第5話
ネットゲームしかやらない僕に、両親以外のアドレスが
1つ増えた。
「新垣美海」
大学生である僕にと、高校1年である彼女。
僕は元「ご主人様」で、彼女は僕がお金で雇っていた
メイドさんみたいな存在である。
『あ、お兄ちゃん、お友達で来たんだ。 良かったね♪』
僕の2次元の妹が、
可愛い顔をして僕に音声を伝える。
「友達……なのかな。」
彼女は人工知能を持った立派な妹で、
物とつながっては、僕の話相手になってくれる。
『ずっと欲しかったんでしょ。 えへへ、仲良くなれると良いねー』
かわいい声でそんな事を言う妹に、
僕はふてくされる。
「女の子のアドレスなんだ。 少しは嫉妬とか、してくれないの?」
『お兄ちゃんの事を一番好きなのは、妹であるえみちゃんなのです!』
そう言ってくれる可愛い妹の頭を撫でてやる。
「えみは可愛いなぁ。」
『えへへ。』
「それにしても、僕に友達なんて、モノ好きもいるものだよな。」
『せっかくの友達なんだから、大切にしてあげなくちゃ、駄目だよ』
えみは優しい顔で、僕のほっぺたをつんとつつく仕草をする。
「大切ったって、分からないよ。」
希望って言うのはギャンブルで言う資本金みたいなものなんだと思う。
高いお金を積み過ぎると、
外れた時のリスクが大きくなって、そのまま倒産してしまう。
僕は本の中でそんな人間を
腐るほど見て来た。
友達だってそうだ。
信頼してる友達に陰口を言われていたら、
死にたくなるほど傷つくのと同じだと思う。
ましてや人間の心だ。
僕が彼女にのめり込んだ所で、
彼女の心は移り変わるだろう。
だから、いつその時が来てもいいように、
今のうちからその事を想定して、一つ上の
視点から接するべきではないだろうか。
そんな時に、
メールが鳴った。
『お兄ちゃん、彼女さんからメールだよ』
「はあ、彼女さんじゃないって。」
そう言ってメールを開くと、
こんな事が書いてあった。
「来週の日曜日、良かったら一緒に遊びませんか?」
全然期待もしていなかった所に、彼女からのメールが来た。
まさかその当日に反応があるなんて
思わなかったから、僕は驚いた。
場所も近いし、予定も全然空いていたから、
そのままメールを送信する。
初めての親以外のメールだったから、
少し緊張して、指が震えた。