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第290話

「…………我が声に応え、其の麗しき姿を顕せ、クリエイトドールズ!」


 長い長い詠唱が終えたカタリナが、呪文を唱え終わると同時に宙に魔石をバラまいた。

 カタリナが投げた魔石は、どうやら人形達の核になったみたい。

 極小の人形達が次々に生まれていく。


 ……あ、これアレだ。


 ヒデちゃんと一緒に行った青葉城のダンジョンで、私達がめちゃくちゃ苦労させられたチビ人形だよね。


「ありがと、アイ。屋内の捜索は、この子達に任せましょう。小さいけれど優秀なのよ。狭い範囲の捜索なら、ガーゴイルより余程この子達の方が頼りになるわ」


「この子達、戦闘も強かったんだよね~。クリストフォルス君に教わったの?」


「クリストフォルス君って……まぁ、師匠の見た目は子供だものね。そうよ。人形遣いクリストフォルス、独自の魔法人形なの」


「カタリナ、クリストフォルス君のこと、師匠って呼んでるんだね~」


「まぁね。私が頼んで教わってるんだもの。師匠に違いないでしょう? 本人は師匠って呼ぶなって言ってたけど、何回も呼んでいたら諦めたみたい」


 スラッと背が高くてモデル体型のカタリナが、ちっちゃなクリストフォルス君を『師匠』って呼んでいる光景は、私の頭の中で想像してみたら変な感じはするけれど、カタリナの目は至って真剣だった。

 あんまり茶化すと怒られちゃいそうだし、ここは話題を変えることにしよう。


「なんで最初から、あの子達を使わなかったの?」


「第一には航続可能距離の問題ね。身体が小さい分、やっぱり広範囲の索敵には向かないのよ。速度はガーゴイルより出るのだけれど、無理をさせると魔力の消費が激しくなるわ。足りない分は私の保有魔力から消費されることになるから、常時使用するんじゃなくて使いどころを限定した方が効率的よね。それに、創るだけでも魔力をかなり持っていかれるし……」


「なるほどね~。あ、そう言えば隕石の魔法も凄かったよね。アレ、私にも使えるようになるかな?」


「うーん、どうかしらね。あれは【空間魔法】の応用だから、アイよりはヒデやトムの方が先に使えるようになりそうかな?」


「そっかぁ……残念」


 アレ使えたら、カッコ良かったのになぁ。

 使うのに【空間魔法】が必要ってことは、隕石を宇宙からワープさせるっていうことなのかもしれない。

 たしかに私には難しそう。



「やっぱり居た! アイ、行くわよ!」


「うん!」


 カタリナは迷わず走り出している。

 走るのは私の方が速いから、追い越さないように気を付ける必要があった。

 そっちこっちの建物の中から、ハチの様なサイズの人形達が飛び出して来て、カタリナを先導するかのように飛んでいく。


 人形達が次々に入っていく建物は幼稚園。

 部分的に壊れているものの、確かに隠れる場所には困らなそうだ。

 中に入ったけど、カタリナも人形達も止まる気配が無い。

 どうやらムオーデルは2階に隠れているみたいだ。

 扉は閉まっているが、ガラス窓が割れていて人形達はその隙間から入っていく。

 さすがにカタリナも私も、同じところからは入れない。

 カタリナを追い越すように前に出て、薙刀を一閃する。

 特に魔法は使っていない。

 今の私の薙刀なら、ステンレスかアルミあたりで出来ているらしい扉を切り裂くのも、特に難しくなかった。


 どうやら保育士さん達が事務仕事をする部屋だったらしく、書類や文房具なんかが床に散らばっている。

 カタリナの人形達は、ムオーデルに攻撃されても怖がることなく一生懸命に戦っているけど、

 今回のムオーデルはちょっと手強そうだ。

 見覚えの有る魔法の杖を構えている女の人。

 背中にビールサーバーの様な物を背負っていて、手に持った筒から白いガスを撒いている人。

 ひたすらマシンガンを乱射している人。

 不思議な模様が入った日本刀のような武器で、正確に人形達を斬り刻んでいるオジさん。


 マシンガンの人は今まで見たムオーデルになってしまった自衛隊の人とあまり変わらないけれど、他の3人はちょっと特殊だった。


 人形達には弱点になる属性が有る。

 白いガスは冷凍ガスみたいだ。

 全く効かない人形もいる一方、墜落している人形もいる。

 魔法の杖は風の属性らしい。

 やっぱり、倒される人形がいる。

 それより凄いのは日本刀のオジさん。

 ガスや魔法、マシンガンを突破して高速で迫る人形を残らず斬っていく。


 カタリナが魔法を放つ。

 発動速度重視の風魔法。

 建物の中に隕石は落とせないし、燃えそうな物の多い室内では火の魔法も使いにくい。

 マシンガンのムオーデルには直撃し消滅させた魔法だったけど、他の3人にはギリギリのところでかわされてしまった。


「アイ、間違いない。核が居るわよ。恐らくはあのカタナの男」


「そうだね。凄く強い」


 実際、かなりの強敵だと思う。

 他の2人はともかく、日本刀のオジさんは別格だ。

 あの人がムオーデルの大将で間違いないだろう。


「かなり強化されているみたいね。生前から、あんな腕前だったとは思えない。それなり以上に迷宮に通っていた人なのでしょうけれど……」


 そっかぁ……自衛隊の人って、ダンジョンに通ってた人達が多いんだよね。

 お仕事や訓練の合間にダンジョンに通ってた人なのか、任務でダンジョン探索をメインにしていた人なのかでもかなり違うと思うけど、日本刀のオジさんは多分ダンジョン探索メインの人だったような気がする。

 それにしても……


「ムオーデルになると強化されちゃうの?」


「全てが強化されるわけでは無いわ。核に選ばれた個体と側近ぐらいね」


 そういうことなら、あのデタラメな剣技も納得。

 反射神経とかも、普通じゃ有り得ないレベルだし、これはかなり手強そうだ。

 薙刀を構え、カタリナの前に出る。

 カタリナと2人なら特に打ち合わせは要らない。

 人形達と私が前衛。

 カタリナは後衛。

 人形達が攻撃を引き受けてくれているうちに、日本刀のオジさん以外は倒してしまいたい。

 その後はカタリナに援護してもらいながら、私があのオジさんと戦う。

 そう覚悟を決めて前に出た私に、まさかの声が掛けられた。



『君、何でモンスター達と一緒に居るんだい?』


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