魔女のいたずら
「遅れてごめーん」
「連絡あったからいいよー」
そこにはお化けが勢ぞろいしていた。
今日はハロウィン。みんな仮装しているのだ。
「でどうしたの?」
「あのね、うちの母が隣の子供をクローゼットの中に入れてたの」
「それはビックリするけど、それだけでこんなに遅くなったの?」
もっともは反論をされる。
「驚いて尻餅搗いちゃったの。痛かったんだから」
「あはは。その年でビックリしすぎだよ。それでその子はどうしたの?」
「大人しくなったよ」
ちょっと意味深に答えてみた。
「ん? どういうこと?」
「うちの後、隣にも行って、呼び鈴ならしてお辞儀してからトリックオアトリートと言っていたよ」
「何したの? うちの弟にもしてー」
「あんたよりも大きくなったと言っていたじゃない。いやよ」
「けちー」
「しょうちゃんはかわいいんだから。あ、しょうちゃんってのは隣の子供ね」
「うちの弟もかわいいよー」
「このブラコンは。しょうちゃんはうるうるして上目遣いで愛らしいの」
「このショタコンめ」
このまねっこめ。
「それで出てきてから『とととと』とどもって何言いたいのか分からなくて、私が『トリックオアトリート』と伝えると満面の笑みでね」
「それでそれで」
「その後すぐに青褪めるの」
「なんでなんで」
あの落差は面白かった、と情景を反芻する。
「私が先にトリックオアトリートと言ったのとそのときあの子はお菓子を持ってなかったからよ」
「なるほどー」
お菓子を貰いに来ているのに、お菓子を持ってるわけがない。
「それでしょうちゃん、どうしたと思う?」
「何かあったの?」
「自分で『いたずらしてください』って言うのよ、しょうちゃんかわいいわー」
「あはは、かわいいねー」
あの時のしょうちゃんはいけない匂いが漂っていて、ヤバかった、と涎が垂れそうになる。
「ただね、もう精通していたのよー」
「ああ、子供は遊び詳しいものね。うちの弟もこの間〇よ〇よで勝負したら10連鎖とか平気でするのよー」
ああ、この子、天然だったわ、と友人のことをジト目で見る。子供の成長が早いのは仕方がないけど、この子の成長はどこに行ったのか。
「あんた4連鎖しか出来なかったじゃない」
「ふっふっふ、5連鎖出来たもんねー。教えてもらったの」
待っててもらったのね、と状況がありありと浮かぶ。
「それでどんないたずらしたの?」
と友人が訊いてくる。
私はとんがり帽子に触れながら自分の魔女の格好を見せつけて教える。
「それ大人の魔法よ」
なぜだろうか。変態が出来上がった。
はたして、しょうちゃんは無事なのだろうか。
血筋なのか、母親も変態ではなかろうか。




