第一章 第十一部 一難去ってまた一難
それから彼とエヒリヤス隊は町の住民の生存確認を行い気が付けば、日は沈みかけていた。
「それで、住人はどれくらい無事だった」
「ほとんどが、悪魔に殺されたか、瓦礫に巻き込まれて死んだか。助かったのは、ほんのわずかです。」
「はあ、もっと早く着けば結果が違ったかもしれないが。とりあえずは生き残れたものを、エヒリヤスに運び安静にしてもらわないとな」
少しよどんだ空気を、きっぱりと緩急付け隊長はともに来てくれた、兵士たちに感謝を伝えていた。
「そして君たちにも感謝を伝えねばな。治療と住民の救出を手伝ってくれ、ありがとう。」
初めて会った時とはまるで違い、膝元まで頭を下げ彼らに感謝を伝えていた。
「君たちも一度エヒリヤスに来てくれればと思う。一緒に宴を楽しもうじゃないか。」
隊長はユーの顔を伺いながら、一緒に来てくれないかと、招待してくれた。
ユーも彼女の態度を少し見て、優馬の好きにすればいいよと言わんばかりに目をつむりながら黙っていた。
「それじゃあ、お供させていただきます。」
そうか、と少し心を落ち着かせた隊長は彼らを馬車に案内をしようとしていた。
しかし、ユーは到底馬車のなかに入れるサイズではなく、シロエだけ馬車で休ませてもらい、彼はユーの背中に乗りながら馬車の後ろを付いていった。
それから日が沈むとキャンプをし、日が昇れば出発を繰り返し、二日が立った。
「ふむ、そろそろ到着するぞ。」
町が見えたのはその声が聞こえてから、間もなくのことだった。それは丘を越えた後ひょこりと顔を出した、その町は、コレクトとは比べ物にならないほど大きく、明かりの灯った、輝かしいものだった。
「着いたらとりあえず休みを取るといい、宴は明日にでも開こう」
間もなく到着とわかると、兵士のみんなは最後のひと頑張りと急いで町に向かって移動をいた。
町に着くなり、隊長はすぐに宿を用意してくれ、ユーの寝床も確保してくれた。
「それでは、明日私からここに来るから、それまでゆっくりしてくれ。」
「分かりました。では、おやすみなさい。」
用意してくれた宿は少しばかり高級で、そんな部屋に少し見入ってしまい、隊長に少しばかり雑な返事をした彼は、隊長がいなくなると、そそくさと靴を脱ぎ、用意されていたベットに飛び乗った。
「ふー、この世界に来て、これほどのベットで眠れるとは。」
久しぶりのふかふかベットに彼は数分と持たずに眠りについてしまった。
次の日の朝、彼は思っていたよりもだいぶ早くに起こされた。それは前日彼に迎えに来ると言って立ち去った彼女ではなく、窓から羽をパタパタとさせて顔をのぞかせる、ユーだった。
「ん、あ、ユーかおはよう」
彼は目を擦りながら窓を開けユーに挨拶と外の明るさを見て、まだ日が昇っていないことを確認した。
「僕に寝床を用意したって言ったから、期待したのに、なにあそこ」
彼女に会ってからユーの機嫌はずっと悪かったせいか吊り上がった目が見慣れてしまった
「どうしたの?、僕もユーの寝る場所を用意したとしか聞いてないから」
「あれが寝る場所だって?馬小屋の間違いじゃなくて?」
久し振りにふかふかのベットで寝て疲れが取れたのか彼は、小一時間ほどユーの愚痴を聞いていた。
そろそろユーの愚痴も終わるだろうと、彼が思った時にはすでにあたりは明るくなってきており、町を歩く人影が少しづつ見えてきた。(こんこん)
「はーい、ちょっと待ってください。ユー多分騎士さんだから、ちょっと行ってくるね。」
ちょうどユーの愚痴に一区切りついたときに、ドアをノックした音に気付いた彼はベットから降りてドアを開けた。
「お待たせしまし。?」
ドアを開けたその先に待っていたのは女の騎士ではなくずっしりと重たい鎧を構えた騎士だった。顔を兜で隠されており、男女の確認は取れなかったものの、かれはすぐにそいつは隊を連れていた女の騎士ではないと察知した。
「ど、どなたですか。」
「失礼。」
そう一言だけ騎士が言うと、後ろからぞろぞろと入ってくる顔を隠し同じような格好をした騎士どもが、彼の両脇に入り、腕をつかんだ。
「ちょっと、これは」
「連れていけ。」
その後頭に袋をかぶせられ、引っ張るようにしてどこかに彼は連れていかれた。