表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
42/57

37.■お姫様の観光

朝方、酒場の前でジルベールとアルスは合流した。

若い女の子に終始チヤホヤされたのか満面の笑みであるジルベールに対し、絶望感を(ただよ)わせる顔面蒼白のアルス。


ジルベールが理由を伺ったとしても、「楽しめた、全然大丈夫だよ」と、言葉とは裏腹に表情が物語っているので明らかに嘘を付いているのは明白なのだが、何故か理由については明言をしなかった。


アルスはテクニックに自信を持っていたが、その自信をへし折るほど相手が上手かったのではないか? などジルベールは思慮(しりょ)を巡らせる。

何にせよ明らかに()()()()()()()()()()()()()()()()ように思えたので変に詮索をせず、二人で宿へ戻る事にした。


宿に着くとアルスは朝食も取らずに部屋にこもったまま出てこなくなってしまった。


部屋の中からは「ハーレムを期待していたのに」「こんなはずではなかった」などのひとり言がブツブツ聞こえ、皆を心配させたがポールがドアをノックすると返事は返って来たのでとりあえずは大丈夫そうだ。


ジルベールから今はそっとしておくように周知を皆にしたので護衛達は心配しつつも、とりあえずジルベールの指示に従うのだった。



朝食後はそれぞれ行動する事になる。

ジルベールと他の護衛はピロカット大陸の情報を手に入れる為、オルテンシアの街を巡る。事前に地図など手に(はい)ればなかなかの成果になるであろう。


ゼロは市場(いちば)を回り、渡航や大陸に出た時の食料やここまでの旅路で壊れてしまった皿などの備品などを補填する。

アリッサがその付き添いとして付いてくる事になり、護衛はポールが担当する事になった。



市場の露店は取り扱っている品が被っている店もある為、先ずは一通り店を巡り価格帯を確認する。

そして、なるべくお金の無駄にならないようにゼロが目利きをして品物や食料を選ぶのだ。ゼロが食器や食料の金額を聞き用紙にメモなどをしていると隣のアリッサが―――


「ねぇゼロ、喉が渇いたから何か飲み物買ってよ」


「………アリッサ様、先ほどカットフルーツを召し上がってませんでしたか?」


「それとこれとは別よ! それにゼロったらさっきから品物見てばっかりで買わないじゃない」


「先ずは市場の価格を調べる必要がありますのですぐには購入しません。今後どのようなことが起こるかわからないのでなるべく節約して適切に物を選ばなければ―――」


「そんなこと言われてもわからないわよ! ジルベールからお金もらってるんだから、私が欲しいと思った物は買ってよね」


「うぐ! たしかに言われていますが……」

事前にジルベールから必要以上に資金を渡されており、なるべくアリッサの要望に応えるよう言付けられたので、おそらくこうなる事を見越していたのかもしれない。


「じゃ、問題無いわね」


「……かしこまりました」

ゼロはしぶしぶ懐から飲み物代を払うのであった。


その後、()()()()()()()()は続く。

フルーツや洋服、靴、アクセサリー、エクリエル王国には馴染のない猫のぬいぐるみも購入した。

徐々にゼロとポールの両手が大量の買い物で塞がってしまい、結局アリッサの買い物でその日を終えるのだった。



次の日、アルスはまだ部屋から出てこない。

部屋の中からは「おかしい、一人だとイケるのになぜ本番だとダメなんだ!」と聞こえてきたがポール以外は特に気にしなくなっていた。



昨日の段階で市場の相場はある程度把握でき、出航にはまだ時間の余裕があるので食料や備品などは明日以降の購入でも問題がない。

また、アリッサが市場以外も回りたいと言い出したので、今日はオルテンシアの観光地を巡る事になった。


観光の目玉と言えばやはりギルド本部であろう。

外観は神殿をモチーフにしており立派な柱がいくつも並ぶ、入口の前には噴水も設けられているが綺麗な外観とは裏腹に、一階のフロアはギルドに所属する者でごった返している。


フロア内には朝から夕方まで開いている酒場や、受付を行うカウンターも多く設置されている。

なので、スムーズに手続きが行えるが利用する者の多くは朝から酒を飲みにくるか、もしくは様々な情報を買う者が多い。


そんなギルド本部の噴水前でアリッサは建物の外観を見上げていた。


「ふーん、もっと汚いと思ってたけど意外と大きくて綺麗なのね。ねぇ、私も中に入ってみたいわ」


「前々から言ってますがダメです。粗暴な連中が多いので我慢してください」


「もう、わかったわよ!」


「ぎ、ギルド本部、、は別名、、”ノバセニック”と呼ばれ、、ています。

一階は誰でも入れますが、二階、、以上に、、上がるのは、上級ランク、のゴールド級じゃないと、、ダメみたいです」


アリッサの隣にいたポールが急に話始めた。


「へぇー意外と詳しいじゃない。二階以上に上がれたら何があるのよ」


「う、噂では無料で宿泊が、出来るとか聞いてます。なかなか、快適と、噂です、、あとはギルドマスターに会える、とか、、ですかね」


「ギルドマスターってなに?」


「ぎ、ギルドマスターは、ギルドの創立者から、引き継がれている、、称号です。要は、ギルドで、一番偉い人、、、です」


「ポールさん詳しいですね」


「は、はい。騎士になって遠征をした時、様々なギルドからいろいろ、話を聞いたり、したのでギルドに、少し憧れが、ありました、、」


騎士として王国に忠誠を誓い自らの人生を捧げる生き方しか知らなかったポールは、自らの力で名を馳せギルドとして自由に人生を謳歌する生き方を知ったことにより、彼の中に自由な人生の選択という憧れが芽生えたのかもしれない。


その後は3人で昼食を食べ、大きな篝火(かがりび)が焚かれる灯台を港まで見に行ったり、バリョッサス方面では教会に女神イスリルの像が(まつ)られているので見学などを行っているうちに時間が過ぎていった。



次の日の朝、一人でこもっていた部屋からやっとアルスが出てきた。

どうやらポールに「興奮作用の効果がある薬草はないか?」と、すごい剣幕で詰め寄ったらしい。


その日は市場に出て食器等の備品を購入する予定になっていたので、ついでに道具屋に興奮作用がある薬草を購入するためアルスも同行することになった。


市場に着くと早速アルスが道具屋に行くよう騒ぎ始めた。

「ポールくん早く道具屋へ案内したまえ! 薬草を買わないと大変なんだよ!」


「だから、何でアンタが仕切るのよ!」


アリッサはアルスの足をギュッと思いっきり踏みつけた。

旅をしても彼の扱いは変わってないようだ。


「痛たたた、くそう! このプレイなら興奮するのになぜ反応しないんだ!!」 

アルスが足を痛がるように前屈みになると、そのまま地べたに寝転がる。

 

「……お姫様、どうぞ私めを踏んでく――――」

「なんで寝転がるのよ、本当に気持ち悪いわね!!!!!」


「イギィィ!!!」

アリッサが思いっきり蹴り飛ばすとアルスは奇声を上げた。


それでも彼は何度でも立ち上がりアリッサに(すが)りついてくるが、来るたびに足で振り払う。


そして、彼のあまりのしつこさにアリッサはとうとう根負けしてしまった。

「もう、行きたい気持ちはわかったわよ! じゃ先に道具屋に向かいましょ」


違う目的でアリッサに近づいていたが、結果として道具屋に向かう事が出来たアルスであった。



道具屋に着くとポールに興奮作用がある薬草を一通り教えてもらったものを手あたり次第買い漁り、道具屋を出る頃には購入した薬草を口に放り込み、食べ始めていた。


「ぐぇぇぇぇ!!! まっず!!! くそ苦いわこれ!!」

  

「ほ、本来であれば、すり潰して、乾燥したり、煎じたりします、あまり生で、食べる人はいません、、」

渋い顔をしながら薬草を(むさぼ)るアルスにポールが伝えた。


「え、そうなの? でも、もう食べちゃったから仕方ないか。……あれ? 効果が出ないぞ?」


「そ、そんな、、すぐに効果は、出ないので、、、様子をみましょう、、」


ウキウキしながら効果が出るのを待つアルスと一緒に備品を購入するため当初の予定である市場へと皆で向かった。


市場でゼロが食器を品定めをしている最中、アクセサリーを取り扱っている露店の近くにポールが立って吟味するように品物を見ていた。普段はあまりアリッサから離れないのだが、ポールにしては珍しい行動だ。


「ねぇ、なんでアクセサリーなんか見てるの?」

「わっ!!!!」

いきなりアリッサに話しかけられたので、ビックリしたようだ。


「お、お土産、、を買おうかと、、思っていま、、して」


「お土産って……これアクセサリーじゃない。女の子にあげるの?」


「は、はい。僕に、とって、、とても大切な、人にあげようかと、、思ってます、」


「ふーん……んで、どれが欲しいの?」


「え? ああ、このゴールド、、の指輪にしようかと、とても喜んで、くれると思い、、ます」


「ふーん……おじさん、これいくら?」

 

「あぁ、これなら3シルバと5ブロンだな」

濃い髭の露店主がアリッサへ金額を伝え、ポールはお金を取り出そうと懐をもぞもぞすると―――


「ちょっと待ってて!!」

と言い、ゼロの方へ走って行った。


そしてゼロに何かを告げると、渋々何かをアリッサに手渡し、受け取ったアリッサは満面の笑みでポールの元へ戻ってきた。


「おじさん、それ私が買うわ! ポール、あなたの大切な人のお土産なんでしょ? ここまで護衛してくれたんだし、そのお礼よ!」


「あ、アリッサ様、僕なんかに、そこまで、して頂かなく、、ても」


「もう! いいからとっとと受け取りなさい!」


「は、はい! あ、ありがとう、ござ、います」


遠慮するポールにアリッサが強引に渡し、ポールは改めてお礼を伝えると大事そうに首元のペンダントへ指輪をしまったのだった。



一方、ゼロは時間をかけて皿を吟味していたのだが、ゼロの買い物を待っていたアリッサが次第に飽き始め早く決めるよう催促をかけてきた。


結局どの皿にするかその場で選ぶ事が出来なかったゼロは、皿を諦めてティーカップを選びに別の場所へ移動するはずだったのだが―――


移動中にアリッサの衝動買いが発生してしまい、アルスやゼロの両手がみるみる塞がっていく。


アリッサが夜食のおやつを選んでいると、近くにいたアルスが(うつむ)いたまま動かなくなってしまった。そして、彼は徐々に体をわなわなと震わせ―――


「きたきた、来たぞ!! これならイケそうだ!!! 体から何かが噴き出そうだぜ!!!」

と叫び出し、持っていた荷物をポールに押し付けると何処かへ駆け出した。


「ちょっと! 待ちなさいよ!!」

「アリッサ様、お待ち下さい!」


ゼロが呼び留めようとするがアルスを追いかけたアリッサは人ごみに紛れ、ポールもゼロと一緒に追いかけようとする。

だが、手荷物で両手が塞がり視野が狭く人を避けるのにも苦労する為、結局二人はアリッサを見失ってしまった。




「はぁはぁ……もうアイツどこに行ったのよ……」

二人が懸命に探している事など露知らず、アリッサはいつの間にか港辺りまで移動しており、海を眺めながらぼそぼそと呟く。


すでに日は暮れかけており、海に沈むサンセットがとても美しい。

そんな夕日を見ているとアルスへの怒りは心からスッと消えて行きそうになる。


「はあ……とても綺麗ねぇ」


「よぉ、お前がアリッサって奴か?」

海を眺めているアリッサの横から不意に声をかけられた。


「……そうだけど、アンタ誰よ? せっかく夕日見てたんだから私の邪魔しないでくれる?」


声の主は短髪の黒髪にもみあげと髭が繋がっているのが印象的な鋭い目つきをした大柄な男が立っていた。


「ふーん、噂は聞いてたが結構生意気な奴だな」


「はぁ? アンタに言われたくないわよ! さっさとどっかに行って!」


「ふふ、俺もさっさと用事を済ませてこんな街から出たいんだけどよ」


「じゃ、その用事ってのを済ませばいいじゃない。ってか、さっきからなんで私に話しかけてるのよ? 私になんか用があるの?」


「ああ、お前に用ならあるぜ」

男の目つきが鋭くなると、アリッサは悪寒を感じた。


「な、なによ、私に用って? ―――それに何が目的よ?」


「あ? 俺の目的か? それはな――――」

「あ、あ、アリッサ様!!!!」


後ろからアリッサを呼ぶ声が聞こえたので振り返る。そこには両手に大きな荷物を抱えたポールがいたので、アリッサは返事をするように彼に手を振って迎えた。


「あら、ポールじゃない。どうしたのそんなに慌てて」


「はぁはぁ……さ、探しました。ま、また誘拐でも、されたら、大変なので」


「私なら大丈夫よ。……さて、じゃ護衛も来たことだし私はもう行くわね――――って、あれ?」

アリッサが横を向くと先ほどまで話をしていた大柄の男の姿は消え去っていた。


「ど、どうか、しました、か?」


「うーん? さっきまでここに変な奴が居たんだけど……まぁいいわ。さ、行きましょ」



その後ゼロとも合流し、引き続き食器の買い物をしようとしたのだが、日も暮れ始めていた為、市場では徐々に店じまいを始めており、結局その日も備品を購入出来ずに終わってしまうゼロであった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ