第一章 最終部 彼がこの世界に来た意味
ソフィがまた一息飲んで真剣なまなざしで話を進めていった。
「同じくこの本に記されていることからの推測にはなるのだけれど。」
そういうと英雄の冒険者プレートが乗っていたページから数十ページ遡ったところで手を止めた。
「悪魔の大群に世界の半分ほどが飲み込まれた、このままだと私の町まで襲われてしまう、そう思った時だった、一人の英雄が立ち上がったのだった。これが英雄松島さんですか?」
「ああ、そうだが重要なのはそこではない」
そういいソフィは右ページの最後の行を指さしこういった。
「世界を滅ぼしに現れたのは、「別世界の住民」だった。」
そして左のページにはこの人について詳しく記されていた。
「職業 操りし憎悪 称号 神をも滅する者」
「つまりは、数千年前に現れた「別世界の住人」と同じようなものがまた現れたと思う。」
「つまり、その「別世界の住人」を倒すためにこの世界に僕は来たのか?」
「多分そうだろう」
この話を聞いてやっと彼はキスティインがいっていた世界の問題を知ることになった。そしてキスティインから任された彼の宿命だと気づかされることになった。
「もし、僕にできるようでしたら。全力で立ち向かいたいと思います。」
彼はさっきまでとは違い、自分にどれだけの希望があるのかを知り。きりっとした顔をして頭を下げた。
「よかった。」
「ただ一つ、今はユーを第一に里に返したいと思っていますので。そこのとこはどうかご了承ください」
再度頭を下げた彼は世界も大切だけど、まずはユーのことを里に返したいと伝え、頭を上げた。
「きっとそういうかと思っていた、そのことなら心配いらない。入ってくれ」
ソフィがそういうと彼らが入ってきた扉から顔をちょこっと出した、白髪の女性がのぞき込んでいた。
「今日からあの子も一緒に旅について行ってもらっても構わないか?」
「え?シロエが?シロエはいいの?」
ぴょんと扉から姿を現したシロエはのそのそと彼に近寄って行き耳元でこういった
「助けてもらったこと感謝しています。」
それは、いかにも、私もお供させてくださいと、言わんばかりにほほを赤らめて、後ろを向いていた。
「それと、この本をきっと役に立つだろう、英雄のことや、悪魔のことを事細かに書かれているから。どうか持っていってほしい」
「大事に保管してたみたいですけど、いいんですか?」
「持って行ってください」
分かりましたと彼はその本を受け取りわきに挟んだ。
「気になったことはシロエに聞いてくれ、それとこれも渡しておかないとな」
ギルドマスターの机をもう一度引き、一枚のカードを取り出した
「これは通行手形だと思ってくれればいい、いろんな場所で使えるから。旅も楽になるだろう。」
「わかりました、ではユーも待っているので、そろそろ失礼いたします、シロエもこれからよろしくね」
「よ、よおしくお願いします」
「ではありがとうございました」
ドアを潜り抜けて振り返ると、希望のまなざしを向けた二人がこちらを見ていて。一礼をしてから彼らは自分の部屋へと戻っていった。
「支度も済んだことだし。そろそろ行くとするか」
「行き先は?」
「あーそのことなんだけど、ドラゴンの里とか知らないよね?」
シロエに問いかけると、指にあごを載せて首を傾げながら、少し経つとあっと、手をたたいてこういった。
「私ドラゴンについて研究してる友達がいるの」
「お、それはどこにいるんだ」
「えーとクリセストって町なんだけど、ここからだと、向こうかな?」
そういいながらシロエは上り途中の太陽のほうを指さした。少し不安だがそもそもどっちに進むかもわからないから、どっちに進もうが変わらない。
「よしじゃあそっちに行ってみるか、」
ユーの背中に乗りながらそう言って、彼はシロエに手を伸ばして乗りなと合図をした。
「え、この子に乗るんですか?」
「大丈夫落ちないから多分」
「いいんですか?」
「いいから」
「早く乗ってよ、どんだけ待たせるの?」
「あ、ごめんごめん」
「いまなんて?」
あ、そうだと彼は冒険者プレートにそれっぽいスキルが乗っていたのを思い出して、懐から取り出した冒険者プレートの裏側を見た。
「うん。スキル 聴覚共有。聴覚共有」
シロエの手を握りながらそう唱えると。
「僕の声聞こえるようになったの?優馬?」
「多分ね」
「うん聞こえる、聞こえるわ!あなたがユーね?」
「...」
「え?ユー返事は?」
「え?何に???」
あ、そういうことねと次に彼はユーの背中に手を当てて聴覚共有を唱えた。
「これで聞こえるかな?」
「き、聞こえてますか?」
「うんうん聞こえる聞こえる。よかった」
「初めましてシロエ・ローリーです。これからよろしくねユー」
「こっちこそよろしくシロエ」
「挨拶も終わったところで行きますか、ユー目指すは東。太陽の上るほうだ!」
「シロエちゃんとつかまっててね」
そういったユーは大きく翼を広げて大きく羽ばたき始めた。