1話 主人公君の扱いが雑なような...
茹だるような暑さの8月。
俺、多治見淳司はそんな地獄のような炎天下の下、ある式典に参加して、いや参加させられていた。
こんな暑い中に外で式典をやるだなんて唐島民はみんなマゾなのだろうか?そう感じずにはいられない。
それでもうちの高校ーーー本川高校は全校生徒参加が義務付けられているためこうして式典に参列している。そう、今日は年に1度の平和記念式典の日だから。
俺の住んでいるこの街、唐島。
俺が産まれるよりもずっと前の大昔、かつては戦争によって焦土と化した歴史がある。それから長い年月をかけて復興はしたものの、戦争の影響で草木が生えない土地となってしまった。このような惨事を二度と繰り返させないために伝統として毎年このような式典が行われている。この式典、毎年毎年お堅い雰囲気であまり好きにはなれないのだが、今年に関しては少し様子が違っていた。
「今年に入り70年ぶりに草木が確認されました」
地元の小学生による演説が始まった。
そう、今年この唐島の地にほんの僅かながら草木が生え始めたのだった。それもあってかその後の市長などのお偉いさん方の演説の内容もどことなく希望に溢れていた。
そして、それに関係して俺には今やらなければならないことがある。
「コンクールの作品最高のもの描かなくちゃな…」
唐島に草木が生え始めたことにより、草木の生えた街の景観をテーマに、最優秀賞となった作品を将来的に街の景観の一部として採用するという絵画コンクールが開催されることになった。自分の描いた絵が街の景観の一部になるなんて夢のような話だ。ここは俺も応募して、街の発展に貢献してやろうと意気込んでいた。
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翌日、本川高校。
唐島市の中でも一番大きな校舎を持っている我が高校。
中には巨大な吹き抜けやエスカレーターなどが整備されており、初めて見た時はここ本当に高校か?と思ったほどだ。
後から聞いた話だと関西にあるデパートなどを併設し、複合施設となっている大きな駅、帝都駅を設計した人と同じ人が設計した校舎らしい。なるほど、言われてみれば確かにあの駅とデザインがどこか似てる気がする。
そんな洒落たデザインの校舎を持つ我が本川高校の美術室にて今日、俺の所属する美術部の活動が行われていたのだが…
「ヘタクソ!あんたホントに美術部なの?」
「…そうだよ」
冒頭最後の意気込みを完全にぶち壊すような言葉を吐いた目の前の女に対し、俺は思わず語尾に「(便乗)」と付けたくなるような言葉を返した。
「そうやって〇夢語を使いながら二次元キャラの絵ばかり描くオタクだから風景画もロクに描けないんでしょ?」
「二次元だけじゃないもん!普通の人物画も描けるもん!」
仕方ない、二次元キャラとか人物画描いてる方が楽しいんだもん。てか、〇夢語とか言っちゃうあたりこいつも大分そっち方面の知識がありそうなのだが、そこを突っ込むと話がややこしくなりそうなため黙っておくことにした。
「とにかく、これでコンクールに応募なんて100年早いわね!」
「何を言うか!俺の絵でこの唐島を素敵な街にしてやるんだぞ?」
「あんたの絵が採用されたら唐島が砂漠化してゴーストタウンになって一巻の終わりよ!」
「逆にどんな絵だよそれ!?」
俺の作品をボロクソに貶す目の前のこの女ーーー角田 翼。
中学の頃から同じ学校、美術部という幼馴染……と呼ぶには微妙な関係ではあるがまあまあ長い付き合いになっている。
こいつの気が強くて人に対して物怖じしないとこは心強いこともあるが大抵はめんどくさいと感じることが多い。だってうるせえもん。
特に俺に対しては少し当たり強い。怖い。
中学時代にちょっとモデル頼んで人物画描いたのをきっかけに今みたいになった気がする。あれそんなに気に入らなかったのか?
「いや〜2人とも今日も元気だね〜」
と、そこに軽いノリの声が割って入ってきた。この美術部の部長、松下さんだ。
俺や翼よりも1年先輩で、みんなをまとめてくれる時はまとめてくれるが、基本適当でノリが軽い性格のためこの美術部はまあまあ緩い雰囲気となっている。どのくらい緩いかというと、部活中ス〇ッチでスマ〇ラやってもこの部長は混ざってやりたがるくらいだ。
まぁ、その時は翼から容赦なく檄が飛んでくるのだが。主に俺に。
でも他の人とやるス○ブラは楽しいんだ。だから仕方ないんだ、うん。
「部長〜助けて翼が虐めてくる〜」
そんな適当でだいたいなんでもOKを出してくれる部長にSOSを出す。
「あー、コンクールの作品ね。どれどれ〜?………あっ…」
何やら語尾に「(察し)」と付きそうな感じの言葉が出てきたけど気のせいだと思うことにしておこう?
「どうですか部長?翼のやつこれじゃコンクールなんて無理って言うんですよ?」
「あー、うん、悪いけどその意見には同意するわ〜」
前言撤回。やっぱり察していた模様。
「いや、だって、何が描いてあんのかよくわかんないし〜」
「そんなにやばい???」
どうやら俺が描いた風景画は俺以外には解読不能らしい。いっそのこと暗号化して使えないだろうか?
「ほら、部長もそう言ってるでしょ?だからコンクールは無理!」
「ぐっ…………」
「ていうかあんた、風景画が下手だって自覚全くないのね……」
部長が自分の意見と同じだと聞いてさらに追い討ちをかけてくる強気な幼馴染。
「人物画はあんなに上手いのに……なんでなのよ……」
「あん?なんか言った?」
「なんでもないこの難聴主人公」
いや、声小さいんだもん。てか主人公って何???
「…じゃあ翼さん、俺に、絵の描き方を教えてください!」
「絵ってのは教えられて身につくもんじゃねぇ…自分で考えて身につけるもんだ」
なんだその喋り方は。豆腐屋の親父か。
「……じゃあコンクール出ないなら俺何すればいいんだよぅ?」
二人からけちょんけちょんにされた俺は半ば投げやりになりながら問いかけた。
「そうだね〜、とりあえずコンクールに作品出す人達のヘルプでもしたらどう?」
「ヘルプ?」
「作業の合間の休憩に食べるお菓子買ってくるとかでいいんじゃない?」
「ただの雑用じゃんそれ!?」
俺の問いかけに部長が答えてくれたが、それはあまりにもアレな回答だった。さすが適当部長。
「あはは、冗談だよ冗談」
「あんまり冗談に聞こえない冗談やめてよ?」
「まぁ、風景描くのにロケハンとか必要だと思うからそれに付き添ったり、普通に作業の手伝いしてもらえるかな〜?」
「…とりあえず了解です」
と最後はちゃんとした指示をくれた部長。
普段は適当な癖して、真面目に言うべきとこではちゃんと言えるというのがズルい。
「よかったわね。暇人にならずに済んで」
翼はこれからコンクールの絵を描く作業に入るところらしかった。
「まぁな…今から作業か?何か手伝えることあるか?」
「そうね、今まさにやって欲しいことができたところよ」
「お、なんだ?出来ることならなんでもやるぞ?」
不本意ながらコンクールには出れないから、代わりに作品を出すやつの力ぐらいにはなってやろう。相手がいつと俺に当たりの強い翼であっても。
「お菓子買ってきて。作業の合間に食べるから。」
「結局雑用かよ!?!?!?」
いや、やっぱりこいつの力にだけはなるもんか。死んでもなるか絶対。




