第一章 第十部 エヒリヤス隊、優馬、合流
猛烈な死闘の末エヒリヤス隊は悪魔の殲滅に辛うじて成功していた。隊の半数以上は負傷し、町の住民を探すこともかなり困難な状態だった。
「こんなにけが人を出すことになるとは」
ギルド本部で戦った悪魔の首はほかのものとは違い消えてなくなることはなかった。そのことから、この悪魔がほかの悪魔を召喚もしくは製造を行っていると隊長は考えていた。
転がっている頭を睨みつけながら隊長は次の命令を考えていた。
「しかしながら隊長、まずはこの強力な悪魔を倒したこと、祝福といたしましょ」
「そんな余裕はない、まずは町の住人の生存確認をしなければ。」
「負傷者はどういたしましょうか」
ギルド本部の入り口付近には負傷者を癒す魔法使いが回復の手当てをしていたのが、負傷者の数が多すぎて回復が間に合っていないように見えた。
「ふう、一応応急処置にはなったか。」
ユーの背中に乗っているシロエは静かに眠りについていた。心拍数も安定して足の傷もふさがっていた。
「しかし優馬はすごいね。僕の攻撃を止めたのも優馬が初めてだったし」
「そうなのか?」
「うん、そうだよ。それに完全治癒なんて滅多に見ないスキルだからね」
ギルド本部の中はかなり複雑な構造をしていて、シロエを探すために無我夢中で走ってしまったため、出口に出るまでにかなりの時間がかかってしまった。
「お、あそこが出口かな」
話をしていたのか意外とすぐに感じた出口の先には、なんとも言い難い空気が漂っていた。
「え?」
目の前にはたくさんの負傷者と何やら悩んでいる男女が立っていた。
「だ、だれだ」
話し合っていた二人のうち女性の方がこちらに気付いたのか、振り向き際に聞いてきた。
「あ、始めまして。」
「御、御神龍???」
振り向いた女性はユーを見た瞬間に一歩下がり、驚きを隠さずにはいられなかった。
御神龍と聞いた男性がなにかに気が付いたのか、女性の隣に立ち耳打ち何かをつたえていた。
「うむ、では聞こう」
再び彼の方を振り向いた彼女はまたしても質問を飛ばしてきた。
「貴様らは敵か?味方か?」
「味方か敵かと聞かれたら」
質問をしてきた女性が何か気に入らなかったのか、答えようとする彼に対して不機嫌そうにしたユーが、話に割り込んで入っていった。
「貴様らって、君たちこそ何者なの?」
「いやユー。彼女らにとっては僕らが何者かもわからないだろうし」
「だからって、初対面で貴様、ってのは。ちょっとな」
ぶーすかと嫌味を吐くユーに彼は優しく和ませていた。
「き、貴様。御神龍としゃべれるのか?」
「あ、そっかあなた方には、何を言っているのかわからないのか」
「でなんと?」
「いや、大したことじゃないですよ」
これまた不機嫌そうにユーは彼に文句を言っていた。
「もーそんなこと言ったって、きりがないじゃないか。」
むーと顔をしたユーはもう知らないと後ろを向き黙って聞き耳を立てていた。
これまた彼女は質問に対して答えを出さない彼らに腹を立てていた。
「そんな怖い顔しないでください。僕たちはたぶん貴方達の仲間ですよ」
言葉一つじゃ信用はできないのか続けて質問をしてきた
「では、なぜ御神龍と共にいる」
「あーそれでしたら、森で出会って一緒にいるだけで」
「それだけで御神龍と、ともに行動ができる訳がなかろう」
「そう言われてもな、そうそうユーが道に迷って里まで返す約束をしたから、それで一緒にいるって、言えばわかりますか?」
先ほどは驚きのあまり確認ができなかったのだが、落ち着いて再びユーを見た彼女は背中に乗せている、シロエに気付いたようで、何とかこちらが危険なものではないと、納得してくれた。