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39.■港での死闘

「バリョッサス兵、覚悟!!」


「く、来るな!! だれか援助を頼む!!」

ポールが向かって来るやいなや周りのバリョッサス兵に助けを求め、それに呼応した三人とポールが対峙する。


「スティンガートゥッシュ!!」

「コントラストアタック!!」

「アッパーブレイド!!」


バリョッサス兵三人組による(スキル)の猛攻にポールはなかなか攻めに転じられずにいた。

魔法陣でマナを乱されたことにより固有(ユニーク)スキルが使えないため、技の発動を抑えているのだ。


「ポール以外の奴を狙って弓を打て! 援護射撃じゃ!」

ジルベールの指示が飛び、護衛達が狙いを定める。


「今だ!! やれ、ポール!!」

ジミーが一人のバリョッサス兵を捉え矢を放つが気配に気づいた兵は寸でで躱す。

――――当たりはしなくとも隙は生まれた。


ポールはその隙は絶対に見逃さない。

「よし、もらった!!」

残りの二人を退け、隙を見せたバリョッサス兵の首元めがけて剣を振り下ろす――――


「――――ッ!!!」


―――のだが、ポールは咄嗟に振り下ろした剣を横にならし慌てて受け流しの構えをとった。

攻撃する直前、自分の視野に迫りくる何かが入って来たのだ。


「うわっ!!!!!」

その何かに直撃し、ポールは吹き飛ばされてしまった。


「てめぇ……俺のこと忘れてんじゃねぇよ……」

ポールに攻撃を当てたのは大柄の男の巨大なハンマーだ。


ポールは攻撃があたる瞬間に受け流しの構えからガードに徹するように刃先を変え、体の重心を後ろへと持って行った。

それによって、ほとんどダメージを受ける事はなく軽やかに着地し、すぐに体勢を整える事が出来た。


「た、助けて頂き、ありがとうございます!」

命を救われたバリョッサス兵は大柄の男にお礼を言ったが―――


「てめぇら三人掛なのに倒せねぇじゃねぇか!! ()()()()()()()()()()()から魔法陣を使って圧勝しようとしたのに、弱すぎて全く使えねぇよ!!! もういい、お前らは手を出すな、俺がやる」


ポールと男は対峙する。

弓を避けもせずに弾いたことやポールを吹き飛ばした事もあり、念のためジルベールは警鐘を鳴らす。


「ポール気を付けるのじゃぞ、奴は他の者とは違う。……助けが必要か?」


「いや、大丈夫だよじいちゃん。アリッサ様の守りを固めておいて」


「……そうか、無理はするなよ」


ポールは一呼吸置くと名乗りを上げる。

「私は王女護衛団の"ポール・バルテルミー"だ! あなたは兵を率いる上官とお見受けするがこのような狼藉は国家問題となる! 審問会への申告が必要となるため、名を名乗れ!」


「ごちゃごちゃうるせぇなぁ……」


「貴様! 兵を引き連れているにも関わらず名乗らないのか! 騎士としてもあるまじき行為だ!」


「ちっ、うるせぇな……これだから騎士って奴は嫌いなんだ。

俺はバルドス―――あっ……まぁいいか、早いとこぶっ殺させねぇと話が進まねぇしな。それによ、俺は使えねぇバリョッサス兵(こいつら)の上官でもねぇし、魔法陣までしてこの醜態にイライラしてんだよ! てめぇと話をしてる暇もないくらいによぉ!!」


バルドスはハンマーを構えると再び短髪が逆立った。

ポールもすぐさま剣を構え、バルドスの威圧からなのか額から嫌な汗が滲んでくる。


「おらいくぞ、クソガキ!!」

バルドスから仕掛けた、大きな体格とは裏腹にとてつもない速さでポールへと肉薄する。


「は、早い!!」

ポール目掛けてハンマーが振り下ろされるが受け流しつつ避ける―――


が、あまりの攻撃の重さに手が痺れ武器を放しそうになるが、なんとか強く握りしめ受け流しからカウンターを狙い、バルドスに斬りかかった。


「よし! もらった!!」

通常であれば受け流しされた者は体勢を崩し、防御が間に合わず避けるのが精一杯となる。

ポールの場合この隙を狙う事により、余程手練れの者でない限り大体は勝負がつく。


ましてや両手で振り下ろされたハンマーは重心も完全に前のめりになっていたため、ポールは確実に攻撃が当たると確信があった。

そして、ポールの攻撃の直後にバルドスから鮮血が舞うはず、だった―――


「油断すんなよ!!!」

ポールが剣を振り下ろした時にはすでにバルドスの姿は無く、ガラ空きの身体に横から思いっきりハンマーを叩きつけられた。

――――そう、バルドスのスピードがあまりにも早すぎるのだ。


―――ズガンッ!!!!

「ぐはっ!!!」


倉庫まで吹き飛ばされ轟音と共に粉塵が舞い、ジルベールも慌てて声を掛ける。

「ポール無事か!! しっかりせい!!」


「はぁはぁ……だ、大丈夫だよ、、じいちゃん」


倉庫から出てきたポールの鎧はひしゃげていた。

口からは血を流し、たった一撃で防具すら破壊したのだ。


「こ、こりゃいかん! すぐに回復を―――ダメじゃ、マナが使えんかった!」


ボロボロになったポールの姿を見てジルベールも冷静さを欠く、ここまで酷くやられた身内をみて動揺したのであろう。


「よくも、ポールを!!!!」

「覚悟しろ!」

ポールがやられた怒りでジミーとモーブがバルドスに立ち向かう。


「バカたれ!! やめんか!!!」

ジルベールの静止が間に合わず、二人はバルドスに攻撃を繰り出した。


「お前らには用はねぇよ、死ね!」


バルドスはやすやす二人の攻撃を避けるとモーブの顔面に鋭い拳が襲い掛かる。


モーブも盾でガードを行ったが盾は拳で弾かれてしまいそのまま顔面に一発入り失神させられる。

ジミーは体勢が整う前にバルドスによって足を思いっきり蹴られ、足があらぬ方向に曲がった。


「ぎゃぁぁあぁあぁぁああ!!!! 足が! 俺の足が!!」


失神したモーブはそのまま地面に倒れ、ジミーは激痛で足を抑えて倒れた。

そしてバルドスはハンマーを天高く振り上げると―――


「た、助け―――」

ジミーは許しを乞うたが、彼の瞳に映るハンマーは今にも振り下ろされようとしている。


「ピーピーうるせぇな!!!」

 

グシュッ!!

グシャッ!!


―――倒れた二人の頭をハンマーで潰した。そう、たった一瞬で二人が殺されたのだ。


「ねぇ……噓でしょ……」

―――アリッサも言葉を失う。


「ぐっ!! ジミーにモーブ、無事に国へ帰すことが出来なくてすまん……」

ジルベールは怒りと悲しみの感情が入り混じっていた。


「そ、そうじゃアルス殿! 回復は使えるか? ポールに回復を――――アルス殿?」


ジルベールが声を掛けるがいつの間にかアルスの姿は見えなくなっていた。

だが、アルスを探す余裕などは無くバルドスは迫ってくる。


「た、隊長、どうしますか?」

ネガティーが指示を仰ぐ、表情は一切の余裕がない。


「……ワシが奴の足止めをする。お主らはアリッサ様、ポール、ゼロを連れて逃げろ」


「……はっ! ――――アリッサ様、動けますか?」


「む、無理よ! あ、足がすくんじゃって!」


「では、失礼。―――ゼロも動けるか?」

ネガティーはアリッサを背中に担ぐとゼロにも伺った。


「…………」


「どうしたお前も怯えているのか?」

ネガティーの問いかけにもゼロは答えず、強張った顔のまま黙っていた。


「待っている時間がないから一緒に行くぞ! ポールも付いて来い!」

ネガティーが走り、その回りにクラーイとウッスイも続きジルベールも時間を稼ぐためバルドスへ攻撃を繰り出す。


「お前の相手はワシじゃ!!!」

「ジジイは引っ込んでろよぉ!!!」


―――ズドンッ!!!!

「ぐふっ!!!」


バルドスはジルベールの槍を簡単に躱し、ポール同様にハンマーで吹き飛ばすと、すぐさま逃亡を図ろうとしている護衛に肉薄した。


「くそう! 我らが守るので早く逃げよ!!」

ウッスイとクラーイが逃げるネガティーの補助をしようとしたが――――


「邪魔だ雑魚ども!!!」


「がはっ!」

「ぐっ!!」


―――二人はいとも簡単に吹き飛ばされ、そしてネガティーの頭上にはハンマーが振り下ろされようとしていた。


このままでは背負っているアリッサ共々潰されると判断したネガティーは――――


「アリッサ様、失礼!!!」

アリッサを強引に横へ振り落とし、防御するためすぐさま剣を抜こうとする。


「遅ぇよ!!」


―――グシュ!!!

無情にも防御が間に合わず、ネガティーは頭から潰されてしまった。


「あぶね、危うく姫様も殺すとこだった」


「あぁ…嫌っ!!」

アリッサは怯えながら四つん這いで逃げる。


「「アリッサ様!!!」」

飛ばされたウッスイとクラーイがすぐさま戻り、アリッサの壁になろうとしたが―――


「邪魔だ!! さっさと死ね!!」


ボロボロになった二人の攻撃は簡単に躱され、ウッスイは腹部に一発くらうとその衝撃で臓物を撒き散らし、クラーイは頭を潰されてしまった。


「い、嫌っ!!! こ、来ないで!!!」


「姫様はまだ殺さねぇから安心しな、まぁどの道死ぬことは変わらないんだけどよ! ははは! ―――さて、残りを片付けるか」


バルドスは笑い終えるとその場で立ち尽くしているゼロを見据えゆっくりと歩き始めた。


「待て!!!!」


大声を上げてバルドスを止める者がいた。

――――――ポール・バルテルミーである。


「俺はそこの執事に用があんだよ、あとで殺してやるから大人しくしとけ」


「黙れ!!! よくも、、、、よくもみんなを、、、、」

凄まじい剣幕でバルドスを睨みつけ身体が怒りで震える。


「そんなボロボロの体で何が出来んだよ? ガキが」


「ふぅー……ふぅー……」


ポールの息遣いは荒くなり、目は血走る――――その表情は皆が知っているであろう彼の顔では無い、それはもはや騎士ではなく怒りと憎悪に満ちた者の顔だ。


そしてポールは自らの防具であるひしゃげた鎧やグリーブ、盾などを脱ぎ捨て持つものは剣だけとなった。


そして彼の身体を赤い靄が包み込む――――オーラだ。


本来オーラは身体の表面を覆い、余程腕の立つもの者でなければ目視できるほどのオーラを纏うことは出来ない。

だが、ポールのオーラは禍々しく身体全体を包み込むようにはっきりと発現していた。



「ほう、すげぇオーラだな。防具を捨てたって事は守りも捨てたか?」


「うるさい!!! これでお前の速さに追いつける!」


「いいねぇ!! 盛り上がって来たぜ!!!」

興奮するバルドスの髪の毛が再び逆立った。


「はぁ、はぁ―――必ずお前を倒す!!!」




怒りに身を任せ、守りを一切捨てたポール。

護衛を瞬殺し凄まじいパワーとスピードを誇るバルドスの戦いが切って落とされた。

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