第20話
久しぶりに見る宝箱は、サイズとしては小さいものに分類されるものだった。
今までにも様々な大きさの宝箱を見て来たが、大きなサイズのものの中に、ちょんまり貴重かつ小さなアイテムが入っていたことも有って、実はサイズはアテにならない部分もあることが分かっている。
しかし、小さな宝箱に入りきらないぐらい大きなアイテム……ということは無いらしい。
大は小を兼ねるが、その逆は無いということだ。
もちろんオレが学生時代に運良く手に入れたライトインベントリーのように、見た目に反して沢山の物が入る収納バッグ類も有るのだから、絶対に有り得ないとまでは言い切れないのだが……まぁ、それは例外中の例外だろう。
第1層の階層ボスが落とした宝箱だからといって中身がショボいとは限らないが……過度の期待もせず、粛々と中身を確認する。
中には、千社札シールのような意匠の護符が1枚……ペラっと入っていた。
……何だろうコレは?
見たことが無いということは有用なアイテムである可能性も高いのだが、まるで効果の分からないアイテムでもあるので、リアクションも取りにくい。
デザインは和風に寄り過ぎているが、それでいて書いてある文字は全く読めないのだ。
東側の戦利品は、見事に魔石と僅かなポーション類だけだったので、コレが良いアイテムなら嬉しい……さて、帰ろう。
時刻は17時を回って、既に17時半に近い。
いくつか効果の分からないアイテムを簡易鑑定機に掛けてもらう手間も考えると、帰りは少し急いだ方が良いだろう。
少しだけ警戒していたのだが先ほどの若者連中との望まぬ再会も無く、無事にダンジョンゲートを出て、申し訳程度の作りのダン協の支部内に有る買い取り所へと向かう。
受付で暇そうに文庫本を読んでいた女性(年齢は少し高め……)が、驚いたような顔を見せたが、すぐにお手本のような営業スマイルを浮かべて出迎えてくれた。
異変が起きた後とは言え、いまだ魔石の相場は二束三文のようだが、あまり多くを自宅へ持ち帰ると悪目立ちするので、キープはそこそこにして残りは全て売り払う。
ポーション類は迷わず持ち帰り。
謎の薬瓶、指輪、千社札は、お姉さんにお願いして簡易鑑定機に掛けて貰う。
誰も居ない待合室の椅子に腰掛けて待つこと数分。
「番号札1番のお客様~」
どうやら鑑定が終わったようだ。
鑑定料金を支払い、鑑定結果の記されたB5サイズの紙を3枚受け取る。
オレと職員のお姉さん以外、周りに誰も居ないので特に人目を警戒する必要は無い。
その場でサッと目を通す。
『腕力向上剤……およそ1割ほど、永続的に腕力が向上する。身体的な見た目に変化は起きない』
『ラックの指輪……幸運が訪れ不運を退ける。およそ2割弱の期待値。必ずしも指に嵌める必要は無い』
『甲殻の護符……防具の内側に貼り付けることで、ギガントビートルの甲殻と同程度の防御力を、元々の防具性能に付与する。着脱自在』
3つとも今のオレにとっては、大当たりの部類だ。
もちろん買い取り依頼やオークション出品依頼をすることなく、現物を返却してもらう。
大収穫だが、家に帰るまでが探索だ。
アイツらにまた遭遇したりしないうちに、ここを出よう。
オレは外に出現するかもしれないモンスターを警戒しながら、帰路についたのだった。




