表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

32/312

第32話

 のっけから暗い気持ちにさせられてしまったが、次の報告は沈んだオレの気持ちを上向かせるのに充分なものだった。


 簡易鑑定機のデータベースに載っていない、恐らくレアアイテムがドロップしたというのだ。

 これも盛運の腕輪の効果なのだろうか?

 こういう場合は、最寄りの鑑定スキル持ちがいるダン協関連施設で、スキルを用いた鑑定が行われる。

 俗に言うところの本部鑑定だ。

 形状は靴。

 ダンジョン産のマジックアイテムである以上、サイズ可変の性質も持っているだろうことから、効果に合わせて誰が使うかを決めることになりそうだ。


 レアアイテムの中では、わりとドロップしやすいと言われている、アクセサリーやドーピング剤と違い、防具や武器としてのマジックアイテムは、超のつくほどの貴重品だ。

 この異変が起きた世の中を無事に生き抜く可能性は、間違いなく上がることだろう。

 ……売ったら凄い値段になることだろうが、もちろん売ったりはしない。


 他にも腕力向上剤、敏捷向上剤が、1本ずつ。

 これは前回とは反対に、父が腕力。妻が敏捷を補うことになった。

 そして、実質的には兄が単独で挑戦したギガントビートルから、またも甲殻の護符を得ていた。

 これにより、父と妻の同時探索時に防具性能を、2人同時に上げたままの探索が可能になる。

 余談だが、妻がオレへの土産と言って、笑みを浮かべながら渡してくれたアイテムがある。

 ……例のネタスクロールだ。

 ありがたく頂戴し、ヤケクソ気味に使用してやった。

 父からも土産……もちろんネタスクロール。

 同じ効果がよく分からないアイテムなら、せめて飴玉がよかった……。


 復帰したアメリカの探索者パーティが、ヒポグリフという、グリフォンの劣化亜種の討伐に成功したらしい。

 普通のグリフォンは前半身がワシ、後半身がライオンだが、ヒポグリフは後半身が馬といった姿をしたモンスターだ。

 どちらも超高速で飛翔し、一撃離脱がメインの攻撃手段で、今のオレでは太刀打ちのしようがない。

 兄なら、あるいはワンチャンスあるかもしれないが、生命力も非常に高いモンスターだ。

 恐らくは、倒しきる前に逃げられてしまうだろう。

 では、どうやって倒したのか?

 元々が米軍に所属したまま探索者となった彼らは、その(ツテ)を存分に活かし、追尾式の地対空ミサイルで撃墜したのだという。


 このニュースを伝えた番組内では、いわゆる現代兵器の有効活用こそが、このモンスター災害を鎮めるキーになり得るという論調だった。

 ミサイルは無理でも……銃か。

 拳銃ぐらいなら値段的に買えないこともないし、維持コストも賄えるだろうが、それ以上を求めたら途端に必要とされる金額や、性能維持にも専門の知識が求められるのが、銃という兵器だ。

 素人が練習もせず、いきなり当てられるモノでは無いというし、色んな意味で今はまだ無理だなぁ。

 日本でもダンジョン発生から数年で、ダンジョン内での使用に限り銃の所持、使用が、法的にも認められてはいるが、自宅で管理することは認められておらず、ダン協の施設内、警官の詰所に預けて帰らなくてはならない。

 つまり、ダンジョン外にモンスターが現れている今の状況には、銃器類はあまりメイン武器に適切だとは言えないだろう。

 そもそも各種ハードルの高さから、日本国内で実際に銃器を使ってダンジョン探索を進めているのは、自衛隊や警察などの公的組織に属する探索者か、トップクラスの探索者達ぐらいだ。


 ダンジョン外で、思いっきりミサイルをぶっ放すとは、ある意味さすがアメリカ……と言える。

 ちょっと日本では真似のしにくい荒業だが、これを機に各国で軍事力の本格行使が検討され始めることは想像に(かた)くない。


 そうして、いつか平和を取り戻す時が来れば良いな……ともすれば、悪い方に傾きがちな思考を、無理やりにでも明るい方に導きながら、いつもよりも早い時間に眠りにつくことにした。


 明日は早朝から単独でダンジョン探索だ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ