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第278話

 早めにパーティ編成を変更しておいて良かった。

 それがオレの正直な感想だ。


 子ダンジョンの子ダンジョン。

 言うなれば『孫ダンジョン』が発生すると、その勢力圏にはイレギュラーが出現する確率が非常に高くなる様なのだ。

 それに加え、これまでオレ達が相手していたモンスターとは違う系統のモンスターが、一緒になって現れ始めてもいる。

 恐らくは境界線上に有ったダンジョンの領域と、その更に後方に有ったダンジョンの領域とが繋がったためなのだろう。

 ついさっきまで、ゴブリンやオークなどの亜人系モンスターと、イビルボアやイビルウルフなどの獣系モンスターに加え、ゾンビやゴーストなどのアンデッドモンスターしか侵攻して来なかった比較的『安パイ』だった方角から、レッドキャップやバンシーなどの妖精系モンスターや、イビルホーク(魔物化した鷹)やイビルオストリッチ(同じくダチョウ)なども攻めて来るようになってしまった。

 そうした系統に支配されないダンジョン外で生まれたモンスターや、イレギュラーだけでも厄介なのに、徐々に各方面とも来襲するモンスターが多様化し、結果としてゴーレムやリビングドールで対応しきれないケースが頻発しているのだ。


 ワイバーンやサイクロプス、コッカトライスにレッサーデーモン、スペクター、レッサーバンパイア…………自警団の面々の手に余るようなモンスターの数も種類も増えてきた。

 東北地方随一の都市である仙台市を含むオレの支配領域は宮城県南部がメインだが、支配領域外や領域内でも未攻略な場所でこうした強力なモンスターが普通に居るエリアと言うと、実は心当たりが山ほど有る。

 例えば日本三景に数えられている観光地……松島。

 平城京、太宰府と並ぶ日本三大史跡……多賀城。

 新幹線も止まる宮城県北部の中心地の一つ……古川。

 それ以外にも有るが、例として挙げるのはこんなもので良いだろう。

 ダンジョン外モンスターの強い地域と直近の未攻略ダンジョンとは、直接その領域を接していないものが殆どなのだが、守護者同士の戦闘が行われているかどうかは別として、違うダンジョンから来ているモンスター同士でも、お互いに争う様子は見られない。

 みんな仲良くオレ達に襲い掛かって来る。


 今のところ、そうしたモンスター達に決定的な仕事をさせずに済んでいるのは、先手を打ってパーティを分けたおかげなのは間違いない。

 あとは各陣地に詰めている父や柏木兄弟、それから佐藤さんや森脇さんなどの奮闘も大きいだろう。

 もちろん、クリストフォルスが急きょ増派したゴーレムやリビングドールらの働きも無視出来ない。


 問題は現時点で既に、誰もが手一杯になりつつあることだろう。

 いまだに守護者自身の侵攻や、規格外の強さを持ったイレギュラーの存在は確認されていないのに……。



『主様、我輩ちょっくら、そこの子ダンジョンを攻略して来ますニャー』


「トム……?」


『このままではジリ貧ではニャいですかニャ? 主様がここいらのモンスターを壊滅させている間に我輩が子ダンジョンに潜る……そうして少しずつでも、敵の侵攻ルートを減らして状況の改善を図る必要があると思うのですがニャー』


「確かにな。でも、オレが子ダンジョン潰しに行った方が早くないか?」


『それはもちろんですニャー。ただ、それだと大型のイレギュラーが出現した場合に後手に回りやすくニャりませんかニャ?』


 ……なるほど。

 トムは様々な武器を使いこなすし精霊魔法も属性魔法もそれなりに使えるため、モンスターを殲滅するスピードはかなり早い。

 採れる選択肢が多い分だけ、オールマイティーに実力を発揮できる。

 しかし、大型のモンスターをはじめ耐久力や生命力に優れたモンスターを苦手にしているのも事実だ。

 分かりやすくゲーム風に言えば……平均ダメージには優れているが、最大ダメージが少ないタイプと言える。

 つまり、子ダンジョン内のモンスターなら何ら問題なく倒して来れるだろうが、外でイレギュラーの相手をさせるのには向かない。

 大半のモンスターはトムでも倒せるが、ドラゴンだとか巨人だとか、しぶとくてデカい相手の突破を許す可能性は、確かに有るわけだ。


「分かった。のんびりしてると置いてくからな」


『主様は相変わらず手厳しいですニャー。でもまぁ……ご心配には及びませんニャ。我輩だって強くなっているのは間違いニャいのですニャー』


 言うなり進行ルート上のモンスターを蹴散らしながら、子ダンジョンに入っていくトム。


 オレもボヤボヤしていられないな。


 タイムラグが殆ど無くなって来た【転移魔法】で、遠目に見えていたサイクロプスの間近に飛び、アダマンタイトの穂先を持つ新しい得物で単眼を刺し貫き、返す刀(槍だが……)で側を飛んでいたワイバーンを殴り飛ばす。

 着地を待たずに魔法を次々に放ち、有象無象を白い光に変えていく。

 縦横無尽……鎧袖一触……ワラワラと迫るモンスター達は、いっこうに減ったように見えないが、それでももう目に映る範囲には大物は残っていない。


 結局、オレが辺りのモンスターを殺し尽くすのと、相当に攻略を急いだのだろうトムが息を切らしながら子ダンジョンの跡地に転移して来たのは、ほぼ同時だった。

 ニヤリと笑った(ように見える)トムは、休むでもなくオレの足元に駆け寄って来る。

 ここは押し返した。

 寸暇を惜しんで次の目的地へと飛ぶ。

 マチルダとトリアが苦戦している。


 ……ついに()()()ようだ。



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― 新着の感想 ―
[一言] >休むでもなくオレの足元に駆け寄って来る。 >ここは押し返した。 一瞬、足元によってきたトムを押し返したのかと思って???になったわw
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