ななちゃんのいちごの帽子
ひな月雨音様の企画参加作品・・
そのつもりで書こうと思っていましたが、実習やスランプも手伝い何も書けませんでした。
よつ葉の作品のキャラクター「ななちゃん」を使ってひな月雨音様が書き上げてくださいました。
辞退も考えました。ひな月様に投稿をしてくださるようにお願いしたら、よつ葉のために書いたものなのでよつ葉が投稿しないなら消して下さい。と仰っていました。とっても素敵な作品なので、こうして説明を添えて投稿することを決心しました。ひな月様にも伝え喜んで下さいましたので投稿しています。
今日は仲良しのひぃちゃんと一緒に、近所の公園にやってきたななちゃん。
「ななちゃんの、いちごさんのおぼうしかわいいね」
「ひぃちゃんの、みずたましゃんのてぶくろもかわいいでちゅ」
お手手を繋いで、うろ覚えの歌をふたりで口ずさみながら、大きなゾウさんの遊具のお鼻に腰掛けます。
そんな幸せそうなふたりの前に、怖い顔をしながら近寄ってきたのは、よくこの公園で見掛ける、さやちゃんという女の子でした。
「あたしのいちごのおぼうし、まねしないでよ!」
大きな声で叫ぶものだから、周りで遊ぶ子達も、遊んでいる手を止め、ななちゃん達の周りへと集まってきます。
「ななの…おぼうしだもん」
「さやのなのっ!」
そういうと、さやちゃんは、嫌がるななちゃんから乱暴に、いちごの帽子を奪い取ると、地面に投げ捨てました。
「んん……やめて……やあぁ!」
汚れてしまった帽子を見つめるななちゃんの目には、涙がたっぷりと溜まっています。
(なな。いちごさんのお帽子、とっても似合ってるよ)
ななちゃんは、大好きなパパに褒めてもらった時のことを思い出しました。
「……ぱぁぱ」
土で汚れてしまった、ななちゃんの帽子を拾ったのは、ひぃちゃんでした。
「めっ! さやちゃん、めっだよ! ななちゃんなかせたら、さやちゃんいけないこだよ!」
「マネするからいけないんだもん!」
「マネしたのは、さやちゃんでしょ!」
周囲がざわざわし始める。大きな声を出した方が勝ちみたいな子供のケンカ。
「あたちしってるんだから! さやちゃん、ななちゃんのおぼうし、いいなぁっていってた!」
何も言えなくなり、下を向いたまま小さなお手手でこぶしを握るさやちゃん。
ーーーーひどいね。
ーーーーさやちゃんひどい。
周りで見ていた子達の中に、さやちゃんの味方をする者はおらず、さやちゃんには、冷ややかな視線が向けられています。
「はい、ななちゃん。キレイになったよ」
ニコッと笑うひぃちゃんは、ななちゃんの頭に、いちごの帽子を被せてあげました。
「ひぃちゃん、ありがとでちゅ」
「うん。えへへぇ」
ななちゃんは被せてもらった帽子を、なでなでしながら、さやちゃんの前に立っています。
「……なによ」
「さやちゃんも、いちごちゅき(すき)?」
「………………うん」
「じゃあ、これあげるでちゅ」
ななちゃんは、いちご柄のボシェットに手を入れると何やら取り出しました。
「さやちゃん、はいでちゅ」
反射的に手を出したさやちゃんが渡されたのは、ななちゃんが大好きないちご飴でした。
「えっ? おぼうし、えいってしたのに……くれるの?」
「はいでちゅ」
「ななちゃんごめんなさい! あたしひどいことした。ひぃちゃんのいうとおり、マネしたのもあたし。ごめんなさい」
素直に自分の非を認めたさやちゃんは、ななちゃんに何度も何度も謝りました。正直に謝り、反省している相手を見たななちゃんは、再び大好きなパパの言葉を思い出します。
(誰かのモノを奪うことは、絶対にしちゃいけないこと。逆に素敵だね、いいねって言ってあげることは、素晴らしいことだとパパは思うんだ)
ななちゃんの中で、大好きなパパがこう言ったので……。
「さやちゃんも、いちごのおぼうし、にあってるでちゅ」
ななちゃんは許してあげる事にしたようです。いえ、ななちゃんは怒っていたのではなく悲しかっただけなのかも知れません。
「ひぃちゃん。キリンしゃんにいくでちゅ」
「うん!」
こうして公園で起きたマネっこ事件は幕を下ろしたのでした。
お手手を繋いで、うろ覚えの歌をふたりで口ずさみながら、大きなキリンさんの遊具で遊ぶ、ななちゃんとひぃちゃん。
「ひぃちゃん、ありがとでちゅ」
「よかったね、ななちゃん」