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第45話

 どうも【解析者】は、聞いたことに答えてくれる類いのスキルでは無いようで、字面から想定するしかないのがツラいところだ。


 槍術のレベル上昇……これは別にそのまんまだから良いだろう。

 レベルの上昇を境に、オレの頭で考えた訳でもない技が、まるで長らく使っていた技の様に感じられるようになる感覚。

 以前と同じ技でも、技の冴えとでもいうべきが全く異なり、別モノに昇華されているという実感。

 これらは以前にも経験しているので、そこまでの驚きは無い(もちろん凄いことでは有るが……)。


 自習も理解できる。

 単に自ら習うことを指す言葉なのだから、この場合は鎗の鍛練が該当したのも想像に難くはない。

 自得……自ら、得る……か。

 それらの心得、うん。

 まぁ……何となくは分かるな。


 鍛練や学習した場合の習熟……熟練度上昇率の向上といったところだろう。

【解析者】のスキル能力が更に拡張と補強されたと思っておけば良さそうだ。

 もともと努力するのは嫌いでは無いし、自分が凡才なのも痛いほど理解している。

 凡庸な才能しか持たないなら、努力するのは当然だと思っているので、今さら苦にもならない。

 努力したから必ずしも報われるなんて思ってもいなかったが、思いがけない巡り合わせで、努力の効果が保証されたのだ。

 その労力を惜しむべきではないだろう。


 もうかなり汗だくになりながらも愉しげに鎗を振るっていたオレは、帰って来た妻や兄達に呆れられてしまったのだった。

 だから、気付いたら目の前に呆れ顔の妻達が居てギョッとしたのも自業自得というものだ。


 ◆


 昼食後の話し合いは、兄達の戦果報告から始まったのだが、オレが鍛練中に得たスキルについて報告し、先ほど見られてしまった醜態の弁明をしていると……


「ヒデちゃんって、昔からそういうところ有るのよね~」


 妻が何を思い出しながら笑っているのか心当たりが……いっぱい有るので、どれのことだか分からない。

 料理?

 日曜大工?

 スノボ?

 模様替え?

 釣り?

 マッサージ?

 ゴルフ?

 うーむ……やはり分からない。



「だな。良く飽きないな……ってぐらい同じゲームやってると思ったら、いつの間にか達人級になってたりとかな」


 兄が言うのはアレのことか。

 アレは兄に負けまくったのが悔しくて、毎日ひたすら練習したのだ。

 大会にも出て、そこそこ良いところまでいった記憶がある。


「あぁ、ヒデ特訓とかな。マルセイユターンだっけか?」


 父が言っているのは……マルセイユ式ルーレットのことか?

 いや……クライフターン?

 小さい頃は、サッカー少年だったからなぁ。

 出来ない技があると、とことん練習するクセがあって、両親はそれを『ヒデ特訓』と名付けていた。

 裏街道(※サッカーの技名)の特訓の時は、爺ちゃんにずっとディフェンダー役やらせちゃってたなぁ……。


「……いや、ゴメン。分かった。そろそろ時間も無いし、話し合いの続きしよう?」


 どうにかこうにか、黒歴史(?)の掘り出し会になりかけた流れを断ち切り、話題を実務的な方向に戻す。


 まず探索の結果として、今回の戦利品。

 これの分配についてだ。


 まずは、俗にいう本部鑑定から戻ってきていた謎の靴だが、これは新緑の靴という名の貴重な魔法の靴だった。

 形状はブーツ。

 常時、新緑のように(?)若々しい気持ちのまま探索が続けられるという、一種の精神疲労耐性の魔法が付与されたものだ。

 さらに投射武器(弓、ボウガン、銃、チャクラム、ブーメランなど)の使用時に、普段の5割もの命中補正が付くらしいのだから、かなりの優れものだろう。

 ……まぁ、現状のオレ達の中には、投射武器の使い手が居ないのが残念なところではある。

 しかし今後のことを考えれば、サブウェポンとして銃を持ったり、片手で扱えるタイプの投射武器を携行したりすることは有り得る話だし、全く不要な能力というわけでもない。

 防御性能は炭素結合時のタングステン級……タングステンって何だっけ?

 何かとても硬い金属だった気はするのだけど……門外漢なので、正確なところが分からない。

 後で調べてみよう。

 なお、自動サイズ可変は予想通り付与されていた。

 これで存分に使い回せる。


 今回の収穫の目玉は何と言ってもスキルブック……スキル【罠解除】の籠められた本だろう。

 今回は【解析者】スキルでの成長も期待される形で、オレが得ることになった。


 そして、ギガントビートルから再び得られた甲殻の護符。

 これは父と妻の同時使用を基本とし、兄やオレの単独探索時は流用する。


 他には……

 ポテンシャルオーブとストレングスクッキーを妻が。

 持久力向上剤を父が。

 スタミナマフィンとポテンシャルキャンディを兄が。

 オレは、何と8つものスクロール(魔)と、ポテンシャルオーブを1つ貰った。


 兄達の方が浅い階層で活動しているのにもかかわらず、モンスターの討伐数が多いからだろうか?

 それともやはり、元々オレより兄の方が運が良いからなのか、ドロップアイテムの数や質で並ばれている気がする。

 ここは気合いを入れて、第4層の攻略を開始しなきゃだなぁ。


 デスサイズとの再戦を制し、新たな階層に挑む覚悟を胸に、オレは今日の探索に向かう。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] ここまで読んだのですが、ダンジョンのモンスターと戦う時に槍の一突きや投擲一発などで倒されるシーンが多く モンスター側と主人公側の強さが曖昧になっていて実際はどのくらいの力量なのかわかり…
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