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40.■果たせない約束

先ず最初に動いたのはポールだ。

バルドス目掛け、踏込みで一気に肉薄する。


―――ブンッ!!

だか、これも躱されてしまう。斬ったのはバルドスの残像だ。


「いいじゃねぇか! さっきより断然早ぇ!!」


ポールの凄まじい攻撃が続く。

バルドスが攻撃を避け距離を空けようとしても、すぐさま肉薄し反撃の隙を与えない。


その間にジルベールは脇腹を抑えつつアリッサの元へ移動を始める。

「はぁ、はぁ、アリッサ様大丈夫ですか!」


「わ、私は大丈夫よ! でも、ポールとゼロが!  そ、それにみんな死んじゃった……」


「大丈夫じゃ! アリッサ様は必ずお助け致します!! ―――ぬっ! ゼロ、危険じゃから離れておれ!」


「…………」


ゼロはジルベールの呼びかけにも答えず、ただ二人の戦いを眺めている。

そして、ゼロの表情は恐怖で顔が引き攣っている訳でもなく、ただ口に手を当て、呆然と戦いを見つめていた。


「あの、バカタレが!」


このままでは戦いに巻き込まれてしまうと判断したジルベールはゼロの襟を掴むと強引に引っ張り、戦いから遠ざけた。


「ワシの声が聞こえとらんのか! 気をしっかり持て!!」


「も、申し訳ございません……私は大丈夫です」


護衛達が目の前で殺され、命の危機に瀕しているため冷静な判断が出来ていないのだとジルベールは考えた。

そして、ポールに助太刀を行って足手まといになるよりか、どのようにこの状況を打破出来るか策を巡らす。


――――三人はポールの戦いを見守るしかないのだ。



「ははっ! すげえ、攻撃だな! 俺も防御で精一杯だぜ!」

「いつまでも減らず口が叩けると思うなぁぁっ!!!」


バルドスの防戦一方に見え、圧倒的にポールが押しているように思えるが二人の表情は対照的だ。

バルドスは防御に徹しているにも関わらず、微笑むほど余裕があるのだ。


「ハァッ!!!!」

「ハハ! いいぞ、すげー力だ!」


ポールの攻撃をハンマーで弾く、だがポールは反撃の隙を一切与えず防御で弾かれたとしても、すぐさま斬りかかる。


「いいぞ!! もっと来い!!」

悪意に満ちた笑顔から純粋に戦いを楽しんでいるような様子だ。


そして、二人は鍔迫り合いとなる。

強烈なパワーがぶつかり合っているのか、二人が立っている足元の地面はガラガラと音を立て崩れていく。


バルドスが攻撃の重さに耐えきれず横に受け流そうとしたが、ポールはその隙を見逃さず斬りかかる。

慌ててバルドスは体の側面をハンマーで防いだ。


「ハァッ!!!!」

「なに!?」


ポールは力任せに振り切り、バルドスを壁へ吹き飛ばした。


―――――ズドーンッ!!!!!

あまりの衝撃で轟音と共に壁は割れ、辺りに粉塵が舞う。


「はぁはぁ……倒せた……のか?」



――――だが、立ち込める粉塵の中からヌッとバルドスは出てきた。

「……少し遊び過ぎちまったみたいだな」


口から血も出ており、少なからずダメージは与えているようだ。


「そろそろ終わらせるか」

バルドスは口元の血を拭いつつ、そう呟くと――――


―――ダンッ!!

っと思い切り地面を踏み込み、一気にポールへ肉薄する。

凄まじい速さでハンマーを振りかざした。


「なっ!! 早い!!」

防御が間に合わないと判断したポールはすぐさまその場からジャンプし回避する。

そして、ポールが立っていた場所には勢いよく振り下ろされたハンマーでひび割れた地面が残っていた。


「さて、いつまでもつかな? ――――いくぜ!」


バルドスの言葉を皮切りに、いつの間にか二人の立場は逆転する。

攻撃を避け続けるポールは防戦一方になっていた。


そして、次第にポールの動きが鈍くなっていく――――オーラを使い過ぎたため身体に負担がかかり限界が近づいているのだ。


そして―――


「オラッ!!!」

「くっ!!!」


―――ついにポールは躱すことが出来ず、攻撃を受けてしまった。

もちろん剣で防御を行ったのだが、ハンマーは防御を無視するかのようにポールを吹き飛ばし壁に衝突させた。


「……死んだか?」


「――――はぁ……はぁ……」

粉塵が舞い、壁はぽろぽろと崩れるているがそれでもポールは立っていた。

だが、その姿は剣で身体を支え息は荒く、口からは血を流し誰が見ても満身創痍に思えるほどだ。


「うおぉぉぉぉおおぉぉ!!!」

ポールは雄叫びと共に再び斬りかかるが――――


「遅ぇよ!!」

「かはっ!!」

―――簡単に躱され、腹部を殴られると同時に吐血し、ついにその場で倒れてしまった。



「ね、ねぇ……うそでしょ、ポ、ポールもやられたわよ。

ジルベール! このままだったらポールが死んじゃう! ねぇ、なんとかしてよ!!」


「…………」

ジルベールはギリギリと歯を食いしばり、戦況を見つめ続ける。


「さて、じゃ終いとするか」

バルドスはハンマーを振り上げ今にもポールを叩き潰そうとするが―――



「あっ!! こいつは潰しちゃいけねぇんだ! あぶねぇ、あぶねぇ」

―――ハンマーを振り下ろすのをやめ、慌てて剣に持ち替えた。


「じゃ、あばよ」


「ポォールゥゥゥゥ!!!!!」

ポールの心臓めがけて剣が突き立てられるその刹那、ジルベールが一気に駆け寄りポールを狙う剣を弾いた。


「今度はジジイかよ! まぁいい、()()()()()()()()()()()()()()()()()、二人まとめて殺してやるよ」


「アリッサ様すみません! これでもワシの孫なんじゃ、やすやすと殺されるのを見る事が出来んかった……引き留めておくので、どうぞお逃げください!」


「そ、そんな! 逃げるなんて無理よ! あ、足が動かないの」

アリッサは恐怖で逃げ出すことが難しそうだ。


「っち! ジジイ、俺が姫を今は殺さねぇと言ったが逃げるようなら真っ先に殺しにかかるぜ! なぁ、逃げたらわかってるよな? 執事(ゼロ)!!」


「くっ! ……となれば、ワシがお主を倒すしか道は残っとらんと言うことか」


「倒すんじゃねぇよ、これからお前が死ぬんだよ!」


「いいじゃろう、ワシも本気をだすかのう――――ハアッ!!!」

ポールと同様にジルベールも赤いオーラを纏うと、その様子を見ていたバルドスはつまらなそうな顔をする。


「おいジジイ、さっきのガキと同じじゃねぇか。見てなかったか? それじゃ俺は倒せねぇぞ」


「やってみなけりゃ、わからんじゃろう。――――行くぞ!!」


ジルベールの槍がバルドスに放たれた。

バルドスは躱すがすぐさま追撃され攻撃を避ける事が難しいため、剣を使って槍を防ぐようにしていた。


「ジジイ! このままお前がばてるのを待てば終わりだ!」

「そりゃ、どうかのぅ」


そして、ジルベールの攻撃は続き何度か打ち合った時にバルドスは異変に気付く。

妙に腕が重くなり、ジルベールに反撃をしようとしても振り上げる事が次第に難しくなる。


「う、腕が重い!」

「かっかっか! そろそろかのう」


最後に思い切り槍をバルドスが持っていた剣にぶつけると、バルドスは腕を抑えつつとうとう剣さえ振ることが出来なくなってしまった。


「てめぇ、まさか気付かねぇうちに腕重荷(タルスロック)を打ち込みやがったな!!」


「かっかっか! よく気付いたのぅ、じゃが数発受けてまだ剣を握っておるとはな―――オーラでワシの身体がもたんから一気に決めるぞ」

ジルベールは素早く深呼吸すると、持てる力全てをバルドスにぶつける―――――


「バイティング・スラッシュ!!!!」

「な、なに!!!」


槍から放たれたオーラがバルドスへぶつかると凄まじい勢いで壁へと打ち付けられた。

ポールによって打ち付けられた時よりも威力が高かったのだろう、辺りには粉塵が舞い地面や周りの壁は衝撃でひどく崩れていた。


「はぁ、はぁ……頼む、倒れててくれ―――」



――――だが、無情にもジルベールの思いは届かなかった。

「あー……いてぇなぁ!!!」


「そ、そんな……嘘じゃろ、あの技を受けて立っておるなんて……」


「ふぅ……危なかった! 久しぶりに半分以上の力を使ったぜ。まぁジジイにしてはよくやった方だが、さっきのが切り札だったら残念だったな」


「じ、じいちゃん!!!」

「ポール来るな!!!」

ジルベールに迫るバルドスを止めるため、ふらふらの身体に鞭を打ちポールは斬りかかった。


「ちっ! 邪魔すんなよガキ!!」

ポールの剣をいとも簡単に弾くと、ガラ空きになった彼の心臓めがけて剣を突き立てようとした――――


―――ズシュッ!!!

「ぐふっ!!!」

「じ、じいちゃん……なんで……」

―――だがジルベールがポールを庇い、背中から胸を貫かれてしまった。


その場に倒れたジルベールは駆け寄るポールの目をしっかりと見ると力強く彼の手を握った。


「ば、バカたれ、、、そんな、顔するで、、ない。騎士たるもの、、常に―――」

「じいちゃん!! もう喋らなくていいよ!!」


「はぁ、はぁ、すまない……ワシはここ、までじゃ。今までキツくあたって、悪かったのぅ……ポール、いいか? これからお主がア、アリッサ様を、お守り、、するんじゃ。皆の者……守れなくてすまん。そして、、ポールお前だけでも、、、生きよ―――」

ポールの手を握りしめていたジルベールの手が力なく離れた。


「じいちゃん!!!! うわあぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

ポールはジルベールを抱き抱え泣き叫ぶ。それは今にも張り裂けそうな声だ。



「感動のお別れは終わったか? ――――あ? なんだその目は?」


ポールは凄まじい形相で睨みつけており気に障ったバルドスはポールの胸倉を掴み持ち上げる。

ポールは抵抗し何度も蹴りを繰り出すがバルドスはびくともしない。


胸倉を掴まれていたため、いつも肌身離さず首元に下げていたペンダントが外れて地面に落ちてしまった。


「ん? なんだ?」

「あぁ、ペンダントがっ! ―――おい、離せ!!」

「なぁ? そんなにこのペンダントは大事なのか?」

「…………っ」

「おい、どうなんだ!! 姫様が死んでもいいのか!!」

「そ、そうだ! 今すぐこの手を離せ!! ペンダントに触れるな!」

「へぇーそんなに大事なもんかよ」


バルドスはポールを掴んだまま地面に落ちたペンダントを見つめた。


ペンダントは落ちた衝撃で蓋が開いてしまい、中からアリッサに買ってもらった金の指輪や萎れたパープルモネの花が飛び出していた。


そして、バルドスは悪意に満ちた笑みをヘラヘラ見せると――――

「ふんッ!!」


ペンダントもろとも全てを踏みつぶし、ポールを地面へと叩きつけた。

そして、地面に横たわるポールの頭を鷲掴みにするとバルドスはゆっくり口を開く。


「なぁ、お前はペンダントもジジイも守れなかったし他の仲間も守ることは出来なかった。

お前らが死ねば姫様も死ぬ、なぁ、なんでかわかるか? 俺が強かったんじゃねぇ、お前が弱かったんだよ。この世界では力が全てだ、強いものが生き、弱いものが死ぬ――――そう言やぁお前、俺の名前知りたがってたよな? もう一度言うぜ、俺は迅雷(ヴォルテッカ)……お前を殺す男の名前だ」


バルドスは乱暴にポールの頭を地面に叩きつけ、高々と剣を掲げ――――



     (ごめん、カリン――――君のもとに帰るって約束守れそうにないや……)



―――ドスッ!!!

と、鈍い音と共にポールの胸へ剣を突き立てると、ポールの目から生気は消え、一筋の涙がこぼれた。


「なんで……こんなことに……」

アリッサは目の前で起きた光景に頭が追いつかず、膝から崩れ落ちた。


「いやぁぁぁあぁぁぁぁあぁぁぁぁ!!!!!!」

静寂な夜を裂くかのようにアリッサの叫び声が辺りに響く――――




―――――ジルベール・バルテルミーとポール・バルテルミーは無残にも死んでしまった。

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