第2話
「いらっしゃいませ。 あぁ~、相崎君、また来てくれてうれしいにゃん。」
「えっと、うん。」
僕はメイド喫茶に入る。
可愛い猫耳をした、可愛い女の子が、僕にビジネスライクな好意を向けてくれる。
「むう、相崎さんっていっつもそうやってぷくーって膨れた顔をして、駄目ですよ、笑顔、笑顔。 」
おせっかい焼きのメイドさんにそう言われて、
僕はぎこちない笑顔を作る。
共同体から孤立している僕には、
こういった場所が必要だ。
僕に優しい場所が必要なんだ。
「…相崎さんの笑顔は、見てると、苦しくなります。」
「えっ?」
「……いえ、何でもありません。 ほら、ご主人様、ご注文は何にしましょうか?」
「んーそうだな、僕とお話して欲しい。 えっと、君と僕に、ジュースを1つずつ。
ジュースは適当に選んで。」
「おおーっ、つまり相崎さんは、私と同じジュースが飲みたいと?」
「……うん、それでも良いよ」
「むー、つれないですねー、じゃあ、交換しちゃいます?」
何故彼女はこんな勿体ぶった事を言うのだろう。
君はかわいい女の子なのだから、わざわざ誘ってくるような事、するなよ。
「…じゃあ、君と同じにしてくれ。」
「はーい、ご主人様」
そう言ってきゃぴきゃぴした動作で
ジュースを淹れに行く彼女を見ると、僕は敵わないな、
と思った。
僕には彼女のようなエネルギーはない。
だから、自分にないものを持っている彼女の事を、
素直に羨ましいと思った。
僕にもエネルギッシュな人間だったならば、
この世界を楽しく生きる事が出来たのだろうか。