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26.■ユニークスキル

手合わせを終え、日も暮れかかって来たので4人は野営地に戻ることにした。その道中アリッサはふと何かを思いだし、アルスへと話しかけた。


「ねぇ、オーラじゃなくてマナを使ってるって事は魔法も使えるの?」


「魔法ですか……使えない事もないですよ。剣士と魔法の両立……一時期は魔法戦士にも憧れましたよ」

アルスは遠い目をして答えた。


「オーラが使えないなら魔術師を選べばよかったじゃない」


「いや、どうやら無詠唱は授からなかったみたいで……でも、下位魔法は使えるんですけどね」

アルスはブツブツと呪文を唱え、手のひらに火を構成した。


「無詠唱ってなによ? でも魔法使えるじゃない! 中位魔法は使えないの?」


「うーん、今は使えないです……私が魔術師を選ばなかった理由は呪文を唱えるのが面倒で強力な魔法の呪文を覚えられないのです」


「あ、たしかに強くなるほど呪文が長くなるって教えてもらった気がするわ。ねぇ、あのマナを使って強くなったやつ教えてよ!」


「マナが漏れている身体だから止めた方がいいんじゃないですかね……?」


「私が良いて言ってるから良いのよ!」

心配するアルスを他所にアリッサは思わず怒鳴ったように声を荒げてしまい、こっそり聞くつもりが案の定ゼロにも聞こえてしまったようだ。


「どうかしましたか? アリッサ様?」


「おほほほ、何でもないわよ! さ、早く前を歩いて」


「……そうですか。かしこまりました」


ゼロが首を(かし)げながらくるりと前を向いたのを確認すると、アリッサは再びグイっとアルスに詰め寄る。


「これで邪魔は消えたわ、さっさと教えなさい」


「ひぃ! 助けてドラ〇も~ん!」


「誰よそれ? さっさと教えなさい!」


「わ、わかりました。何かあっても僕のせいにしないでくださいね。ほんとに大丈夫ですか?」

ただでさえゼロに目を付けられているので念のため再び確認を取ることにした。


「大丈夫よ」


「……いいでしょう。そうしましたら、マナを感じ取るところから始めないといけませんね。マナを感じやすいところだと魔法を構築する時に身体から手に向かって何かが動いているような感覚になると思いますので先ずはそこから始めましょう」


「わ、わかったわ。先ずば魔法を使えばいいのね」


「はい――――え? もしかして今からするんですか?」


「集中するんだから、ちょっと静かにしなさい」


「はい、すんません」


アリッサは少し戸惑った。

なぜなら今まで魔法の構築が上手く出来た試しがないのだ。

だが、ここでやらなければまたアルスに馬鹿にされ殴り飛ばしてしまうだろう。

そうするともう教えてもらえないような気がするため、魔法を構築せざる終えないのだ。


アリッサは一呼吸置くと、前に小さく手を作った。


「ふぅ……来たれ清流、我が導きに応えよ」


徐々に水の球が手の中で構成され始める。


「この時です。構成している時に身体の中に何か流れを感じませんか?」


「………」

アリッサは黙ったままさらに集中していた。

キュルキュルと音を立てながら(いびつ)にうねる水が徐々に綺麗な円形にまとまっていく。


そして、なんとか手の中で水の球が完成しそのままキープすることが出来たのだ。


「や、やったわ……! ついに出来た!」

手の中にある水の球をみてアリッサは驚きを隠せないようだ。


「え? ただの魔法の構築ですよ?」


「ねぇゼロみて! ちゃんと構築できたわよ!」

よほど嬉しかったのであろう、キョトンとしているアルスを無視して急いでゼロの元へと走り向かった。


「あ、ヤバい! お姫様、ちょっと待って!」

アルスが止めようとしたが遅かったようだ。


「えっ!! アリッサ様なぜ魔法を使われているのですか! すぐ止めて下さい!」

ゼロは構築を行えている事よりも、魔法を使っていることに対し驚いていた。


「だってね、アルスが無詠唱でマナの流れを感じて構築が出来たのよ!」


興奮しているアリッサは何を言っているかわからなかったが、何かしらアルスが絡んでいる事は想像ができる言い方だった。


「無詠唱ですか……いや、そんなことよりアルス様なぜ魔法を使わせたんですか!」


「ええええ! いやお姫様がマナで身体強化をしたいと言ってたし……何度も確認したんだけど、どうしても教えてほしいって言うもんだから―――」


「この旅は体内から漏れているマナを防ぐのが目的でしたよね? なのになぜマナを使わせたんですか?」


「え、いやだって寝たらマナ回復するってスマイル執事が自分で言ってたじゃん」


「マナの総量が徐々に減っているのですから、マナを使うことで総量に影響がでる可能性も考えられるので使わない方が良いに決まっているでしょう! ただでさえアリッサ様のマナ総量がどれほどなのか不明なんですから!」


「ひっ! すみませんでした!」


アルスは謝ったがその後もたっぷりとゼロに叱られた。

魔法を使わせた事とは別で今までのありもしない嘘をついたり、よくわからない行動も合わせて咎められたのだった。

最終的には平伏(へいふく)して「すまん」と言い、少しは反省していたようだったのでゼロも怒ることを止めた。


そして、ゼロが落ち着いたところで魔法を止めさせられ少し不機嫌になっているアリッサへ話しかけた。


「あと、アリッサ様よろしいですか?」


「ん、なによ?」


「先ほどの無詠唱と言うのはアルス様から聞いたのですか?」


「そうよ。でも無詠唱て何よ?」


ゼロは鋭い目つきでアルスを見た。

当然のことながらその視線に気付き、アルスは焦り始めた。


「いや、無詠唱って変な事じゃないよね? むしろこの世界にも存在してるよね? あの、もし違う意味や変な言葉でしたら先に謝っておきますよ! わたくしめにプライドはありませんから許されるのであれば靴でも舐めま――――」


「それ以上言わなくてけっこうです」


不意に出た言葉であるか、それともこれ以上怒られたくない理由であるのかアルスが必死に説明していたのでそれ以上聞くのを止めた。

すると、その話を聞いていたジルベールが再び入って来た。


「無詠唱があるとすれば固有技(ユニークスキル)に分類されると思いますな。言葉の通り、詠唱をしなくても魔法が発動できますぞ」


固有技(ユニークスキル)?」


アリッサは首を傾げた。


「そうですなぁ……先ほど説明した(スキル)とは違います。

これは人によって与えられた特殊なものといいましょうか、誰でも使えるモノではありません」


「よくわからないわね」


「うーむ、(スキル)はオーラを使用して発動しますけども、固有技(ユニークスキル)は一部の生まれ持った人が使える特殊な技になり使用する際にはマナを消費しますな。

例えば先ほどの無詠唱であれば通常よりも多くマナを消費することで呪文を唱えずに魔法を発動できますぞ」


「それって便利ね! 私も使いたいわ!」


「おお……先ほどもお伝えしましたが、誰でも使える訳でもありません。これに関しては生まれ持ったモノになりますので固有技(ユニークスキル)を持っている者だけしか使えません」


「そうなのね……」


「まぁまぁ、そんなに気落ちせんとも案外アリッサ様も固有技(ユニークスキル)を持っているかも知れませんぞ」


「え? そうなの?」


「実は本人が当たり前のように使っていた事が固有技(ユニークスキル)だった話も聞いたことがありますぞ。例えば大商人エーゴットがアイテムボックスを駆使し商売を繁盛させた逸話もありますからな」


「エーゴット? アイテムボックス?」


「エーゴットは農民から大商人へ成り上がった人物ですな。農作物を能力で保管していたのですが、自分にしかない能力と気付き、そこから他の国との流通をエーゴットがアイテムボックスを使って初めて行ったと聞いたことがあります。

アイテムボックスとは保存状態を保ちながら無限に持ち運ぶ事が出来る能力と噂されています」


「無限に持ち運ぶってどうやったらできるのよ?」


「うーむ……申し訳ございません。

過去にエーゴットが暮らしている港町のステップールへ遠征に行った際に地元民からざっくりと聞いたぐらいで能力の詳細まではわかりませんぞ。……さて日も暮れております、立ち話もなんですので早く野営地に戻りましょうぞ」


ジルベールを先頭に野営へと歩き始めた。

暫く歩いているとジルベールが何かを思い出したようにハッとし、アリッサへ話しかけた。


「おぉ、アリッサ様伝え忘れていた事がありましたぞ!」


「ん、なーに?」


口を開き今にも話そうとしていたジルベールだったが、急に口を閉じ上を向いて考える表情をすると、何を思ったのかニンマリと口元が緩み始めた。


「いや……やはりその時が来るまで秘密にしておきますぞ」


「えー何よ! 早く言いなさい!」


「今伝えてしまうとアリッサ様の楽しみも減ると思いますゆえ……さて、急いで戻りましょう!」

ジルベールは駆け足で野営へと戻った。


「あ! ちょっと待ちなさいよ!」


アリッサもジルベールへと続き、ゼロも駆け足で戻ろうとしたが、足が動く前に少し考え事をしていた―――――それはアルスとアリッサについてだ。


なぜ急にアリッサが魔法を使えるようになったのか不思議であった。

披露宴の後は魔法の授業を止め、大広間へと呼び出された日以降から魔法を使わせないよう、城の者は目を光らせていた。こっそり自室で魔法の練習をしていたのも彼女の性格上考えられない。


考えられるとしたらアルスがマナの使い方を教えたのが原因ではないか?

彼のマナの使い方はバツグンに上手い。


アルスがどれほどのマナ総量を持っているかわからないが、オーラが使えない代わりにジルベールによる腕重荷(タルスロック)を数発受けられるほどのマナを身体に纏い、防御力を高めていたはずだ。


そしてジルベールの行動に対応しながらマナを身体の一部に瞬時に移動させ発動している。一般の魔術師であればとうにマナが枯渇しているはずだ。


他にも気になることはまだまだあり、中でも()()()()()()()()()()()()()ことがゼロを驚かせた。

目で圧をアルスにかけて探りを入れたが、アルスが思わず発言してしまったであろう反応をしていたので、おそらく何も知らないのであろう。


アリッサの魔法についてはぱっと見であるが構築が安定して出来ていた。

なんとアドバイスをして魔法を使わせたのか不明だが、マナの扱いがずば抜けているアルスの助言で構築できたのであろうか? いずれ機会があればアルスに確認をしてみようと思うゼロであった――――



「ゼロなにしてるの! 置いて行くわよ!」


「あっ! 申し訳ございません」


ぼーっと立っていたゼロにアリッサが声をかけ、ハッと我に返ったゼロは急いで皆の元へ戻るのであった。

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