SS:大好きいただきました(ルシア視点)
大きなベッドに寝かされた私の上に、少し様子が変なカイオがのしかかってきた。誰よりも鍛えているはずのカイオの息が荒い。それに、何かに耐えているような顔つきになっている。
「ねぇ、カイオ。子づくりって、本当はカイオも辛いのではないの? だけど、子どもが欲しいと私がねだったから、無理して付き合ってくれているのでしょう? カイオが嫌なら、もういいの。無理しないで」
男性は子作りを行う時に快楽を感じるとカイオは言ったけれど、それは嘘かもしれない。
竜騎士になるような人は簡単に弱音を吐いたりしない。少なくともカイオなら苦しいや辛いなんて絶対に口にしない気がする。私よりも四歳も若いけれど、カイオはとても強い人だから。
そんなカイオが苦しそうな顔を見せている。本当に辛いはずだ。
私はカイオさえそばにいてくれるのなら、もうそれでいい。カイオを苦しめてまで、子どもが欲しいと願ったりしない。
私はカイオの下から這い出そうとしたけれど、カイオの両腕で閉じ込められた。
「男は気持ち良いって言っただろうが。ここで止めるなんて、どんな拷問だよ。俺は子づくりをしたくてたまらないからな。それに、ルシアは俺の心配をするよりまず自分の心配をしないと。ルシアなら絶対に痛いと泣くから」
「大丈夫。だって、お母さんも姉さんも耐えたのよ。私だって耐えることができるもの。それにね、カイオなら一番痛くない方法でしてくれると思うもの」
カイオは誰よりも優しいもの。
「うっ、そうきたか。でも、あんまり期待するなよ。俺だって初心者だ。本はかなり読んできたが」
そうだった。カイオだって結婚は初めてだから、慣れているはずはないものね。
「私は子づくりのことをよくわからないから、カイオがしたいように進めて。泣かないとは約束できないけれど、私が泣いても、カイオが気持ちいいなら止めたりしないで。私は大丈夫だから」
「ルシア、それは反則だ」
カイオが苦しそうに呟く。
「なぜ?」
カイオはたまに意味のわからないことを言う。私の何がいけなかったの?
「ルシアが可愛すぎるからだ。あまり可愛いことを言うと、俺は余裕がなくなるから」
カイオはそう言って、私にキスをした。父と母のキスは見たことがあるけれど、カイオのキスは、少し違った。
それは不快ではないけれど、とても不思議な感覚だった。
カイオが言うように、初めての子づくりは少し痛かった。でも、これが本当の夫婦になる試練ならば、こんなことくらい平気だ。辛いいことなど何もなかった。
「私ね。カイオの全てが好き。とても優しくて、でも、ちょっと素直でないところも、全部よ」
「俺も、無垢で可愛くて、そして、とんでもないことを言い出して俺を翻弄するところも、全部含めてルシアが大好きだ」
結婚したいと言ってくれたことはあったけれど、カイオから好きだと言ってもらったのは初めてかもしれない。
これが幸せというものなのだろうと思う。婚期を逃した私にはこんな幸せが訪れることはないと思っていた。
カイオが本当に愛しい。何よりも。
「私の方がもっとカイオのことを大好きだから」
「いや、俺の方がもっとルシアを好きに決まっているから」
やはりカイオは変わっていなかった。こんなところでも負けず嫌いだ。
だけど、カイオへの愛情の深さでは私は誰にも負けないと思う。
「また泣きそうな顔になっているぞ」
カイオは意地悪そうな顔で笑う。でも、そんなカイオの顔も好きだから、やはり愛情勝負は私の勝ちだと思う。




