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第14話

 うっかり口を滑らせた事が原因で、既に用意されていた昼飯を食べながらではあるが、オレは兄をはじめとする皆にジャイアントスパイダー発生の瞬間から、スキル取得に至るまでの経緯を詳しく説明させられることになった。

 兄が心配した様な危険こそ無かったものの、オレが入手したスキル【解析者】については、誰も心当たりが無いらしく恐らくはレアスキル、もしかするとユニークスキルの(たぐい)であることさえ考えられるという結論に至る。


「しかしジャイアントスパイダーがなぁ……オレめっちゃ狩ってた時期が有ったけど、たいがい魔石か一番ショボいポーションで、レアドロップで糸玉だったからなぁ。まぁ、オレの仲間内や知り合い引っくるめても、スキルブック引き当てたヤツなんて、そんな居ないんだけどさ」


 兄が恨めしげにオレを見ながら、そんなことをいうが、オレだって初めてだったし……まぁ、そんなもんなんだろう。

 それに……


「兄ちゃんだって、凄いの持ってんじゃん。ようやくイチイチだよ。おあいこ、おあいこ」


 そう。兄だってレアスキル持ちなのだから、これでようやくイーブンといったところだ。


「まぁな。しかしやっぱり雑魚みたいなんしか、この辺りは出ないのかね。厄介なモンスターは出ても街中だけか……しかし、しばらく仕事にはなりそうも無いな」


 午前中の騒ぎが嘘のように、どことなく弛緩(しかん)した空気が漂い始めている。

 既におチビ達は絵本やゲームで遊んでいたり、母達女性陣も洗い物やその他の家事をしていたり、おチビの世話に奔走させられたりしていて、テレビでの情報収集から外れている。

 この間に妻の姉ともようやく電話が繋がり、各自の知人、友人とも連絡が取れるようになり始めた。

 テレビでは時折、新しくモンスターの出現情報がニュースとして取り上げられる他は、被害状況の報道と、原因の究明をテーマにした討論が行われ出している。

 これは……今回の騒動も、徐々に落ち着き始めていると見るべきなのだろうか?


 先ほどオレが発言に注目したコメンテーターは、どうやら自分の発言が的を射ていたことに気を良くしたようで、既に番組の中心人物の様な振る舞いを見せている。


『これまでに集まった情報を精査すると、屋内でのモンスター出現という事例が、ただの1例も見られないのが分かるかと思います。不要不急の外出を避け、自衛自給の手段を整え、騒動が沈静化するのを、ひたすらに待つというのが……』


 あながち間違ったことも言っていないのだが、ああもドヤ顔を晒し続けているのを観てしまうと、何だか無性に腹が立つ。

 ちょっと見回りでもして来ますかね……と、席を立つ寸前に、その凶報は舞い込んで来た。


『旧東京ドームダンジョンにて、自衛隊三笠一佐の率いるパーティが全滅した模様』


 国内最強と目されていた自衛隊所属の精鋭探索者パーティが、一人残さず殺されたというのだ。


 それを行ったのは、ダンジョンへ向かうモンスターの群れ。

 一般の探索者達のダンジョンからの避難誘導に従事していた中での出来事。

 大半のダンジョンにおいて、少なくない犠牲を払いつつも、こうした探索者の退避は完了していた。

 しかし、日本国内最大規模と見なされ、利用者も多い水道橋のダンジョンでは、泊まり込みで深層階にアタックしていた探索者を中心に、その避難が遅れていたのだ。

 三笠パーティだけでなく、次代を担うことを期待されていた自衛隊の探索パーティも多くが儚く最期を遂げ、一般探索者の中でもいわゆる最前線組と言われていた連中もまた、全滅とまではいかないが、壊滅的な打撃を受けたという。


 その後も似たようなニュースが、この時間帯から次第に多く届きはじめる……まだ、受難の一日は全く終わっていなかったのだった。

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