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第2話

フレディ、ノエル、レイの順番で着いたそこは、一面に花が咲いている花畑だった。


「二人とも走りが速くなったね。」


と、レイが微笑むと、フレディは照れたように笑ったが、ノエルは不服そうな顔をして、フレディに聞こえないくらいの声でレイに尋ねた。


「兄さん、どうしてあんなに手加減したんだよ。いつになったら俺と本気で勝負してくれるんだ。」


ノエルの悔しそうな顔を見て、レイはノエルと同じ目線までしゃがんで答えた。


「そう言うお前だってフレディに1位を譲ったじゃないか。それに僕は僕なりに結構本気なんだよ、いつだってね。」


レイが笑うと、ノエルは少し驚いた様子を見せ、それから頰を少し赤くさせて、おまけに口を尖らせてレイから目をそらした。


「レイ!今日は何を見せてくれるの?」


二人の会話を知らないフレディは楽しげに訊いた。


「今日は特別に何でも見せてあげるよ。見たいものを言ってごらん。」


「本当?それなら私、ずっと見たかったものがあるの。心配かけるんじゃないかと思ってなかなか言えなかったんだけど…。」


フレディが二人の様子を窺うと、レイが代表するように、大丈夫、言ってごらん、と優しく返した。

フレディは少しホッとした顔をして、ゆっくり頷き、話を続けた。


「私ね、お父さんに会いたい。私が4歳の時に病

気で死んじゃったからあんまり覚えてないんだけどね、でも1つだけすっごく記憶に残ってることがあるの。あれはお父さんが亡くなるほんの少し前のことで、初めてお父さんの馬に乗せてもらって海の方まで散歩に行ってね、砂浜で一緒にお母さんが持たせてくれたパンを食べたりしたの。周りから見れば些細なことかもしれないけど、私にとっては本当に幸せな時間だったわ。」


フレディが懐かしそうに空を見上げながら話していると、パァーッと景色が変わり、そこは夕日の美しい海辺になった。

フレディが目をぱちくりさせていると、どこからか馬の足音が聞こえてきた。

フレディは音の鳴る方を向くやいなやダッ!と走り出した。


「お父さんっ!お父さんっ!」


フレディはその広い胸元に飛び込んだ。


「フレディ!大きくなったなぁ、ほら、お父さんによく顔を見せておくれ。」


フレディの父は、その大きな手で彼女の頰に流れた小さな涙を拭った。


「お父さん、私ね、今すごく幸せなのよ。お母さんも、レイもノエルも、おばさんおじさんも変わらず元気でね、毎日楽しくやってるわ。」


フレディにはもっとたくさん話したいことがあったものの、1番伝えたかったことを言えて何だか安心した気持ちになった。


「そうか、なら良かった。お父さんも元気だよ、フレディの顔を見れたからもっと元気になれたさ。ありがとう。それじゃあ、お父さんもう行かないと。あ、そうだ、これ覚えてるかい?」


そう言ってフレディにパンを1つ渡した。それは、あの日浜辺で共に食べたパンだった。

それからフレディの頭を優しく撫で、またな、と言い残し、もと来た道を戻って行った。

フレディはその大きな背中を見つめながら、手に残ったパンをひと口かじった。


「美味しいね…。」


そう言ったフレディの頰には、先程よりも小さい涙が流れた。


景色は元に戻り、食べかけのパンも消え、フレディの前にはレイたちが立っていた。

レイは両腕を広げて、おいで、とフレディを呼んだ。

フレディは流れる涙を拭い、レイの元へ駆け寄った。

そして、レイの腕の中で、


「ありがとう。ありがとう。」


と繰り返した。


そう、フレディが見たのはレイが見せた幻覚だった。

フレディたちはいつもこうやってレイが見せてくれる幻覚を楽しんでいた。

たとえそれが涙の溢れるものであってもレイの見せるものはいつでもフレディたちを幸せにしてくれる。

レイの胸で泣いているフレディを見たノエルは、少し複雑そうな表情をしていた。





今回も読んでくださりありがとうございます!

フレディの幼い頃の思い出、この先も大切にしてほしいですね…。

それと、皆さんの中にはノエルの気持ちに薄々気付いておられる方もいらっしゃるかと思いますが、温かく見守ってあげてください(笑)

ノエルがんばれ…!(笑)

次回もよろしくお願いします!


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