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異世界転生した勇者よりも最強の執事さん  作者: やすまる
第4章 メルト編 〜新たな出会い〜
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50.■極貧生活

メルトはディサイヤ大陸エクリエル王国領地の中央あたりに位置しており、都市から離れた先に大小の町村がいくつも点在している。


様々な人種もちらほら見られ、エクリエル王国と同様に区画化されている。

居住区・ギルド区・商業区・スラム区があり、その中でも有名な催しはスラム区の近くで定期的に行われる奴隷市であろう。


街の利便性から行商人の行き来も多くそれぞれの区画に入口は存在するが、殆どの行商人は商業区か居住区から入り、そこで露店を開く事が多い。



ゼロ達はどの区画の入口に行けばいいのか情報など無かったため、道なりに進んだ先の居住区から入った。

夕刻が近づいているにも関わらず入口付近は露店の数や人の多さに圧倒される。居住区だけあってか食材を取り扱っている店が多いようだ。


空腹なのか早速アリッサが肉の串焼きを売っている店に目移りを始めた。

そして、案の定ゼロへ顔を向けると「あれ買って」と、いつもの買い物癖が始まったのだ。


「アリッサ様、申し訳ないですが―――絶対に買いません」


以前の旅とは違いアリッサのわがままを叶えるほど手持ちは余裕は無いためゼロは毅然とした態度で断る。

普段通りに買い与えてしまえばすぐに破産してしまうので当然であろう。


「なんでよ!」

「今までと違いお金に余裕がないからです」

「いくらあんの?」

「3シルバ6ブロンと900アインです」

「ゴルドとシルバ以外にお金ってあったのね? でも聞いた感じ多そうに感じるけど?」


「ブロンとアイン知らないってさすが貴族って感じねっ……」

二人のやりとりを聞いて育ちの違いを感じたのか、アナの顔は若干ひきつっていた。


城で何不自由なく暮らし、旅の資金管理もジルベールが行い、アリッサの買い物も旅の資金からゼロへと幾らか渡されていたのでアリッサは資金に関して何も気にする事は何もなかったのだ。


「ルロイ様の授業で習ったと思いますが……まぁ、せっかくの機会なので私からお金についてお伝えします」


歴史の授業中で過去の戦争の話もそうだが、エクリエル王国の内政と国民の生活についても教えている。

だが、ルロイの話は子守歌の効果がありアリッサは授業中いつも寝てしまうので覚えている訳などない。



ちなみにこの世界の通貨を日本円にすると以下となる。

・1ゴルド=五万円

・1シルバ=一万円

・1ブロン=千円

・1アイン=一円


つまり現在のところゼロ達の手持ちは36,900円となる。

また、紙幣は存在せず全て硬貨となり、発行や管理は中立であるオルテンシアの専門機関が現在行っている。


人魔戦争が人族の勝利で終わり通貨も世界共通となったが、今でも大陸や種族の間で通貨の価値は若干の違いはあるが今は割愛しておこう。



ゼロが一通り通貨について説明を行い、アリッサも「わかったわ」と返事をする。

だがそれでも説明を聞いた上で買い物したいと言い出したため、再びゼロが説明を行いアリッサを渋々了承させた。


ゼロはメルトに到着したら先ずは宿へ行き、今後についての相談を行う旨を皆に伝える。

もちろん今までの宿とは違いグレードの低いものとなる。そこで、安価の宿があるであろうギルド街へと足を進めた。


それぞれの区画については特に境界など決められたものは無いが、街の雰囲気や店舗、歩行者によって違いがわかってくる。

例えばギルド街は冒険者で賑わうため街中の歩行者も服装が革製や鉄製になっていき、居住区であれば武装をしている人は少ない。



ギルド街に着くと亜人族もチラホラと見かける事になり、アリッサが興味を示し始めていた。


「あっ! 見て! うさぎの形をした人がいるわ!! あれが亜人族なのね! あ、犬人間もいたわ!!」

「ちょ、ちょっと! アリッサ様、やめてください!! 失礼ですよ!!」


始めて見た亜人族に興奮したのか彼らを指さし大声で叫び始めたのだ。案の定犬の亜人(アルヌル族)に睨まれてしまったのでゼロは興奮するアリッサを抑えつつ、慌てて頭を下げる。


ゼロが深々と頭を下げたのが幸いしたのか、犬の亜人(アルヌル族)はそっぽを向いてどこかへ行ってしまった。


冒険者は粗暴な者が多いのでアリッサにむやみに人に指を指さないよう注意を促したが、それでも宿へ向かう途中にアリッサが出くわす亜人族をジロジロ見ていたのは言うまでもない。


ギルド街の宿屋が集中する場所まで到着したらなるべく安い宿を調べる。ギルドランクに応じて滞在する冒険者も多いので金額が安い宿から高い宿まで様々だ。


今後の資金繰りなどもあるのでほぼ最低ランクの一部屋1ブロンに泊まることに決めた。この金額だと狭い部屋にベッドが置かれ食事も出ないであろう。


「こ、ここの宿にしましょう……」


「……なんだすごくかボロイ宿ね、もっといい部屋がいいんだけどー」


「今後の事を考えると今は節約するべきなので、申し訳ないですが我慢してください」


アリッサにこのような部屋に泊まらせるのはいささか申し訳ない気持ちになるゼロだが、資金が無い以上致し方ない事である。


「あ、あのっ……えっと……」


覚悟を決めて宿へ入ろうとした矢先、今まで黙ってアナが急にゼロを呼び止めた。

帽子を整え、服の端を持ってもじもじしながら、口をキュッと結び何やら言いづらそうにしている。


「どうしましたか?」


「あの……私山賊に捕まった時に全財産取られちゃって手持ちが無いのっ……それで、もし迷惑じゃなかったら私も宿に泊めてもらいたいと思って……必ずお金は返すからっ!」


「あらら~お金がないんだ。 でもこれから旅は長くなるし、このままおんぶにだっこって訳にはいかないんじゃないかな~」


「そ、そうよね……」

うつむくアナの肩にアルスが手をポンと置くと、ニヤニヤしながらアナの体をなめるように見る。


「大丈夫だよアナルン! 君にはその体があるじゃないか!」


「な、なんなのっ? 体って何よっ?」


「へっへっへ、そりゃあ、お嬢さんの体で払ってもらえれば全て万事解決で―――――ぐばぁッ!!!」

両手で胸元を隠したアナにアルスが詰め寄り始めたところで、彼の頬にアリッサの鉄拳が炸裂した。


その後、アルスは頬を摩りながら「ほんの冗談なんです」と、地べたを這いずりながら言っていたが、倒れている彼をアリッサは何度も踏みつけてアルスが動かなくなったところで一息つく。


「ふぅー……アルスは気にしなくていいわ! お金が無いならいいわよ、一緒に泊まりましょう。ゼロもそれでいいわよね?」


「……ですが、やはり手持ちを考えると―ー」

「私がいいって言ってるんだからいいでしょ!!」


「……かしこまりました」


「あの、アリッサ……ありがとうっ……!」

満足げな表情のアリッサに頭を下げてアナは感謝した。


アナも含めて四人で泊まることになったのだが部屋を分けるほど余裕はない。なので四人一部屋で泊まる事となる。


食事は出ないのでゼロがメルト近辺で動物を狩り、焼いたものを部屋へと運んだ。ゼロが狩りをしている間にアナが水桶に湯水を魔法で満たし、女子の二人は布で体を拭きながら待機した。もちろんアルスを部屋から追い出してだ。



そして、落ち着いたところで今後について会議を行う。

メルトへ到着したはいいが圧倒的に資金が足りず、このままでは資金が尽きて食うも寝るも困ってしまう――――――どうにかならないか考えていたところ意外にもアナから提案があった。


「メルトには大きなギルドハウスがあるからいっそのことギルドでお金を稼いでみたらっ?」


「ギルド……! そこに行きましょうゼロ!!」

ギルドと聞いて興奮するのはアリッサだ。目を輝かせて前のめりでゼロへと話しかけてくる。


「メルトでの仕事はほとんどギルドが介入してるし、依頼も多いって聞くわっ。単発で何かしらの仕事をするよりも旅をするならギルドの方がいいと思うわよっ」


アナの言葉でゼロは再び考えた。

確かにこのままでは資金が尽きてしまい仕事も探さなければならない。

だが、ギルドには粗暴なイメージがあるため出来るならアリッサを連れて行きたくはない。


「……わかりました、一度ギルドへ話を聞きに行きましょう。その上で検討したいと思います」


ギルドへ行けると聞いてアリッサはベッドの上を跳ねて喜び、アルスもギルドに憧れていたのか一緒に飛び跳ねていた。


ギルドでの話を聞いた上で判断する―――と伝えたが、ギルド登録する事は彼の中でほぼ決まっていた。この先の旅を続けていくには都合よく稼げる仕事が必要である。


ただ、ギルド登録については()()()()()()()()()()()()()()()行おうと画策するゼロであった。




翌朝、一行はギルドへと向かうため宿を出る。

すると、三人と違う方向へアナは移動したためアリッサが呼び止めた。


「ちょっとアナ、こっちがギルドがある場所じゃないの?」


「う、うん。そうなんだけど……お金を返すって言った以上、自分一人で稼がないといけないと思ってっ。これ以上、迷惑もかけてられないしねっ!」


「そうなんだ……わかったわ!」


宿の前で少し寂しそうなアナと別れた。アリッサもそれ以上引き止めはせず神妙な面持ちで彼女の背中を見守ったのだ。



ギルドハウスへと歩く道中でアリッサの目を奪うものが現れた。


それは網で作られた小屋にたくさんのレターバードが止まり木におり、その小屋へと向かってくるレターバードの手紙を男が受け取ると、止まり木にいるレターバードに括り付け、再び解き放っているのだった。


「ねぇ、あれって確かレターバードよね? なんであんなにいっぱいいるの?」


「あーあれはポストケージですね。外から来たレターバードの手紙を受け取って、街の区画内へ別のレターバードで手紙を届けます。これで離れた場所でも手紙でやりとりが可能になります」


「ふーん……ねぇ、それだったらお父様へ手紙を出す事だって出来ないかしら? そうすれば助けてくれるかもしれないわよ」


「……お気持ちはわかるのですが……それは出来ないです」


「なんでよ?」


「国で管理している場所などは特別なレターバードが使用されます。特別と言ってもレターバードの本質は変わりませんが、一般的に足に括り付けている筒で識別されるので仮にレターバードを使ったとしても中身を確認されずに返されてしまいます」


「そうなのね……あっ! じゃあ、披露宴に来てた王族達を頼るのはどう? その人達からなら手紙は届くでしょ?」


「確かにそれであればレターバードが届く可能性もありますが……それも厳しいかと思います」


「だから、なんでよ?」


「まず王族の方に会う事が難しいです。仮にお住まいへ伺ったとしても、こちらの身分を証明する物がありません。行ったとしても門前払いされるので時間の無駄でしょう」


「ぐぬぬ……どうする事も出来ないのね」


「アリッサ様をご存知で会える方なら可能性もあるかも知れませんが……期待はしない方がいいかもしれません」


王国内に暮らしている庶民でもアリッサの存在は知っているが、民衆の前でも意図的に姿を現さなかった為、その姿を認知している者は少ない。


エクリエル王国周辺に暮らす貴族や王族であれば話は別だが王国から離れた今、彼女が王女だと認知する者は限りなくいないに等しいであろう。



このまま旅を進める事は困難であると理解していたゼロは旅の援助出るのであれば、喉から手が出るほど欲しいと内心思いつつギルドへと向かうのだった。

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