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背水の陣

「この港のどこかの倉庫に奴らはいる。」

 「おそらく3択のはずですが…」

「おそらく、ということは33%以下ってことだな。」

 「そうなりますね。」


~~~


 倉庫の中には零戦にも似たプロペラ機が1機佇んでいる。

「これ…どうやって作ったんだよ…」

 「エンジンはSUZUKIのハヤブサ。世界中見ても最強の高回転型エンジンだよ。ボディは全部板金と溶接よ。軽トラの荷台とかいろいろ寄せ集めて作ったんだぜ?ここが一番骨が折れたよ。プロペラはカーボン。たまたまドリフトオタクの知り合いがいてよ、作り方教えてもらったんだわ。あとはネットと本で読んだだけの知識でやった設計が若干不安だが、まぁなんとかなるだろ。空力はミニ四駆で慣れてんだよ。」

「まぁ、飛ぶ距離も知れてるからな。どうであれ信じるしかねえよ。」

 「しかしまぁ、この飛行機にゴム紐でぶら下がって飛ぶってんだからお前の勇気には感服するよ。」」


~~~


警察の部隊が港での捜索を始める。

捜査対象は1人以上、上限は未知数である。

防弾チョッキを着た特殊部隊など80人を引き連れ港を捜索する。


「候補に挙がっている3つの倉庫の内、1軒だけが気温を越える熱反応があります。」

 「ではそこが第一候補になるな。向かうぞ。」


80人の男たちがその倉庫へ向かう。

到着後、警察部隊が目にした光景は予想外の物だった。


上半身裸の男が1人、全身にハーネスを着け拳銃とククリを手に倉庫の前に立っている。


「まぁ、予想通りの到着時間だな。」

 「お前は確か…トオルの弟の…」

「おうおう、よく喋ってる余裕あんね。死の淵に立ってるって言うのによ。」

 「お前たちの目的はなんだ、この港で何らかの取引を企んでいるんだろう?それはもう終わったのか?とても取引に向かう格好には見えないが。」

「取引?そんなもんもっと後の話しだよ。今の俺の目的はな、お前らをできるだけ多く殺傷することだよ。」

 「何のために…」

「ふふ、目的の目的を聞くんじゃねえよ。まぁ、答えてやらんでもない。今はな、国際的な注目を浴びることが必要なんだ。それもビッグニュースって程でもない程度のな。例えばどうだ、外国の警察がテロリストによって80人殺されたしよう。お前らの記憶に残るのはどれぐらいの期間だ?まぁ精々もって1ヶ月ってとこだろう。そう、丁度それぐらいの注目が欲しいのさ。」

 「80人を殺すだと…?その拳銃と、その鉈だけでか?」

「いや、拳銃はもう1丁あるしマチェットももう1本ある。それより、俺にはこれがある。」


左手にはリボルバーの他に錠剤を1錠握っていた。それを口の中に放り込む。

今度はそれを奥歯で噛み締めると中から酸味を帯びた液体が歯茎全体に染みわたった。

その錠剤の作用からか口内に滾った唾液を吸い飲み込むと間を開けず空を向き大きく息を吸い込んだ。


「あはは、これぐらいの濃度なら理性と共存できる。さすが兄貴だよ。戦況にマッチする調合だねえ。」


リボルバーの銃口を口数の多い中年の刑事に向けた。


「さて、この引き金を引いた時の銃声が開戦の合図だ。」


警察部隊全員に緊張が走る。80人が銃身を前へ向ける。


「いいねえ。スタートだ。」


乾いた爆発音が響く。

港、倉庫、海。

遠くからの反響は無く、近くの鉄板が微振動しながら甲高い音だけを鼓膜に返した。

中年刑事が脳天から血を垂らしながら後ろへ崩れ落ちる。


「さあ、指揮官を失ったお前たちはどう俺を攻める?」


 「射撃許可!打ちながら対象と距離を詰めろ!奴は人間離れした行動が予想される。行けぇ!」


「ここが最大の見せ場だぜ…まぁ、余裕で切り抜けてやるさ。」



リボルバーを腰のホルスターに仕舞い、マチェットを手に取る。

ククリとマチェットの二刀流。港を背に構えることなく佇んでいる。

脱力し、全身から汗は引き、最低限の皮脂と指紋だけが刃物を保持していた。

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