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23.■ひと悶着

ユフィンの町はエクリエル王国、ギルド本部があるオルテンシア、亜人の国ルータニア大陸方面の経由地点となる。


ディサイヤ大陸エクリエル側の三大都市であるエクリエル王国、オルテンシア、メルトまでは及ばないが人の往来が多く、流通なども盛んなため発展しており比較的大きな街であると言えよう。



一行は街の中を馬車で移動し、宿屋エリアで一番お高い宿に着くと、宿の使用人に馬車を預けてジルベールを先頭に中へと入る。

今回泊まる宿の名前はローチ・ジューマと呼ばれ金額と質から貴族や富裕層などが利用することが多い。


受付の広間はふかふかの絨毯が敷かれており、上を見上げると小ぶりのシャンデリアもキラキラと輝き、壁には絵画なども飾られ高級感が漂っている。



「いらっしゃいませ!」

ちょび髭を生やした店の主がニコリとジルベールへ挨拶をした。


「一番良い部屋は空いておるか?」


「はい、空いております!」


「では、そこを頼む。あと、その部屋の近くに空いている部屋がいくつかあれば9人ほど泊まりたいが厳しいか?」


「いえいえ、ご安心ください空いておりますよ!」


「おお、これはツイておるな! では明日の昼まで部屋を取りたいがいくらだ?」 


「そうですねー……合わせて8ゴルドでございます」


「そうか、しばし待たれよ」


ジルベールは膨らんだ小袋から8ゴルド取り出すと、それを店主へ渡した。


今回の旅に同行する人数も多いため、最悪人数を分けて別の宿に泊まる事を覚悟していたが、人の往来が多いユフィンの宿にしてはすんなり泊まることが出来たのでジルベールは少し疑問に感じた。


「いつもこんなに部屋は空いておるのか?」


「いえ、何やら牛のような魔物がオルテンシア方面で暴れまわっているらしく、恐らくその影響かと思われます」


「牛のような魔物であればブルテイルか? そこまで危険な魔物ではないのじゃがのう。……まぁよい、休ませてもらうぞ」



最上階の一室にアリッサ、下の階に他の者達が二人一部屋で泊まることになった。

就寝時にアリッサの部屋の前には護衛が交代で就く予定だ。


ジルベールの独断による部屋割りの結果、ゼロはポールと同じ部屋となった。

二人で部屋に入るとシンプルなベッドが並んでおり、机や小さい絵画も飾られている。

アリッサが泊まる部屋と比べると見劣りはするが、ベッドはふかふかで寝心地は良さそうだ。


ポールは部屋へ入ると自身の装備品を脱いで、鎧を磨いたり剣を研ぐなどの手入れを行い始める。

ゼロも首元のシャツのボタンを緩め、ゆっくりくつろぐことにした。



しばらくすると宿側で湯桶を用意してくれたので、後にアリッサの護衛もあるためポールから身体を清めることになった。


彼の身体は歳が若いからかまだ線は細いが、日々鍛えているので筋肉は見た目に反しついている。

ポールが洗い終わるのを待っていると、彼の首にロケットペンダントが付いたまま身体を拭いていたのが少し気になりゼロは聞いてみる事にした。


「あの、ペンダントは外さないのですか?」


「あ、、、こ、これは、、大事な、物なので、、、」

ポールはペンダントを握りしめ、じっと見つめた。


「大切なものですか。ちなみに中には何が?」


「………」

ポールはペンダントを見つめながら固まってしまった。


「ポールさん?」


「……え、、あ、、、、はい?」


「詮索してすみません、もし嫌であれば無理に教えていただかなくても大丈夫ですよ」


「あ、、、いえ、、、少し、、、か、考え事をし、て、まして」


「いえいえ、こちらも急かすように言って申し訳ありません」

お互い頭を下げるが、決して悪い雰囲気でもない。


するとポールからペンダントについて口を開いたのだが――――


「えっと、、、、こ、、これは、、僕の大切な、ひ、人の――――」


「お待ちください!!! どうか落ち着いて下され!!!」

ポールが話始めようとした矢先、部屋の外からジルベールの大声が響いてきた。


「いいじゃない!! 邪魔しないでよ!」


どうやらアリッサも一緒にいるらしい。

ゼロは頭を抱えため息をついた。


「はぁ……ポールさん、すみません。どうやら問題が起きているみたいなのでちょっと様子を見てきます。折を見てまた話を聞かせて下さい」


「わ、、わかり、、まし、た。僕も、行きま、す」

裸のポールは鎧を着る必要があるので急いで身体を拭き始めた。


「ポールさん、私が行くので大丈夫ですよ。ジルベール様に言われた時は上手く言っておきます」


ユフィンまで移動と護衛を行なっていたのだ。少しは休ませてあげようとゼロなりに気を遣った。


「あ、あ、、りがとう、、ござ、、いま、、す」


ゼロは頭を下げ、ドアノブに手をかけると部屋の外に出た。

すると、そこには下の階に降りようとしているアリッサとそれを防ごうとしてアリッサの腕を掴むジルベール、その後ろでおろおろしている護衛達がいた。


ゼロは状況を察知し急いで向かう。


「ジルベール様、これは一体どうしたのでしょうか?」


「おお、ゼロか! いやはや困ったことになってな。アリッサ様が外に出ると聞かんのだ」

ジルベールはどうしてよいかわからず、困り果てていた。


「もう、離してよ!!!」

ゼロと話している隙にジルベールが掴んでいる手をアリッサは振り払った。


「アリッサ様、少し落ち着いて下さい」

ゼロが(なだ)めようとしたその時―――――


「ジル爺! ここは任せてくれ!」


凛々しい顔をしたアルスがアリッサの前に両手を広げ立ち塞がった。


「「おお、アルス殿……!」」

彼の登場にジルベールを含む護衛達の目にはキラキラと希望の灯がともった。


「なによ、アンタも邪魔するのね!」

アリッサの機嫌はさらに悪くなっていた。


「お姫様! ここを通りたければ私を倒してから行きなさい!」


アリッサの前に立ちはだかるが彼は決して大柄とは言えない体なのだ……。

だが、彼の表情と言葉、雰囲気により彼の体は信じられないほど大きな壁に見えた。

護衛達は救世主(アルス)の登場により一瞬で期待が高まったのだ。

そう、彼なら止めてくれる。いや、彼だからこそ止められるのだと―――――――



「ふんっ!!」

アリッサはアルスの急所を思いっきり蹴り上げた!


「ぐべらっ!!!!」

悶絶し地べたにのたうち回るアルスを――――


「邪魔って言ったじゃない!!」


グシャ!


―――――さら踏みつけた。


「ぐふっ!!! ありがとう……ございます……」


「「アルス殿……」」

一瞬で屍となったアルスを目の当たりにしたジルベール含む護衛達の目から希望の灯が消え、すかさずゼロが止めに入る。


「アリッサ様、ユフィンの町を出ると次の目的地まで到着するのに時間が掛かるのでしばらくは野宿となります」


「それが何よ?」


「それまでの食料や準備を整える為、ユフィンで買い出しを行う予定です」


「え? そうなの?」


「はい、ただ本日は日も暮れており、皆さまも疲れているかと思いますので、私が明朝に買い出しに行く予定となっております」


「そうなのね、なら私もそれに付いて行くわ」


「ジルベール様……」

ゼロは同行可能かどうかを確認するため、ジルベールを見た。


「うーむ、仕方なかろう。アリッサ様がこう言ってしまっては聞かんからなぁ。護衛を付けて買い出しの同行をしよう」


「かしこまりました」


「なら今日はもう寝た方がいいわね。ゼロ、出発する時は私を起こしに来なさい」


「はい、かしこまりました」

アリッサにぺこりと一礼した。


アリッサは意気揚々と部屋へ戻っていった。

ジルベール含む護衛も一安心し各々その場を離れ、ゼロも部屋へ戻ることにした。


部屋に戻るとすでに鎧を着たポールがいたので先ほどの件は問題が解決したことを伝え、そのままポールは護衛としてアリッサの部屋の前に向かっていった。


ドアの外から「わっ!」と、ポールの驚いた声が聞こえてきた。

おそらく屍となっていたアルスを見て反応したのだろう。


彼を起こさなかった理由は幸せそうな表情で倒れていたので、そのまま放置したのはゼロなりの気遣いだ。



※※※



翌朝、運ばれてきた朝食を食べ、アリッサを起こし着替えを済ませると買い出しに外へ出る。

ジルベールから十分なぐらい買い出しの予算をもらった。

ちなみに今回はジミー、クラーイという二人の護衛が同行することになる。


別行動になるがジルベール含む数人は装備品の手入れに必要な布やオイルを購入しに出た。

また、交代でアリッサの護衛を当たっていた者やアルスは昼まで部屋で待機だ。



食材は日持ちしにくい肉や魚の生物を少なめにしてリーンなパンや野菜、香草、ドライフルーツなどを多めに購入する。

買い出しの時にアリッサが興味を惹いたアクセサリーやフルーツを購入することもあったが、しばらく野宿となるので護衛の一人にも持ってもらい大量の食材を用意した。


買い出しを終え、宿で皆が合流出来たのをジルベールが確認すると昼食後にユフィンを発った。



街を出てからの道中、馬車の中ではアルスの自慢話に花咲いていた。


「――――ドラゴンに立ち向かったあの時、私は死を覚悟しました。

なにせ相手は火を噴き、強靭な爪で襲い掛かってくるのです、いやーそれはそれは大変でしたよ。

ですが、華麗にドラゴンの攻撃を回避し私の技をぶち込んでやったのです―――こんな感じにね!」


身振り手振りで説明するアルスの話はしばらく続き、ゼロとアリッサは話に飽きて外を眺めているだけだったが、ジルベールだけは興味深そうに話を聞いていた。


昼過ぎにユフィンを出たため大した移動は出来なかったが、日が落ちる前にはある程度ひらけた場所で野営することになった。



皆が野営の準備をしている中、ジルベールがアルスの元へ駆けよると―――

「アルス殿、準備まで時間があるじゃろ。ワシと手合わせをせんか?」


「え!?」

アルスは物凄く嫌な顔をした。


「かっかっか! ドラゴンを倒したんじゃろ? どれほどの腕か試してみたくなったわい」


「え? あ、いや……はい」

自慢話をした手前、断りずらくなってしまったようだ。



アルスとジルベールの手合わせが始まろうとしていた。

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