった後彼は開けた周囲を見渡した。そこは薄暗く、埃が舞っていて、数年間人の手が付いていない様子であった。

「なんか鼠の巣みたいなところだね」

「そうだね、取り合えず此処からでようか」

薄暗い部屋には光の差す場所があり、彼らはそちらに近づいて行った。そして彼らが光のさす場所についたとき彼はまたあの時の声を耳にした。

「痛い、だれか助けて」

「誰、どこにいるんだ」

「痛い、痛い。助けを呼びたいのに声が出ない、だれか...」

「優馬どうしたの?」

「誰かが助けをもとめているのだけれど、場所がわからないんだ」

確かに聞こえる声の方向を頼りに彼はあたりを見渡してあっちだと指をさした。今彼に聞こえる音は三つ、鋼同士がぶつかり合う音とスキル多言語で聞こえる悪魔の声と助けを呼ぶ声。鋼のぶつかる音と悪魔の声は同じ方向から聞こえ、助けを呼ぶ声はその反対側から聞こえた。

「そっちからは何も聞こえないよ」

颯爽と声の方向に走る彼を追いかけながらユーは助けるならあっちじゃないかなと後ろを向きながら言っていた。

そんなユーの声も聞こえないくらい夢中に走った、息切れが激しく意識が朦朧としていた。


そこまでしても彼は助けたい理由があった。それは彼がまだ幼い時のこと、親父が死んで妹と母親と三人で暮らしていた時、家族の中で唯一男だった彼は責任感に追われていた。

「母さん仕事大変でしょ、少し休んでもいいんじゃない?」

彼は幼い時から心優しい子だった。

「大丈夫よ、それよりも優馬の方が大変じゃない?家事のこと全部任せちゃって」

母親は仕事ばかりでほとんど家にいなかった、食事から洗濯まで家のことは彼がやっていた。妹は小学生だったから、彼がやらやらなければと、強く思っていた。

そんな他愛もない会話をしている時だった。一本の電話がかかってきた。妹が交通事故に巻き込まれて重傷、至急病院に来てくれとのことだった。


「この町は僕を歓迎してくれた、それなのに。死なせたくない、、、」

疲れ切った両足が力尽きぴたりと止まってしまった。その時だった。

「優馬、あそこ」

壁が崩れてて瓦礫の下敷きになっている一人の女性がいた。彼女はギルド受付嬢を担当してくれた。

「シロエ」

最期の力を絞ってシロエのもとに駆け寄った彼は上に重なるいくつもの石を退かして、助け出した。

「ユー背中に乗せられるか」

「う、うん。でもこの子、すごく弱ってる。」

彼女は息をしているのかわからないほど弱い呼吸と心拍数だった。

どうする、結局ダメなのか、僕には誰も救えないのか。そう心で思ったときユーに出会った時のことを思い出した。確か

「スキル 完全治癒」

冒険者プレートを取り出した彼はスキル欄に合った、一番よさそうな回復スキルを読み上げた。

しかしながら、多言語取得とは違い、対象者がいるスキルの使い方がわからなかった。その時シロエは動かすのもやっとの腕を動かし、彼の手を持ち自分の胸付近にあてた。

「これでいいのか」

彼女が今不自由なのは声帯だけであり、困っている彼の行動を理解し教えようとしていた。

「よし、完全治癒」

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