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SS:妻はあまりにも清らかで(カイオ視点)

ルシアの村から帰ってきた頃の話です。数話続きます

 ルシアとの最初の出会いは本当に最悪だった。


 ルシアが偉大な聖乙女だと以前から知ってはいた。俺の武器は全て彼女が祝福してくれたので、先輩たちの武器より明らかに高性能だ。俺はそれが誇らしく思っていたんだ。


 歴代最高の聖乙女である彼女のことを尊敬していたし、もし俺のことを夫として選んでくれたのなら、それはとても光栄だと思ったに違いない。そして、俺の人生など全て捧げても後悔などしなかった。


 だが、ルシアが求めたのは竜騎士であって俺ではなかった。


 ある日、ルシアが竜騎士を夫として求めていると王宮から知らせが来た。俺という個人ではなく、竜騎士との結婚を望んでいると。

 そして、独身の竜騎士は俺一人なので、自動的に俺が王宮へ呼ばれることになった。

 

 誰よりも神聖な女性だと思っていたルシアが、職業で夫を選ぶような女だと知って俺はかなり動揺していた。しかも、竜騎士なら誰でもいいというように、会ったこともない、ただ独身の竜騎士であるという理由だけで俺が選ばれたのだ。

 納得はとてもできなかった。


 普通ならば王でさえ俺たち竜騎士に命令することなどできないが、相手は長年この国のために祈り続けてきた偉大な聖乙女である。おそらく竜騎士といえども結婚を拒否はできないと感じていた。

 ひたすら気が重い。そんな気持ちでルシアに会った。


 竜騎士を夫にしたいと望んだのはルシアだ。それなのに、彼女は俺を見た途端に顔をしかめた。

 何が気に食わない?

 俺が若すぎるのが駄目なのか?

 既婚の先輩たちを狙っているのではないか? 



 そんなことを思っていた頃もあった。

 遠い過去のように感じるルシアとの出会いの時を思い出し、俺はため息を一つつく。

 


 ルシアの故郷は本当に国の辺境にあり、ほんの三百人ほどしか住民はいないが、百年間で聖乙女を十人以上も輩出したという貴重な村だ。しかし、竜騎士になった者は今まで一人もおらず、竜騎士を間近で見たことさえないと言われた。


村挙げての盛大な結婚式の後、偉大な竜騎士を貧しいルシアの実家に泊めるわけにはいかないと、俺一人だけ村長の家に泊まることになる。

こうして、新婚であるにも拘らず早々に別居状態で三日を過ごして、ようやく本日我が家に帰ってきたのだ。



「カイオ、実家の村へ連れて行ってくれてありがとう。もう帰ることはできないと諦めていたから、本当に嬉しかった。家族も喜んでくれたし、村の人たちはね、素敵な旦那様だってカイオのこと、褒めてくれたのよ」

「まぁ、ルシアが喜んでくれて良かったけど」

 でも、俺はちょっと寂しかったけどな。新婚なのにルシアと離れ離れだったから。


「じゃ、お風呂も入ったし、私はもう寝るわね。カイオもゆっくり休んで」

 ルシアは一人で二階へ行こうとする。

「ちょっと待った! 俺たちは新婚で、結婚休暇は明日までだぞ。なぜ別々に寝なければならない」

 振り返って、きょとんと俺を見ているルシア。その仕草は可愛らしいが、俺は誤魔化されない。


「でもね、カイオは背が高いから、私の部屋のベッドでは足が出ると思うの。それに、カイオの部屋にはベッドが一つだけよね」

 ルシアが使っている部屋は子ども部屋で、小さめのベッドが二台置いてある。確かにあの部屋のベッドは俺には小さい。俺が使っている部屋は客間で普通のベッドが一台あるだけだ。だけど、それはただの同居だったから別の部屋で寝ていただけで、今は新婚だぞ。


「主寝室があるだろうが」

「あの、大きなベッドがある部屋ね。ベッドは本当に大きいけれど一つしかないわよ」

 ルシアは冗談を言っているわけではないよな。もしかして、俺は妻の性教育もしなければならないのか?



「ルシアはどうして子どもができるのか知っているのか?」

 俗世界のことは祈りの邪魔になるらしいので、神殿では教えていなかったかもしれないが、実家にいた三日の間に母親や姉が教えていたと期待したが。

「結婚すると神様が授けてくれるのではないの? あっ、カイオは竜騎士だから結婚を神に誓わなかったわ。すると、私には赤ちゃんができないのかしら? でもパトリシアさんに赤ちゃんができたから大丈夫ね。しかも、ジョエルはジャイルさんにそっくりだし。竜騎士って本当に凄い。神様と同じような力があるのよね。ジョエルはとても可愛いのよ。私も早く赤ちゃんが欲しいわ」

 俺の予想は大きく外れた。ルシアの家族は三日間何をしていたんだ?


「何もしないと結婚しても子どもはできないんだ。それは俺たち竜騎士だろうが他の男だろうが同じだ。そこまで竜騎士が特別なわけはないだろうが」

「何をするの?」

 ルシアよ、そんな期待のこもった目で見ないでくれ。俺が汚れた人間に思えてくる。


「そりゃ、色々と。ルシアは俺に触られるのは嫌じゃないか?」

 ルシアは俺を見つめて少し考えている。そして、微笑みながら俺の手を掴んだ。

「私ね、カイオのこの大きな手が好きよ。だって、痛みも取り除いてくれるし、料理だって温めてくれるから。だから、カイオに触られるのは嫌じゃないわ。でも、カイオはどこを触るの?」


「それは、胸とか?」

「私の胸をカイオが触るの? どうして? ここは赤ちゃんが飲む乳が出るところよ。もしかして、竜騎士は乳が出るようにする力を持っているとか?」

「竜騎士にそんな力はない! 元々女性は子を産むと乳が出るようにできているんだ」

 ルシアは竜騎士をいったい何だと思っているのだろうか。もはや人間の範疇を超えているぞ。

「そうよね。姉さんだってお乳が出ていたから」

 それを知っているのなら、どうしてそんな変な結論に至る? 


「ルシアは男と女の体の違いを知っているのか」

「知っているわよ。私には二つの胸の膨らみがあって、カイオにはない」

 ルシアは俺の胸を弄り始めた。そして、自分の胸も揉んでいる。何がしたい?


「カイオの胸は少し膨らんでいるけれど、とても硬いわ。私とは違う。私のは柔らかいもの」

 ルシアは満足そうに頷いている。ルシアに胸を触られてしまった。俺はまだルシアの胸に触れてもいないのに。


「それだけじゃないだろう?」

「村にいる時は三歳下の弟とお風呂に入っていたから知っているわよ。男の子にはこんなおちんちんがついているのよね」

 ルシアは親指と人差し指を曲げてみせた。おそらく五歳だった弟のものの大きさだ。


 とても先は長そうな気がする。俺はもう一度ため息をついた。

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