第一章 第十二部 謎の騎士達の正体
彼は騎士どもに引っ張られながら数分歩いた所で、かぶせられていた袋を外され、椅子に座らされた。
そこは部屋に椅子一つ置いてあるだけでシーンとした空気が漂う暗くて狭い部屋だった。座った椅子の前に誰かが一人立っているのを確認できたが、顔までは、はっきりとわからず、ただそこに立っていた。
「あ、あの。なんでこんなところに。」
少してんぱりながら彼は辛うじて確認できた、その「人」に尋ねた。しかしながら返事は一向に帰ってこない。
「す、すいません。」
...やっぱり返事は帰ってこない。そんな「人」はいるのひとりっぼっちの状況が数分続き、気が付けば彼はうとうとと転寝していた
「おい、起きろ。」
何分くらいたっただろうか、彼は朦朧とする意識の中、ゆっくりと目を開けて、状況の確認をした。
先ほど確認できたのは一人だけだったけど。
「5.6.7え、だれですか貴方達」
人数を数えたところでやっと状況が分かったのか、裏声で彼を起こした人たちに返事を返した。
「貴様、よく寝れたな。」
「い、いえ。それよりもあなたたちはいったい誰なんですか」
「そんなことはどうでもよい、貴様にいくつかの質問を問おう」
彼を起こしたのはものすごく偉そうで、汚れ一つ無いきれいな服を着ていた。
「まずは貴様の冒険者プレートを見せてもらおう。」
「冒険者プレートですか?でもあまり人に見せるものではないと、シロエが」
「そんなことなど良い、今自分がおかれている状況をよく考えろ。」
「そう言われましてもね。」
その時、偉そうな人の後ろから、ひょこっと顔を誰かが出して優馬さんと、呼んだ。
「優馬さん、ちょっとすいません」
その子は後ろから人をかき分け前へ出てきた。
「シロエ?」
「あ、はい私です、この人、この町のギルドマスターなので、見せても平気ですよ」
「そうゆうわけだ」
そのマスターらしき人は、少しばかり面倒くさそうにシロエを追い出して、また真面目な顔を、してこちらを見てきた。
「なんで自分のことを隠そうとしたのかわからないけれど。はいこれが僕の冒険者プレートです。」
シロエが見せちゃいけないといっていただけで、そのシロエが見せていいというのなら、平気だろうと彼は冒険者プレートをギルドマスターに渡した。
「こ、これはなんだ。」
冒険者プレートを見たマスターは口を大きく開けて、びっくりするようなくらい面白い顔をしていた。
「ど、どうかしましたか」
少し笑いがこぼれながら、何に驚いているのかと尋ねると。
「これが、どういう意味か分からないか。これは。ありえないぞ。」
「何がですか?」
「まずステータス。Lv1で、このパラメーターは。ずば抜けている。そして称号「選ばれしもの」など今まで見たことがない。何より、職業。努力者。」
まあ平均くらいだろうと勝手に思い込んでいた彼は自分のステータスがそんなに高いはずがないだろうと、マスターが冗談で言っているだろうと、最初はそう思っていた。しかし、マスターにつられて、周りに立つ騎士たちがぞろぞろと冒険者プレートをのぞき込み、驚きを隠しきれていないの見ているうちのそれが真実だと、変わった。
「えっと。そのステータス、そんなに高いんですか?」
「な、なにを一つA+にするのでさえ一生かかるものを。それをすべて。しかもLv1で。多分貴様はこの町で一番強い。それ良きゃ、町全員で戦っても半数以上の死者が出る。」
「さ、さすがにそれは言いすぎじゃ。」
「全然言い過ぎなんかじゃない。何なら今ここで始末したいくらいだ。」
「あ、それだけはやめてください。」
さっきまでの態度と打って変わってこちらに対する警戒がほとんどなくなっていた。
「御神龍がついて回るのも納得だな。すまなかった、何か君のことを履き違えていたようだ」
何かやばいものと間違われていたのか、急に現れた御神龍を連れた彼を警戒するのは当然のように思えたがそれは、この世界にかかわる重大なことだった。
それから数日間は何事もなく淡々と時間がたっていき、町の住民のけがも癒え、元通りの生活を送っていた。
「さて、そろそろ里に向かうとするか」
また彼らも、もとの目的へと向かっていた。